戦う理由
「そうさ、お前の戦う理由を教えてやる!」
頭の中で悪魔の声が響く。しかし、よくよく思うと意味不明だ。なぜ、俺は言葉を出してないのに、会話が成立してるんだ?
「それは、僕たちは君の中の存在だからね。君の心の中は筒抜けさ」
天使がめっちゃ怖いこと言いやがった。…本当に天使かよ。
「いやいや、俺らは便宜上悪魔や天使と言ってるけども実際はお前の、欲望と良心とかそういんもんだ」
「だから本物の天使というわけじゃないんだよ」
素晴らしくどうでもいい解説ありがとう。そんなことより本題を聞こうか。
「じゃあ、まず俺からな。お前はさっき優香のことを思い出したろ?」
…あぁ。そうだな。
「つまり、お前は優香を彼女にしたいんだよ」
…は?
不意をつかれ何も言えなくなった。
「要は、あのプルプル揺れるおっぱいをモミモミしたいわけだ」
ぶっちゃけすぎだよな、おい悪魔!
「いやいや、実際そういうもんだろ」
だからと言って、言って良いことと悪いことが…ふむぅ。
言ってる途中でふと想像してしまった。…ふむぅなかなか良い。
「ここに第一回、如月海斗の裁判を始める!」
とか、考えてるとなんか裁判が始まった。…まさか、俺が良いなとか思ったからか!?
ちなみに、声は天使でも悪魔でもない。また別のものだ。…裁判長と名付けておこう。
「検察側、主張を」
「はい!如月海斗は勇者でありながら不埒な妄想をして、あわよくばそれを実現しようとする不潔な男です!よって、私は如月海斗に、永遠の女子の不接触の刑を求刑します!」
ざわざわ…ざわざわ…と頭の中でたくさんの声がざわめくのが聞こえた。…つか、どんだけ俺の頭の中には人がいるんだよ。
「弁護側、悪魔」
俺の弁護お前かよっ!
「裁判長!あんたも男なら分かるはずだ!」
敬語使え!心象下げてどうすんだよ!
「男は、変態でナンボの生き物だ!女の乳揉んだりなんやりだけなんて甘ったるいんだよ!」
お前は俺を弁護してんのか!?貶してんじゃねえか!?
「…なぁ、裁判長…あんただって子供の時くらいあったろ?青春くらいあったろ?」
待て、その裁判長は俺の中の意識だよな!?俺とほぼ人生経験一緒だよな!?
「その時によ、思ったんじゃないのか—あぁ、女の胸をもみたい、と」
お前は俺を苦しめてるだけだろーが!弁護しろや!
「…むぅぅ、確かにその通りだ…」
微妙に渋い裁判長の声が肯定した…っておい!それでいいのかよ!?
「私も青春時代おっぱいもんだりチューしまくったことがあったな」
いつの間にそんなことしたんだよ、てめー‼
「…仕方あるまい…。男は皆、変態なのだ。自分が変態だと認識する男はそういないだろう。無罪放免!」
マジかよ…。なんか無罪になったし!
……なんだこの複雑な気持ちは。さっきの弁護の言い訳は確かにその通りとか思ったけど。
ぐちゃぐちゃだな!
「待つんだ!」
…今度は天使か。一体なんだ?
「そんな悪魔の甘言に惑わされてはだめだよ!」
いや、悪魔っつーか俺の欲望なんだけどね。お前も俺の一部だし、奴も俺の一部だよ。
「そもそも勇者になろうと思った時を思い出してよ!」
勇者になろうと思った時…あぁ。確かあれは最初の勇者の冒険譚を聞いた時だ。
正義を執行して様々なところで活躍し西や東を行ったり来たり。
そんな…勇者に俺は…
「母さんの復讐だろ!?」
そっちかよ!!つか、本当にお前は俺の天使か!?俺の心抉りやがって!悪魔の方がマシだぞ!
「今回の試合で勝てば、君のような子供を減らせるんだよ!」
…?どういうことだ?
「仮に君が勝ったら。その時は君は昇進するんだよ。そして、昇進すればそれだけ難易度の高い…危険なクエストにいける。そのクエストで死んでしまう人を減らせるんだ!」
…確かにその通りだ。それも人助けになる。
俺はそう、皆を助ける勇者になりたかったんだ。意地の悪い奴だろうが、優しい人だろうが、同業の勇者だろうが。
皆を助ける勇者になりたかったんだ。
「…フン、まぁそのお礼の一部としてお前も幸せになりゃあいいんじゃねえの?」
…胸を揉めってか?
「あぁ。その通りだ。どちらにせよ、お前は勝たなきゃならない。悪魔の俺に賛成しようが、天使のあいつに賛同しようが。それは、変わらねえ」
俺は心を決めて、改めて現実に戻った。
…
……
………あれ、なんで相手が打ち込んでこなかったの?
「それは、あれだ。今の出来事は全部一瞬でお前の頭のなかで展開された出来事だからな。実際は何もないのと同じだ」
そんなご都合主義……。
「そんなことより本題に戻す。…勝てよ、俺」
悪魔よりの励ましを貰って俺は構え直す。
木刀を構える。
そして、どちらともなく相手に突進する。どちらとも風の魔法を使っての突進だから、その分先ほどよりも早く得物を打ち合わせた。
相手は西洋剣、こちらは刀。見た目からすると、刀が細くて場合によっては中折れしてしまいそうだが、しないところを見ると、かなり丈夫なようだ。そして、奴の力は俺ほどではない。
そう思って俺は呪文を唱えた。
「エクスプロージョン!」




