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<ガイア>列伝  作者: 樹実源峰
はじまりの物語
11/69

約束の時

昨日のアレから姫川さんとは全く話すことができなかったが、4/14 午前10時、俺はあの広場に立っていた。俺が勇者になって六日目である。しばらく待っていると突如隣にドシンというものすごい音と共に奴が現れた。…どっから飛んできたんだよ。


「来たかカイト!まずは、儂を恐れずに来たことに対し敬意を示してやろう。…儂の同族の中にはな、儂が宣戦布告した途端どこかへ逃げ出す奴が多かったからなぁ」


耳元に口を近づけそう脅して来る奴に俺は言った。


「そうか、残念だったな。俺が腰抜けじゃなくて」


それを聞いた奴はニヤリと笑って


「そうだな。ところで腕の痛みはとれたか?」


「むしろ鍛えすぎてお前との戦いが一瞬で終わるんじゃないかと心配したくらいだ」


「そうかそうか。なら良い。さて、儂らの決闘に相応しい場所へ行こうではないか」


「決闘の場?ここでやるんじゃないのか?」


「いや、お互い邪魔が入っては興醒めだろう。ああ、そうだ心配するな。儂は貴様に配下を差し向けんことを約束しよう」


「そんな、口約束あてにできないな」


と、ここで一旦会話が止まった。ふと、奴の顔を見ると奴は少し悩んだような顔をしていた。なにかをしようかしまいか、そんな顔だったが、やがて


「カイト、『破れぬ誓い』を行うぞ」


「『破れぬ誓い』?なんだそりゃ?」


「文字通り破ることのできない誓いだ。これを行うと、誓いを破ったものには死が訪れる。ただ、それだけの単純なものだ」


「それは取り消せないのか?」


「無論だ。だからこそやる価値があるのだ。さて、やるかやらぬかどっちだ?」


「勿論やるさ。さあ、始めろ」


そう言うと奴はズボンのポケットから人形を二つ取り出した。


「やり方は簡単だ。この人形をもって、『我、汝に以下のことを誓わん』と言ったあとそのあとに誓うことを次々に言って誓うことをすべて言い終わった時に自分の剣でこの人形を刺すのだ。その瞬間からこの『約束』は効力を発揮する」


「そうか。で、なにを誓うんだ?」


「相手に小細工をしかけないこと。互いに相手に聞かれたことに対し真実のみをかたること、そして決着は決闘の場でつけることだ。その三つでいい」


「そうか、それじゃあ」


と言って俺はその人形を持ち


「我、汝に以下のことを誓わん。相手に小細工をしかけないこと。相手に聞かれたことに真実のみを語ることを、そして決闘の場にて決着をつけんことを」


と言って人形を突き刺した。


「お前の番だぜ、ギ・ガー」


そう言って奴をみると、奴はすぐに


「我、汝に以下のことを誓わん。相手に小細工をしかけないこと。相手の質問に真実のみを語ること。そして、決闘の場にて決着をつけんことを。さらに、我は決闘の場に罠をしかけてないことを」


そう言って奴は同じようにその人形を刺した。すると、二人の人形はサラサラと塵となって消えた。


「完了だ。これで互いに嘘はつけんし、誰からの干渉も受けん。ついて来い。決闘の場に行こうぞ」


それから三十分して俺たちは山奥の洞窟へ辿り着いた。そして、中に入ると、先には三つの道があった。それを見た時に俺はデジャヴを覚えた。その道を奴は左へ進み、俺もついて行くとやがて大きな広間へついた。


「決闘の場に着いたか。なら、早速…」


と俺が身構えるとギ・ガーは手を前に出して待てと言った。


「まぁ、待て。折角互いに嘘がつけないのだ。ここで、互いの情報を公開するのはどうだ?」


急に奴がそんなことを言い出した。


「そんなことして、お前にメリットはあるのか?」


「ある。お前らの情報をもってこいというのが元々の儂の任務だ。ここらで魔王様の命に従っておかないとお前を倒しても向こうで殺されるだけだ」


向こうとは『闇の領域』のことだろう。しかし、魔王とは?<ガイア>の歴史書の『新世史』によるととっくの昔に討伐された筈だが…。


「魔王って誰だよ」


「儂らの北の大陸を、遥か太古より統べる絶大な力をもつ偉大な王のことだ。おお、そうだ。折角だからもう一つ誓ってもらおう。お前は儂が決闘を始めるというまで決闘をしないと誓えるか」


これに嘘はつけない。だから口からでまかせは言えない。果たして奴の持つ情報を持つことは有益かと考えると、こちらにはあまりあちらの情報が入ってないことを思い出した。だから、俺はこう言った。


「あぁ。誓ってやる。お前は?」


「無論儂もだ。なら話を戻そう、質問しあおう。人間社会はどのような仕組みなのだ?」


そして、俺は話した。人間が互いに助け合って生きていることを。ほとんどすべての人が他人を殺さないことを。


「ほう、なるほど。儂らもそうだ。殺伐としていない世界、いいものよな」


と、その話を聞いて奴は言った。しかし、先ほど町の広場でこいつは、自分が決闘を突きつけると逃げた奴もいると言った。だから、俺は聞き返した。


「本当にお前らも同じか?」


すると、奴はニヤリと笑って言った。


「いや、違うな。儂らは幼い頃から互いに争う。そして、勝った者が得て負けた者は失うそのような簡単な世界だ。儂はその世界で勝ち続けて来た勝者だ。故に儂は今ではかなり高い地位にある。貴様が斬った部下はそれなりに強い奴らだった。奴らの種族にしてはな」


相手に聞かれたことに対してのみ真実しか語れないから、聞かれなかったことに関しては嘘八百を並び立ててもいいってわけか。やはり騙すつもりだった。これだから気を抜けないと思った時最後の言葉に疑問を覚え、そこで俺は質問した。


「種族?お前とお前の部下は種族が違うのか?」


「ん?あぁ、そうだ。奴らは軟弱なゴブリン族、そして、儂は頑強なオーガ族だ。その戦力差はまるで蟻と蜂のようでな。だが、儂の部下は強い奴らでな、かなり弱いオーガなら五体くらいで倒せるくらい強いぞ?貴様が斬ったがな」


かなり強いらしいゴブリンですら五体がかりで、かなり弱いオーガしか倒せないあたりに戦力差が滲み出ている。


「まぁ、でもそれは弱いオーガの話だろ?お前に当てはまることじゃあない」


「そうだ。儂は頑強なオーガの中でもかなり強者の部類に入る。貴様が勝てるかも分からんぞ?」


「勝てるか分からないんじゃない。勝つんだよ、それ以外の結末はあり得ない」


「そうか、じゃあどうせ決闘に敗れれば死ぬのだ、誓いを交わそう。お前は俺に勝つのか?」


「当然、必ずな。お前はどうなんだ?」


「無論、勝つ。そして貴様らの情報を以ってさらに上位へと行こう。全てを手に入れるため儂は勝つぞ、貴様にな」


「勝っても負けても恨むんじゃねえぞ」


「貴様こそな。では、決闘を始めよう」


互いに腰の剣を抜き、互いに構え、そして互いに相手の動きを迎撃すべく動かなかった

一月四日更新!

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