アイスワールド
なぜだ?
なぜ、攻め込めない!?
破凪は海斗との試合の間、そればかりを考えていた。
やたら、大振りな動き。
だが、それは一見隙に見える—いや、隙そのものだ。
だが、攻め込んだ時それは自分の隙ともなる。
肉を斬らせて骨を断つ作戦だろう。単純で難しい。
一撃を受ける覚悟を背負って俺を撃破するのか。
まるで、実戦をしているかのように。
だが、大振りだからこそ、避けやすい。避けて叩く。
そう思って、次の一撃は敢えて避けてみようとする
「マナ・コール、ウィンドサポート」
と体を風に押され予想以上に転がされる。
俺がやったわけではないなら…海斗か!
ギロッと後ろをみると、海斗がこちらを見てニヤリとした。
そして、こちらに向きを変え、転がされ過ぎてバランスを崩してしまった俺を狙う。
「エクスプロージョン!」
やつの前にて、空気が収束され一気に放出する。
これが爆発の魔法。
だが、奴は風魔法でも使ったのかあまり吹き飛ばされはしなかった。
俺はその間に態勢を立て直した。
そして、そこでようやく俺は自分が肩で息をしていることに気づいた。
奴を見ると、にやりとして口を開いた。
「マナコール!ジ・アイスワールド!」
急速に冷え込む大気。寒さのあまり息を吐くとその息は白かった。
今は、五月の始め。初夏だと言うのに。
パキパキと水分が凍り始め氷の山が精製されていく。
寒さは大敵だ。集中力、体力を奪われる。
だが、こんな広範囲に及ぶ魔法を俺は使えない。使うには十分な修練がいる。
スクールに入ってから本格的に始めた俺では太刀打ちできないかもしれない。
だが、できないのは諦める理由とはならない。できないならできるようにするまでだ。
「マナ・コール!ザ・ファイアワールド!」
今度は急速に温度が上がる。周りの攻撃は溶けゆく。
だが、奴は俺に向かって再び攻撃を仕掛けようとしてきた。
しかも今度は一切の隙もなくただ、確実に俺を倒すことのみに必要な最小限の力を使ってる。
慌ててそちらに対応する。だが、その瞬間、再びあたりは極寒に襲われる。
…集中力が続かない。
この時、相手どころか下手をすれば自分すらも巻き添えになる『氷結地獄』の魔法を海斗は使った。
この魔法は実のところ、実戦では主に相手の体力を奪う魔法として使われる。
相手の集中力と体力を奪い無力化する、どちらかと言えば対人用の魔法だ。
だが、その威力は高過ぎて自分もその寒さに体力を奪われるということもあるのだ。
なぜ、そんな魔法を使ったか。それは海斗には—意識的にしろ、無意識的にしろ—破凪に体力勝負では勝てると思ったからである。
そこが、この前のギ・ガーとは違うことだ。あの時は、相手の方が体力が多かったかもしれないから使えなかった。
実際、ギ・ガーは百戦錬磨どころか万戦練磨の強者で、体力勝負に持ち込めばやられるのは海斗の方だっただろう。
貴族特権を封じられている間の如月家は農家をしていた。
冬も夏も田や畑にいる。その経験から彼は寒さにも暑さにも耐性ができたのであった。
余談だが、海斗がこれを紅龍牙に使った時、体力勝負に持ち込む前に終わったため、これは体力勝負以前に実力の問題だった。
まぁ、龍牙がそうだったからこのような魔法による妨害もある戦闘は海斗とてはじめてだったが、魔法を維持しながらの剣を振るう特訓はしていた。
だから、剣を振るいながらも魔法を維持でき、そしてその特訓をしていない破凪はできない。
寒さにより集中力を奪われれば魔法の発動にも一苦労を要する。
作戦面と体力面、この二つによって破凪は押されて負けたのだった。




