第8話~Dream,or Alone?~
「真雪~マネキン見てキモい~www」
「・・・見られてるみたいで気持ち悪い・・・」
「大丈夫か・・・?」
立体作品の部屋を探索している私達は、次の祐奈と雪を見つけるための手掛かりを探していた。
「マネキン割ってみたら何か出るかもよ~?割ってみる?」
「やだー祟られるよー・・・」
廊下一列にマネキンの首が置いてある。『個人の主張』という列記とした作品らしいが、こうもたくさん首が置いてあると吐き気がする。というか、動いても動いても視線が付いてくるので余計気持ち悪い。
「兄ちゃーーん・・・」
「おー大丈夫か?」
兄ちゃんが背中を擦ってくれているけど、一向に良くならない。
気持ち悪い、吐く、ヤバい、気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いヤバいヤバい吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く吐く・・・・・・・・・・・・
・・・ヤバい・・・・・・・・吐・・・・
ドサッ
「・・・真雪?真雪!?綱の助!!」
「何?・・・真雪!?しっかりして!!」
私の視界の端で二人が駆け寄ってくるのが一瞬だけ見えた。視界が真っ暗になる瞬間、並んでいたマネキンの顔がぐにゃりと歪み、血に濡れた笑みが共に見えた気がした。
――――――――――――――――――――――・・・・・・・・
「う・・・うあ・・・・・・?」
目を開けたら、何処かで見たような闇の世界だった。
「・・・夢・・・だよな・・・・・・?」
確認のために頬を引っ張ったら、みよん、と効果音が付いてもおかしくない位に伸びた。手を離すとまた、みよん、と戻って来た。
「夢だな・・・・・・。」
夢と安堵していたら、真向かいから、何かが走って来るような音がした。
「・・・ん?・・・・!?ひ・・・!!!」
目を凝らして走って来る物体を確認した。
マネキンの顔だ。先程一瞬だけ見えた血に濡れた笑顔がこちらに向かって走って来ていた。目は見開かれ、血が止めどなく溢れ出てきている。口は裂け、肉の様な物も見える。
「や・・・やだぁ・・・!!!」
私は恐怖で脚が竦んでしまい、動けなくなってしまった。マネキンは構い無しに迫ってきた。
『返セ・・・返セ・・・・・・主人ノ・・・・・・・・・・・』
何かを呟きながら迫って来る。私は夢であれど、死ぬと思った。私は覚悟して目を咄嗟に瞑った。
しかし、聞こえてきたのは爆音だった。驚いて目を開くと、目の前には純白のドレスを身に纏った女性が立っていた。女性は右腕を前方へと上げると、前方のマネキンが爆発した。それに続いて全てのマネキンを薙ぎ払った。私はそれをただ、ぽかんと眺めていることしか出来なかった。女性は全てのマネキンを消し去ると、私の方を振り向いた。顔は少し青白く、目はつり目だった。
「あ・・・あの・・・ありがとうございます・・・」
『・・・・・・。』
「・・・あの・・・さっき、マネキンが呟いてた“主人の”って・・・」
『・・・・・・指よ。』
「ゆ、指・・・?」
『・・・指よ。・・・あなた達なら、きっとあの子を救える・・・。あの子を思い出してあげて、そして、主人の指を返してあげて。大丈夫、あなた達なら、きっと救えるわ。』
「あの子って誰?あんたは味方なのか?」
『応援してるわ、小さな探検家さん。』
言うや否や、女性は闇の先に消えて行った。
「え、ちょ、待ってよ!!」
追いかけようとしたら、立ち眩みか、目眩が急に襲ってきた。
「うわわ・・・・・・!」
転ぶ・・・・・・・・!!
――――――――――――――――――――――・・・・・・・・
「う・・・・・・?」
視界に飛び込んできたのは見慣れない天井。横を見回して見ると、本棚が規則正しく並べられている。図書室か何かだろうか。ぐるぐると思考を巡らせていると、パタパタと軽い足音が聞こえてきた。
「真ー雪ー・・・?」
「安里・・・?」
「真雪!?起きた!!わーーーーい!!!」
安里がすごいスピードで私の傍に駆け寄ってきた。少し、涙目だった。
「ボースーーー!!真雪起きたよーーーーー!!!」
「本気か!?」
ドタドタと慌ただしい足音が近付いてきた。
「真雪!!!」
「兄ちゃん・・・。」
「大丈夫か!?」
「うん、ごめん・・・ありがとう・・・。・・・ところでここは?」
「正確には分からないが、見る限りでは資料室だと思う。お前が倒れた後、周りのマネキンの首が急に動き出して迫って来たんだよ。急いでお前を担いで走って逃げてた時に、一つだけ開いてた扉があって入ったところがここだ。」
・・・・ん?
「鍵が内側にあって幸いだったよね~。」
「鍵閉めてから暫くドアを叩く音が止まなかったから、薙ぎ払えるだけ薙ぎ払おうと思って少し構えてたら、ドアの向こう側で爆音がしたんだよ。」
「爆音・・・!?」
・・・あれ?
「爆音止んでからさ~、ドア開けたらさ~、立体の作品が目の前に立ってたんさ~。」
「それってさ・・・白いドレス着た女の人じゃなかった?」
「ビンゴ。」
・・・正夢?デジャヴ??
動けるようになった私は、ドアの隙間から廊下をそっと覗いたら夢に出てきた女性の彫刻が立っていた。作品名は『救済』。伸ばされた右腕の先には太陽の様なものが飾られていた。
『小さな探検家さん、あなたの仲間にはもうすぐ会えるわよ、頑張ってね。』
足元の土台にそう書いてあった。
「・・・祐奈に、もうすぐ合流できるかも」
「祐奈だけ?雪は?」
「・・・わかんない・・・」
「祐奈助が近くにいるのか?」
「夢で、この彫刻の人が教えてくれた。」
「じゃあ、もう行くか?」
「お~~~!!」
「うん・・・!!」
私達は部屋を出て、割れて粉々になったマネキンの中を進んだ。
『――――――みんな、あなた達を応援してるわ――――――――・・・・・・・』
「・・・なぁ安里」「ん~?」「僕ら・・・ここに飾ってある作品達、見たことある?」「・・・・」
安里は黙っていた。考えてるのか思い出そうとしているのか、訝しげな顔をしていた。
「(やっぱり分からないよなー・・・)」
私はポケットから、小さな袋の御守りを取り出した。
「(・・・これ、中に入ってるやつ、拾ってきたやつなんだよね。・・・なんで、持ってるんだっけ・・・・・・)」
この御守りは、物心付いた時から持っている御守りだが、効果などは、一切覚えていない。
私も黙って自分の御守りを眺めていた。
突然、私達の背後からガチャリ、と音がした。驚いて全員で身構えていると、ドアから出て来たのは祐奈だった。
「あ・・・あれ??」
「・・・ゆ・・・・・・祐奈ーーーーーーーー!!!!!!!!」
「みんな・・・!!」
「本当に会えた・・・!無事だったんだね!!」
「ほ・・・本当に会えた・・・!」
「ん?祐奈助、お前、誰かに教えてもらったのか?」
「え?あ、うん。『救済の妖精』って作品の人に、こっちだって。」
あれ?僕と一緒?
「作品名とはどうあれ、こっちに行けば仲間に会えるって言ってくれたんだ。」
閉まっていく扉の向こうで、像がウインクした気がする。あの人が、教えてくれたんだな。
「ところで祐奈、雪には会った?」
「いや、残念ながら・・・」
祐奈もやはり、雪には会えなかったようだ。
雪はなにがあったんだろう・・・もしかして、あの人が言っていたあの子って・・・
・・・・・・・・・・・まさかね・・・・
To be continue...
遅ればせながら最新話です。
雪に伏線がありますね、これからどうなるでしょう・・・