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<ガイア>列伝  作者: 樹実源峰
はじまりの物語
13/69

過去の事件

それは、ある日の出来事だった。ある日と淡々と語っているがその出来事は俺の後の人生を変えるほど大きなものだった。


三年前のその日俺はいつも通りリュウのところへ遊びに行き、剣術の練習をしていた。



タァンッ!


「痛ッ!?この野郎手加減しろよ!」


とてもいい音をたてて竹刀は俺の頭を叩いた。要するに俺はチャンバラで負けたと言うことだが。


「はっはっは、負ける方が悪いんだよ!しっかしこれで99勝0敗か。力の差があるなぁ」


というリュウに向かって俺はまた文句を言った。


「仕方ないだろ。こっちは農作業やら勉強やら忙しいんだから…」


「そう言うけどなカイト、僕の勉強、お前のとレベルが違うんだぜ?」


すぐにそう言い返され俺は若干カチンときた。


「お前そもそも剣術指導の時間あるだろ!俺はないんだぞ!」


「まぁ、だから僕はお前に勝たなきゃいけないんだけどね」


そう言って俺の怒りを受け流し話をそらすかのように空を見た。俺もつられて見上げた。

少し、夕焼けが見え始めた時間帯だった。


「まー、言いすぎたかもな。すまんな、カイト」


と急にそんなことを言ってきた。


「どうした、お前らしくないな」


俺はからかいを込めてそう返し奴を見ると、奴は真剣な顔をした。


「僕らはいつまで遊べるんだろうな。いつかは僕らも天職を受けて遊べなくなるんだろうな」


そう真面目に言う奴に俺はからかいでも返してやろうかと口を開きかけた時に、大声が聞こえた。


「優香ーーーー!!優香ーーーー!!」


「ん?誰だろうな?」


とリュウは聞いてきた。


俺は話を邪魔された気まずさもありもごもごとわからないと返した。


「行ってみるか。どうされましたか?」


とその人の元へいくとそれは、この前に会った青崎優香の父親だった。


「む?君たちは優香の…。そうだ、優香を見なかったかね?」


そう聞かれてお互いに顔を見合わせたが彼女の姿は見ていなかった。だから、見てないと正直に答えると、彼は若干落胆した顔をして、


「そうかね、では君たちも優香を探してくれんかね?」


と頼まれて俺たちはそれを承諾した。


…のだが、


「どこにいるんだろうな、リュウ。…おい、リュウ?」


手がかりなど知ってるはずもないので、そうリュウに話を振ってみるとリュウは顎に手を当て考えていた。


「おい、どうした?なにかあったのか?」


反応がないので耳元で声を出してみたが、リュウは普通に静かに口を開いた。


「なぁ、カイト。最近の事件知ってるだろ?」


「あの噂?…あー、もしかして人攫いか?」


「あぁ。この前に僕らも一組捕まえただろ?」


「あー、あれね…」


最近、この国では身代金を目的に子供を攫うという事件がよくある。


かくいう俺たちもこの王宮で遊んでいたらそういう奴に出くわしたというか狙われたことがある。


王宮に出入りするのは普通は高貴な生まれの者しかいないから身代金を多く請求しても問題ないという利点があるからだ。因みに俺は農民の生まれだが、家がリュウの家と先祖の頃から親交があり、リュウの友人として出入りしている。つまりは、まぁ俺を人質にとっても大した意味はないのだ。


だが、先程の話にも上がった俺たちを襲った犯人は運が悪かった。よりにもよって俺たちを狙ったからだ。


実はリュウが習得している剣術は昔から王家の使う剣術であるためそこらの悪党くらいなら簡単に打ち倒せるくらい強いうえに、俺もさっきみたいにチャンバラなどで若干使えるために自分でも言うのはなんだが強いだろう。


つまり、子供しか狙わない脆弱な奴らごときには遅れを取るわけなどなく、どころかその二人を縛って警察に届けたくらいだった。子どもの体力じゃあ重くて引きずってったんだけどね。その時に犯人の一人のズボンが破けてお尻がかなり赤くなってしかも…っと、今は話題が違うわ。


「だけど、問題なのは狙われたのは俺らじゃないってことだな」


「恐らく、親から離れたということは僕らのところへくる予定だったんだろう、いつも通り」


この前、会ってから彼女とは度々遊ぶような中となっていた。ただ、彼女の住む場所は隣の国らしいので滅多に会えないのだが。


「そして、途中で捕まった、か」


「そうしかないよな…」


しかしながらやはり貴族というのは自身の護身に最大限の注意を払う。たとえ子供であってもだ。だが、貴族と言っても子供は子共。遊べると浮かれてついつい無防備になってしまうこともある。今回もそのケースだろう。


「じゃあ、まぁ聞き込みからやるか」


「外にいた人…庭師さんとかかな」


その後俺たちは庭師さんたち(やっぱ王宮にはたくさんいた)に話を聞いてどうやら眠っている少女を一人の男が抱えて行ったということが分かった。質問された時は持病の発作がだとか上手く言いくるめていたみたいだった。


「手慣れていそうだな」


「それで、どうするリュウ?武器とかは?」


「相手が一人とは考えにくいよな…。人質の様子を一人で何日も寝ずに監視できるわけもないし、集団だと思うからな」


「…少なからず戦闘の可能性もあるわけか」


「まぁ、僕らは正当防衛と言って剣を振るえる気がするけど下手をして相手を殺してしまったらこちらも立場が危ないしな」


「いや、お前の家の圧力あれば大丈夫だろ」


そのくらいの権力はある、まぁ、個人情報保護法などの観点において詳しいことは伏せておくが。


「いや、あんまり使わない方がいいんだよ」


「まぁ、そうだな。なら、練習用木刀だろうな」


「…まぁ、僕らの木刀は簡単に剣には負けないしなぁ…」


実は俺とリュウが持っている木刀は普通の木刀に比べ耐久性や固さが優れている。前に、街に出たゴロツキと前の木刀で闘ったら相手が剣を持っていたのもあり折れてしまったのだ。最終的には折れた先を投げつけそれに反応しているのを下から短くなった木刀で腹を殴打したのだが。


その時、腹を殴打した木刀は折れているため傍目から見ると、木刀で突き刺したように見えた。どうでもいいか。


そして、そのあとリュウの父親にどうせこいつらは止められまいと諦められたのか、次にいつそういうのと闘ってもいいように特注の木刀をくれたのだ。


「でも、くそっ、一回取りに戻らないと…」


「焦るな。すぐに殺すことはないはずだ。今は彼女を助けることだけ考えよう」


そして、俺たちは木刀を取りに行った。

一月四日更新!

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