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<ガイア>列伝  作者: 樹実源峰
はじまりの物語
17/69

獣と獣

すみません、夏休みの宿題に追われて更新の時間が持てず…よよよ。

まだ終わってないんですがとりあえず時間が取れたので更新させてもらいました。

…本当申し訳ございませんでした。

当然のことながら、海斗を仕留め損なったと分かったギ・ガーは攻撃を切り替え先程外した右手をそのままに左で腹を殴ることにしたらしく、左の拳を握った。が、しかしその拳を海斗の体へねじ込む直前に、獣のような状態だからこそ感じた、純粋な生命の危機を感じて獣のようにその場を急いで飛び退いた。

バキィ、と凄まじい音がして何もない空間にヒビが入った。いや、これは正確な表現ではない。一部分からまるで、水上の波紋のように円のようなヒビが広がっていた。その起点は海斗の、誰かを殴るかのように突き出された、右の拳からだった。

魔法の解説をすると、これは風属性魔法による瞬間的加圧だ。一気に風を一点に送ることにより、その場にあったものを高速射出させるのが通常の使い方だが、今回は避けられたためか空気中に作用し、拳をぶつけられた箇所から空気が周りに高速射出され、一時的空気同士がぶつかり合い重なった箇所で光が屈折し、まるで空気中にヒビが入ったのように見えたのである。しかし、それは本当に空間を割ったりしたわけではないのですぐに消える。

単純な脅威に反応しただけのギ・ガーは先程の空間を揺らがせた威力をを考えようともせず単純に突っ込んだ。

再度拳に力を溜める海斗。しかし、ギ・ガーは地面を思い切り踏み込み、一瞬で10メートルもの距離を縮め、力を溜めている海斗の目の前に迫り、至近距離からの膝蹴りを繰り出した。

力を溜めるのに集中して気付かなかったのか、そのまま後方の壁に叩きつけられるがその目は、赤く紅く染まった鋭い目は、ギ・ガーを捉えていた。そして、繰り出す右の拳から、火炎放射器のように勢いよく炎が放射された。

土壇場で危機を察知し回避しようとしたギ・ガーは、しかし間に合わず炎に腕を飲まれる。なんとか腕だけで済んだと言うべきか、炎が消えたあとに見える腕は焼け爛れ使い物にならなそうだった。

「グラァウ」

ギ・ガーがまるで獣の鳴き声のようなものを口から発すると焼け爛れた腕が元の緑の腕に修復されていく。…先程まで魔法が使える素振りがなかったのに。

いや、魔法が使える素振りがなかった…のは、あくまで『バースト』までだった。実のところ、『バースト』は誰でも使えるわけではない。かなり高い魔法適性を備えているものでも使用は躊躇うものである。使用したときにその際の動き方によっては後々の人生にすら影響を与えることもある。痛みによる解除もないし、生半可な脅威は避けようともしない。その結果、重傷を負ったりするのである。

それほど、危険で使用者を選ぶものなのである。因みに、魔法適性とはどの程度の魔法を扱えるかという目安である。当然のことながら高ければ高いほど強力または複雑な魔法を行使できるのである。これには、血筋や才能も関係するがある程度努力で伸ばすこともできるものだ。

だが、『バースト』が関係するのは魔法適性ではなく、使用者の潜在能力である。ここに努力の介在する余地はない。単純に魔法に関係する潜在能力があれば『バースト』を発動できる。

つまり、ギ・ガーは潜在能力か否かは別として魔法を使える。しかもかなり高位の魔法をも操れる潜在能力がある。

普通なら、相手は戦意を喪失してもおかしくはない。剣の腕(剣術ではない)だけでもかなり苦戦を強いられる相手なのに魔法を使わせても一流なら勝ち目は相当に薄いからだ。

だが、それに相対するのも狂戦士、実戦で獰猛なレッドドラゴンを単独で倒したほどの精鋭。先程は剣でも、力では負けるが、互角の戦いをした。魔法もレッドドラゴンを怒涛の水で圧倒できるほどに強力なものを使える。

故に、二人は条件が互角。もはや、勝負を決めるのは相手に傷を癒す暇もないほどの怒涛の攻撃をするか、一撃で葬りさるかしかない。両者は互いに無意識でそれを感じ取りそれぞれ動いた。

先に発動したのはどちらかは分からなかった。唯、魔法の残り滓のような火花が両者のちょうど真ん中あたりで散った。だが、この場にもし魔法を知覚することの出来る者がいたなら、この結果は違うように見えたはすだ。

起こったことは、ただ両者ともに威力に定評のある炎魔法の巨大な炎弾を同時に放った。両者の炎弾は一瞬でぶつかり合い一瞬で互いを相殺した、だけである。早過ぎて実際には相殺した炎の最後の残り火とも言える火花しか見えなかったが。

それを見た両者は同時に剣を抜き同時に相手に走り寄り同時に相手の剣に自分の剣を当てに行き、そして同時に剣を弾かれた。まるで、互いが互いの鏡のように互いに同じ行動をして同じ結果を出したように見える。それはつまり、二人の根本的なところは似ているということだ。性格や、考え方や、価値観などが。しかし、あくまで似ているだけであって、同じではない。

それを示すかのように直後の二人の行動は違っていた。ギ・ガーは右の拳を固め、そしてその拳は赤く光っていた。炎属性の強化魔法の『爆衝』、体やものの一部に魔法をかけその部分が触れたものを爆発させる、あるいは爆風で吹き飛ばすものだ。

一方で海斗は、その拳を親の仇かのようにジッと見ていた。

次の瞬間、ギ・ガーは拳を海斗の腹へ向けて繰り出した。避けにくい場所を目指して放たれた拳に、海斗はその手首を右の拳で殴り方向を逸らすことによって攻撃を回避した。魔法をかけられた部位は拳なのでそこにさえ触れなければ影響はないのだ。だが海斗は恐らく獣の危機察知能力のようなものが働いたのか左拳を固めた。直後、左足を軸にして手首を殴られた威力を利用し体を回転させて威力を付けた右回し踵蹴りが放たれ、それに海斗は左拳で殴り相殺しようとするが、こちらはなんとかだけでほぼ威力はない。当然のことながらその左拳を弾かれて、その蹴りが海斗の右脇腹にヒットして、そのまま吹き飛ばされ再び壁に叩きつけられた。そして、海斗はそのまま動かなくなった。

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