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<ガイア>列伝  作者: 樹実源峰
防衛準備編
43/69

新たなクエスト

あのカフェのあった街のガードルから、歩いて五時間ほどのところに目的地の近所であるレリーアがあった。


ただし、五時間といえどもまさか本当に歩いた訳ではなく、ちゃんと馬車に乗ってきたのだった。


方や王子、方や王女、方や一応貴族の三人組が歩いたりするわけない。(ただ、俺だけが本気で歩いて行くと最初思っていたのは内緒である)


そのレリーアの街は薔薇の国の東当たりに位置する山間部にあった。この街の特徴はこの街の更に東にある山から来るドラゴンに対抗する為に守護している騎士たちが他の街に比べて多いことだろう。


そのため、この街には必然的に酒場で飲んだりもしくは仲間と訓練を行っている騎士の姿がそれなりに見られる。


まぁ、今回は騎士はあまり関係ない。関係あるのは今回、この件を依頼してきた科学者の方だ。


そしてその学者が指定してきたのはこの街の市庁舎である。どうして学者がそこを指定してきたかは不明だけれど、別に重要なことではないだろう…と思っていた。


そして、市庁舎に行き、そこにいた人に研究者の人の名前を告げて通された先はなんと、市長室であった。…え?


「はっはっは、よく来てくれましたな。私が依頼者の下田です。今回は護衛をよろしくお願いしますぞ」


市長じゃねぇか!という心よりのツッコミをぐっとこらえてこちらも、よろしくお願いします。と、無難に返しておく。ただ、他の二人の顔に驚きの色がないあたり、おそらく予想してたか知っていたのだろう。…俺はまだ修行は足りなかったということか。


「それで、場所の確認なのですがやはり東の山間部の中でしょうか?」


優香が淡々とした口調で尋ねる。そう、まるでドラゴン遍く土地へ行くということと、護衛対象が市長であることを拘泥しているのは、俺だけであるかのように。…いや、実際そうなのだろうが。


しかし、よくよく考えると王族に守られる市長ってどんな構図だよ…。一勇者としか考えられてないからだろうが、事情を知ってる奴からすれば本当に奇妙なことだ。


「うむ。この前山にハイキングへ行ったものがドラゴンに追われて喰われるくらいなら、と滝の中に入った時に洞窟があったらしくての。それで市長としてはなにか観光名所として使えたらとか、資源があればと考えて中を探索しようということでな」


思いっきり目的を言うなこの人は…。普通、そういう金儲けとかそっちは言わなくて、市民の安全を考え…とかなんとか建前を言うものではないのか?


…まぁ、俺たちはクエストを遂行するまでなのだが。


「それで、いつ頃に出発しましょうか?」


優香がそう聞くと、下田さんはうむ、と頷いて


「私はいつでもいいのだが、あなた方はお疲れだろうから、明日の正午あたりに…東の『麻溝亭』で、会おう」


その日はそれで解散となった。



「はっ!」


勢いの良い掛け声とともに放たれた拳を俺は少し首を動かすことで躱して、その拳の主の腹へと拳の一撃を与える。


そのままそいつは吹っ飛んでいくが追撃してる余裕は…ない。すぐさま右から男が蹴りを放ってきて、そして左からはタックルが襲ってきそうだった。


風の魔法を少し使いジャンプ…というよりすこし浮く。俺を倒すことに躍起になっていた二人はそのまま互い違いに攻撃をしてダメージを受ける。


俺はそこで空中でバク転のようにくるりと回る、途中で風の魔法を解除し、重力に従うままに落ちる。そして、バク転の威力を帯びた蹴りをタックルをして相手を押し倒した方の肩へ。


そしてそのままそいつは吹き飛びその下の男に追撃する前に再び邪魔が入る。


次は背後からだったから気付くのが遅れた。また別の男の飛び蹴り。


喰らうのはやばいから横に転がることによって躱す。


と、そこで


「そこまで!」


俺のいた道場に声が響き渡った。


すると、ドアから何人かの男たちが入ってきて、倒れてる男たちを運んで行く。それを俺はただ、眺めていた。そして、眺め終わった後にようやく制止の声をかけた男の、親父へと目を向ける。


「…破凪、今夜はやたらと殺気立っているな」


今夜、というのはこの乱闘が周期的に行われてるように聞こえるだろうが、実際にそうだ。


週に一度、俺が帰ってきた時に、睦月家に弟子入りしてる男たちと俺が乱戦しているのだった。


それは、俺の修行とも同時に弟子たちの修行でもあった。


「やはり、如月家に負けたのが気に食わないか?」


すると、俺の親父は敢えて俺の敗北について言及してきた。それに対して俺はキッと睨み、小さく、あぁ。と返した。


「…だが、他人に負けたところでここまでお前が殺気を放つことはなかったな。…どういうことだ?」


それに対して俺は何も言うことなく背を向けて道場から出た。


ここまで苛立ってる理由。それは、奴との力量差故だ。


単純な力押しでは勝てないが技術や機転を入れ込めば勝てるはずだったが、海斗は自分よりテクニックのある相手との戦いに慣れている印象を受けたし、何より死線を潜り抜けたせいか突飛な行動を見せることがあった。


部屋全体の温度を下げてこちらの集中力を下げてくるような攻撃を今まで受けてこなかった。試合という相手に殺されないという試合ばかりを繰り返してきた結果、よりにもよって如月に負けたのが気に食わなかった。


そして、今までは試合で負けたとしても日をあまり開けずにその相手へリベンジを果たせていたが今回はすぐにリベンジを果たせなさそうというのがさらに苛立ちに拍車をかけてくる。


上を見ると月が輝いていた。その光はまるで格下に勝てない己をあざ笑うかのように破凪には思えた。

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