第2話~Welcome To Wonderland~
「いっ・・・いたたたた・・・」
暗く深い穴の底、地上の光も全く届かない闇の中、私は意識を取り戻して打ったであろう頭を押さえた。
「雪?安里?祐奈?・・・みんな何処にいるの、いたら返事して!」
自分の手さえも見えないほどの闇の中、私は必死で一緒に落ちてきたはずの友達の名前を呼んだ。
「・・・そ、の声は・・・真雪か?」
「祐奈?祐奈だよね!?」
声が返ってきたのは祐奈だった。真隣りから声が返ってきたため、私は必死に手探りで祐奈の腕をつかんだ。
「祐奈、これ祐奈の腕だよね?」
「おう。しかし良かった、遠くとかに行ってなくて・・・。」
「本当、一人は精神的にキツいよ。」
私達はとりあえず頑張って、手をつないだ状態で背中合わせの体制を取った。背中から人の温もりを感じ、少し安心した。
「・・・ところで、雪と安里は・・・?返事、返って来てないけど・・・」
「確かに・・・。おーい!雪ー、安里ー!聞こえるー!?返事してーー!!」
しかし声は闇に溶け消えるだけ。二人からの返事は来なかった。
「どうしよう・・・探すしか、無いよね?」
「普通だったらな。」
私の問いかけに、祐奈は少し沈んだ声で答えた。
「ただし今は普通とは大きくかけ離れた状態、真っ暗闇の中を歩き回るのは危険そのものだ・・・。せめて、光さえあれば・・・」
「光・・・ケータイがあるじゃん!」
ポケットの中を探り、私はケータイを取りだした。しかし、
「・・・なんで、電源が入らないの・・・?」
「なん、だと・・・!?」
祐奈もそれを聞いて慌てたのだろう、背中合わせの祐奈の背中が揺れ動いた。
「駄目だ・・・ウチのやつも入らない・・・。」
祐奈のケータイも、やはり電源が入らないようだ。
「ち・・・どうしろってんだよ・・・」
祐奈の背中が少し小さくなった。前かがみになったのだろう。とか言う私もどうすれば良いのかわからず、顔を上げ、見えぬ天を仰いだ。
すると私の額にコツッと何かが落ちた。
「あいてっ」
何かは額にぶつかった後、空いていた方の掌に落ちた。感覚しかないため推測だけれど、きっとそうだ。すると、一瞬にして掌から眩い白い光が視界を覆った。
やっとのことで目を開けた時には、背中の温もりは消え、つながれていたはずの手も無かった。
「嘘・・・、祐奈?祐奈・・・?」
立ち上がり、声をかけた。祐奈の声は返って来なかった。私の声だけが響いて消えていく。
「真っ暗闇の次は真っ白って・・・極端すぎるっしょ・・・」
自分の姿や影は把握できるが、地面から、目に飛び込んでくる周りの世界は全てが純白だった。
「・・・探すしか、無いね。」
一歩、足を踏み出した。何処をどう歩いているのか、遠くなのか、前なのか、全くわからないこの世界を、唯一人、歩き始めた。
To be continue...
2話目です。祐奈がサバサバしすぎたかも。次回はついに題名の通り、美術館へとステージは変わります。