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<ガイア>列伝  作者: 樹実源峰
はじまりの物語
20/69

懐かしさの正体とは

おはようございます。本日は更新を予定通りに行えました。

…これからも励んで行こうと思います、はい。

えーと、この話の次は一つの区切りとなるため短めです。…毎回短いだろと言われては反応できませんが(苦)

それで、次が短いため次の更新は本日の正午あたりを予定しております。よろしければお昼休みにでもご閲覧いただければ、と。

さて、長文でしたが、ご閲覧ありがとうございます。

「…あぁ、くそ…儂は負けたのか…ゲホッ!」

彼はうつ伏せの状態だった。が、最後の力を振り絞り仰向けになった。

「全く、敗者ならさっさと死ねよ」

側で海斗が苦笑を浮かべていた。

「ゲホッ…冷たい奴よ。…もう少し死に際を見届けてやろうという慈悲はないのか……ゴホッ!」

「俺も傷だらけだしな…ぐ」

そう言って海斗は横腹を抑えた。恐らく魔法を使って辛うじて立ってるという有様だろう。

「まったく、なんと充実した闘いであったことか…!…ゲホッゴホッ!今までの人生よりも充実しおった!」

「まったく、元気な瀕死人だぜ…」

だが、海斗にとっても今回の戦いは単なる戦闘とは割り切れないほど生を実感したものであった。

そのまま戦闘の余韻を味わうような静かな時間が過ぎていきギ・ガーの体を蝕む痛みが大きくなったところで、ギ・ガーは言った。

「カイトよ、この世の置き土産に話しておこう」

「何をだよ?」

「三ヶ月後、儂ら魔王軍は『人間の領域』に侵攻する」

「…は?いきなり何言ってるんだ、お前?」

話が飛躍し過ぎて一瞬反応が遅れた。

「本来は儂の部隊が帰ってから儂らの持ち帰った情報を使い慎重にことを進める予定だったのだが、貴様のせいで儂の部隊は全滅してしまったしな」

「すまんな、こっちも生活がかかってる」

全く謝意の篭ってないセリフを言った。もちろん皮肉っぽくだ。彼はゴブリンを恨んでいたからその分の怒りもあったのだが。

「責めておらん。むしろ儂らの世界では邪魔者は排除するのが当たり前だからな。それで、儂らが帰ってこなかった場合かなり入念に準備をする。それに少なくとも三ヶ月はかかるだろうということだ」

「おいおい、待てよ。お前、そんな情報を漏らしてもいいのか?」

「ふん、儂は魔王を嫌っておる…憎んでいると言っても過言ではない。奴は儂を負かすことはできずに儂に部下になるよう小細工を弄しおった、小狡いやつよ」

…今更ながらこいつが魔界においてどういう強さなのかと思った。小細工なかったら魔王とやら脅かすレベルかよ…。

「………」

「それに比べ貴様は儂と正面から堂々と戦い抜いた。まぁ、とどめは背後からだったがそれはひとえに貴様の力量だ。非難はせん。儂を負かした、それだけで十分だ。………ゲホッゴホッ…ガハッ」

ギ・ガーは言いたいことを言い終えたかのように再び咳をした。それには血が混ざっていたが、俺は治療したりすることなく奴の様子を見ていた。単純に勝者として、復讐としてではない。

「カイトよ、貴様に頼みたいことがある」

咳を長い間したあと、奴は唐突にそう言い始めた。

「なんだよ」

「儂の腰に差してある短剣…それを貴様にやる…儂の家系に古く伝わるものだ。…儂が父親殺しをした時に継いだものだ。儂には子がおらぬし、儂に勝った貴様にはちょうど良いものだ。餞別としてくれてやる」

「そうか…受け取っとくぜ」

そう言って俺はその短剣を奴から取った。鞘は簡素な革製だった。刃も

「…取ったか。…それでは儂は長き旅路に出るとしよう。クク…今度はどんな奴と闘えるか楽しみだ」

奴の目はほとんど光がなかった。…もう終わりが近いのだろう。

「そうか。お前のことだからどうせどこ行っても頂点を取るだろんぜ。どうせな」

「そして、貴様がやってきた時に儂はもう一度対決するというわけだ。…次は負けんぞ」

ククク…と再び

「あぁ。だから俺が行った時には今よりも腕を磨いて待っとけ。ついでに俺が座る玉座も磨いとけよ。また勝ちに来てやる」

「クク…楽しみだ。実に楽しみだ。…では、儂はもう行くぞ。ではな、カイトよ…。魔王殺しの直系よ…」

奴の最期の言葉は感傷に浸っていた俺の意識を一気に現実に連れ戻した。

「…魔王殺しの直系!?…おい、お前今なんて言った!?」

だが、そう俺が怒鳴っても奴はもう答えなかった。その顔は相変わらず醜かったが見ようによっては満足してるような顔に見えた。

…クソが、そんな顔して寝やがって…、しかも重要なことを言い残してこちらの心を揺さぶりやがって。最期まで喰えねえ奴だ。俺はそんなことを心の中で呟いてから、言った。

「偉大なる戦神カルドよ、勇敢な戦士ギ・ガーの魂を祝福したまえ」

すると地面にギ・ガーの遺体がまるで、沼に沈むように地面に沈んでいった。それを最後まで見届け近くに落ちていた奴の剣を手にして、奴が沈んでいった所に突き刺した。墓標代りに。

それを見ると俺は不思議な気持ちになった。そもそも、ゴブリンやらなんやら『闇の領域』の連中は俺の母親の仇の筈だったのに、どうしてこいつにはここまでするのだろうか。広場のゴブリン同様残してもよかったはずなのに…。

しかし、俺はその問いには答えられないままその場を後にした。


「チチ…チ…ゲホッ…。やはり俺が強いんだよ…チチ…」

全身と剣を自分と仲間の血で濡らしたゴブリンがこちらへ近付いてくる。

「チチ…チ…やっと始められる…チチチ……チチ…ゴボッ」

ゆっくりゆっくり近付いて来る。

如月さん…助けて…と姫川は心の中で助けを求めた。


「おい、カイト。あのトラの飼い主がいないぞ」

同い年くらいの奴を気絶させて誘拐グループを縛っていると突然リュウがそんなことを言ってきた。

「…え?…俺が探して来る」

「あぁ。任せたぞ。俺の足は追うには遅すぎる」

そう言ってリュウは、先ほど撃たれた足を叩き痛そうな顔をした。

「けが人は休んでろよ」

そう言って俺は右手に木刀を持って駆け出した。

すると、すぐに奴は見つかった。

「いたな、この野郎…!」

「な、まさかもう見つかるとは…!?」

ボスっぽい男は右手に持った銃を左手に連れてきた少女、青崎さんに突き付けて要求した。

「止まれ、止まらんとこいつを撃つぞ」

チッ、厄介なことになった。と俺は思ったが口に出さない。今は相手刺激してもあまりいいことはないことくらい俺にも分かった。

その程度の事を考えるくらいにはまだ冷静で、その程度くらいしか考えられないくらいには俺は怒っていた。

「そうだ、そのまま木刀を置け」

俺は立ったまま木刀を地面に落とした。

「そうだ、そのまま動くな」

と言って奴は俺に銃口を向けた。

「そして、死ね。ペトラの恨みだ」

だが、その選択は間違っていた。パンと、銃声が響くと同時に俺の体は既に射線上にはいなかった。一秒もかからず奴に距離をつめて銃を持った腕の肘を力の限り殴った。

ボキリと嫌な音を出してその肘は普段とは逆方向へと曲がった。

たまらず、銃を離した男には目をくれずに、左にいた青崎さんを引き離した。これでもう戦況はこっちのもの。ボスっぽい男は右腕を抱えて呻いていた、仰向けに倒れて。そのガラ空きになった股間に本日二度目の蹴りを入れた。

鈍い音がしてその男もまた泡を吹いて気絶した。


「チチ、まずは一太刀目……ギッ」

私に斬り付けようとしたゴブリンの頭がとんだ。まるで刎ねられたかのように。

「…姫川さんに手を出してんじゃねえよクソ野郎」

その声を聞いた瞬間心臓が跳ね上がったような気がした。三年前と同じでまた自分を助けてくれたのだと思った。

三年前、人攫いに攫われたときに若い男に捕まったときも、サングラスの男に銃を突きつけられた時も彼は助けてくれた事を思い出した。ずっと何故か忘れていた。いつも遊んでいた赤髪の彼ともう一人は誰だろうと思っていた。それは、彼だったのだ。

実は彼女の名前、姫川優香は本名ではない。本名は青崎優香。なぜ本名を隠しているかといえば、家が明らかになると厄介な事になるからである。三年前やそれ以前のように何度も薔薇の国の王宮に訪れることのできる父を持つ彼女は、勿論一般人ではない。無論一般人とて王宮への立ち入り自由だが、庶民にとっての王宮の独特の雰囲気は気軽に立ち寄れるものではない。

付け加えるなら、彼女は薔薇の国に住む人間ではない。

彼女の父親は三十一代紫陽花の国の現国王、青崎古洞である。その娘である彼女は王女だ。だから、三年前の人攫い集団は最後まで彼女だけでも確保しておこうとしていたのである。

「…グ…大丈夫か、姫川さん…?今、助けてやるからな…」

そう言って海斗は彼女の猿ぐつわを取り、そして先ほど貰った小刀で縛っていた縄を切った。

「あ、ありがとうございます…如月さん…」

「怪我はない?……何かされた?……ぐ…」

自分はあからさまに酷い怪我をしていてボロボロで今にも倒れそうだった。三年前とは似て非なる状況だが思わず微笑んでしまった。

「はい、大丈夫です」

そう言った瞬間彼は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。

「き、如月さん!?大丈夫ですか?!」

立ち上がった彼女は彼に駆け寄った。

「…少し、魔法を使い過ぎた……みたいだ……。ちょっと動けそうにねぇな…」

「今度は私が貴方を救う番です。ですから如月さんは安心して眠ってください」

「だ、だけど…」

「フォールスリープ」

尚も起き上がろうとする海斗を魔法で眠らせた。そして、彼女はその寝顔を眺めて

「こうして、寝顔を見るとあの時の面影が残ってますね…フフ」

と言って昔を思い起こした。よくよく思えば彼とはあの事件以来だから、三年は会っていない。そう思うと急に懐かしさと恋しさが込み上げてきてその額にキスをした。本人が起きていたらかなり喜んでいただろうが幸か不幸か彼は眠っていた。

「さて、私も仕事をしましょう」

彼女は嬉しそうに笑顔で言った。

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