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キョーハク少女  作者: ヒロセ
第四章 僕らにとってのハッピーエンド
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伝える事

 楠さんが周りの人を拒絶したり、前橋さんが落ち込んだり、雛ちゃんが僕を怒ったり、市丸さんがいつも通りに過ごしたり、何度も僕が困惑したり。

 金曜日は驚くほど金曜日らしくなく、月曜日以上に月曜日っぽかった。

 憂鬱で、憂鬱で、憂鬱で、途中にすごくドキッとして、そこからまた憂鬱で。

 休みの前日だと言うのに全く晴れやかな気持ちにはならなかった。

 どんよりしたまま迎えた休日。

 陰鬱な気持ちで目覚めた僕は、ひょっとしたら楠さんがいるのではないかと思い体を起こして部屋を見渡してみた。

 いる訳が無かった。

 人生そんなに甘くない。

 そんなの当り前だけれども。

 僕のようなしょっぱい人間はしょっぱい人生を送ることになるんだ。


「……ふう」


 しょっぱいしょっぱい言っていても仕方がない。今日は午後から雛ちゃんと会う約束をしているんだ。精一杯おしゃれをして、出来る限り清潔な格好を選ばなくては。

 その前に。

 何をするにしても歯磨きをしなければ始まらない。

 僕の一日は歯磨きに始まり歯磨きに終わる。

 ほとんどの人がそうなのだろうけれど。

 僕は一日を始める為に部屋を出た。




「私は優大が好きだ」


 僕が雛ちゃんの部屋に入って五分後、クッションで顔を隠す雛ちゃんにそう言われた。

 鈍い僕でも気付いていた。鈍い僕にも気づかせてくれた。

 でも、何故だろう。驚いていない僕もいる。

 昨日のお昼休みに言われた時も、驚いたけれどどこかで何となくそうなのかなとも思っていた。

 当然違うだろうとも思っていたけれど、でも大半はそれに気づきたくなかったのだろう。

 色々と怖かったから。


「昨日の様子から見るに、改めて言うまでもねえかもだけど、優大は鈍いからな。何もわかってねえかもしれねえ。だから言った」


 改めて言って貰えた方が僕は助かる。僕は馬鹿だから。


「何度も言おうと思った。でもその度に失敗してさ。みんな間が悪いったらねえよ。もしかしたら私が悪いのかもしれねえけど。でも、何だよ。簡単に言えるじゃねえか」


「……その……僕の――」


「自分のどこが好きとか聞くなよ。全部好きだ。面倒くさいと思うこともあるけど、それを含めて全部好きだ」


「……あ、ありがとう……」


 す、すごく照れる。


「どうしてこのタイミングで言ったのかは私に理解できない。でも、チャンスだと思ったんだろうよ」


「……チャンス……?」


 よく分からない、のだと思う。

 そんなことよりも、そんなこととは言いたくないけれど、とにかく僕は言わなければ。

 昨日一晩考えたことを伝えなければ。


「あの、僕――」


「あ、いやいいよ」


「――」


 雛ちゃんがクッションから顔を上げた。

 その顔は赤く、目が少し潤んでいた。


「今はいい」


 今は。


「告白しといてなんだけど、優大が何をしたいのかが分かららないし、すげえ気になる。優大の目的が分からない。優大の心が分からない。だからこの一件に片が付くまで返事は聞かない。多分今、優大もそういうことを言おうとしたんだろ?」


「あ、うん……」


「片が付いたと思ったら、その時にまた私は好きだって言う」


「…………うん」


「優大の気持ちは分かっているはずだ。私だって別に鈍い訳じゃねえ。でもだからこそ優大が何を考えてこんなことをしているのか分からねえ。それに、一応若菜だって友達だ。友達を放っておいて、ってわけにもいかねえ。できることはするつもりだ。でも幸せな結末にしようだなんて思ってない。一パーセントでも若菜が悪いところがあるんだ。どういう結果であれ、それを見届ける。そのあとまた、お前に言う」


「……うん」


「今日言いたかったのはそれだけだ」


「うん」


 まだ答えを出さなくていい事に、僕はホッとしている。

 多分良くない考えだ。

 けれど、ホッとしている。

 小さくため息をつく僕と、大きくため息をつく雛ちゃん。


「はあぁぁ、最悪だ。私にもっと勇気があればこんなことにはならなかったのに」


 赤い顔を振る雛ちゃん。


「違うよ。僕に勇気があればこんなことにならなかったんだよ」


 いや、勇気だけじゃない。僕には色々な物が足りなかった。

「そうかもな」と一度笑い、雛ちゃんが真面目な顔で僕を見る。


「とにかく、月曜日から私がすることは解決させるための行動じゃない。みんなが妥協できるような所へ着地できるようにするだけだ。優大は若菜がみんなと仲良くさせたいと思っているんだろうけど、私がするのは最悪の事態にならないようにすることだけだ。若菜がクラスの奴らに嫌われようがそれは仕方がない事だと思ってる。冷たいだなんて言って恨むなよ。私にできることなんてたかが知れているんだ」


「でも、雛ちゃんならきっとみんなを幸せにできるよ。……あ、その、これは別に雛ちゃんを頼っているっていう訳じゃなくて、もっと自信を持ってほしくて言っただけだから……」


「悪いけど、みんなを幸せに出来ようができまいが私はできる事しかしない。当然のことだ。出来ること以上のことは出来ない。それに私は早くこの一件が終わればいいと思ってるだけ。私は自分を少しでも正しいと思い込ませたいだけだ」


 よく、分からなかった。だから聞いてみよう。


「正しいと……? 一体どういう……」


 雛ちゃんが自虐的に笑う。


「だって私、さっきも言ったけど今ズルいじゃん?」


「……?」


 理解能力の乏しい僕に、雛ちゃんが呆れながら教えてくれる。


「ああもう。だから、えーっと、喧嘩で例えると、私がしていることは弱っている相手の寝こみを襲っているようなもんだろ? それはさすがに汚いと思ったから、せめて起こすくらいはしようと考えているんだ。分かるか?」


「……なん、となく」


「よしよし。何となくでいい。百あるうちの一でも理解しとけばそれで十分だ。そんくらいどうでもいい罪悪感だから」


「……」


 罪悪感。

 どうでもいいとは言っているけれど、どうでもいいのなら気にしないはずだ。

 何に対しての罪悪感なのか分からないけれど。


「優大は、もう何もするなよ」


「……でも……」


「頑張ろうだなんて思って余計なことするなよ。そんなの、優大らしくない」


「僕らしくない……?」


 僕らしさ。

 その言葉が妙に引っかかった。


「優大はいつだってどこだって怯えて戸惑っておけばいいんだよ。そんな優大が私は好きだ。立ち向かったりやりたいことを人に押し付けたりするのは私がやる」


「……」


「優大が何かやっても、ろくな結果にならないだろ?」


「……うん……」


「自分で言うのもなんだけど、きっと私の方がうまくやれるぜ」


「……」


 僕は頷かなかった。

 頷けなかった。

 僕らしさって、いったいなんだろう。





「優大君どうしたの?」


 あの後すぐ雛ちゃんが、「その、なんだ。とりあえず、今日は帰ってくれ。すごく恥ずかしいから」と言って半ば追い出すように僕を帰した。僕も恥ずかしかったので素直に帰ることにした。

 そんな僕が家から帰ってきてからしばらくして、お姉ちゃんがソファでテレビを見ていた僕の顔を覗き込んで来た。突然のことに少しびっくりしたけれど、それだけだ。


「どうもしてないよ。ただテレビを見ていただけだよ」


 お姉ちゃんがテレビを消し、僕の隣に座った。


「じゃあさっきやってたニュースの内容は?」


「……ぼうっと眺めていただけだから、覚えてないよ」


「違うね。ぼうっと、何かを考えていたんでしょ? 楽しくないこと」


 雛ちゃんのことも考えていたけれど、六割くらいは僕がやらかした大失態のことだ。楠さんの秘密をみんなにばらしてしまったことだ。


「僕はマイナス思考だからね。楽しいことを考えている方が少ないから仕方がないよね」


 雛ちゃんのことを考えれば、きっと楽しくなる。けれど今はそれを考えることが出来ない。


「悩み事ならまずお姉ちゃんに相談しなさい」


 顔を近づけてきたお姉ちゃん。


「うん、そうする」


 僕はお姉ちゃんの方を見て笑顔で答えた。


「なら話して」


 至近距離で話すお姉ちゃん。お姉ちゃんだけれども、あまりにも近すぎるのでちょっと恥ずかしくなってきた。


「別に今話すことは無いよ」


 顔をそむけるようにテレビに視線を戻す。


「嘘つき」


 お姉ちゃんが僕のほっぺたをぎゅいっと抓った。


「い、痛いよ。やめて」


「なら悩むのやめて」


「無茶苦茶だよ……。僕が悩むのは僕の勝手だよ」


「勝手に悩まれたら困る。だって気になるもん」


「悩んでないってば……。だからほっぺたを抓らないで」


「全部言わなくていいから。少しだけでいいから、何に悩んでいるのか説明して。そうしたら抓るのやめてあげる」


「……えーっと……」


 何か、当たり障りのない範囲のことを言っておこう。


「僕らしさって、何かな」


 気になっていたことを聞いてみる。これなら何も問題ないよね。


「あ、もう図書館へ向かう時間だ」


「えっ」


 結構答えを期待したのに。僕のほっぺたを放し、お姉ちゃんが立ち上がる。


「その答えは帰った時にね」


「え、あ、うん」


 さっさ居間を出て行く姉を見て、僕はお姉ちゃんらしいなと思った。



 誰もいない午後の居間。

 僕はテレビを見ている。

 いやテレビを眺めている。

 いやいやテレビの方に顔を向けている。

 いやいやいや偶然にもテレビの方に視線が向いている。

 いや。

 僕は目を閉じた。

 何も見たくない。

 目を閉じたのに。

 色々なものが見える。

 これも見たくない。

 ならどうすればいいのだろう。

 目を閉じても見えてしまうこれはどうすればいいのだろう。

 簡単な話だ。

 僕は必死で意識を閉じた。



 物音が聞こえた気がして目を開けた時、若干の意識の喪失を感じた。

 どうやら僕は眠ることに成功したらしい。

 どれほど眠っていたのだろうかと掛け時計に目をやった。

 七分、いや八分。

 僕は八分ほど眠っていたようだ。

 僕は八分しかがんじがらめの思考から逃れられなかったようだ。

 それよりも、先ほどの物音は僕の夢の中の音なのだろうか。それとも誰かが帰ってきたのだろうか。

 僕はそれほど寝ぼけてはいない頭を振り、眉のあたりをさすった。そのまま何となく髪の毛に手を置きくしくしと寝癖を整える。寝癖なんてついている訳がないのだろうけれど、一応。

 そして立ち上がる。

 物音がしたのは僕の部屋のあたりだったような気がする。

 どうせ杞憂に終わるのだろうけれど。

 僕の人生杞憂だらけだったからそろそろ分かる。

 幼い頃一人で留守番しているときに、親の帰りが遅かったら事故に遭っているのではないかと一人泣いたこともあったけれど杞憂だった。

 小学生の頃夜寝ているときに、泥棒が入ってきて酷いことをされるのではないかと不安になったこともあったけれど杞憂だった。

 中学生の頃高校受験のときに、受験票を忘れたり落としたりして受験できなくなってしまうのではないかとビクビクしていたけれど杞憂だった。

 最近は家を出るときに鍵を閉めたか不安になったり電化製品を何かつけっぱなしで出てきてはいないかと不安になったりするけれど大抵杞憂だ。……二、三度電気の消し忘れがあったけれど九割の確率で杞憂だ。

 悪い事なんてそうそう起きやしないのに、どうして僕はこんなにも不安になるのだろう。

 若干強迫観念にとらわれ気味な気もする。

 それを振り払うためにもこの物音が気のせいだったのだと確認して来よう。

 僕は携帯電話を握りしめ、出来る限りもの音をたてないように自分の部屋へと向かった。



 ドアを開けた時、部屋には明らかに誰かが侵入した跡があったけれど、それでもやはり僕の不安は杞憂だった。


「……楠さん……」


 部屋の真ん中にあるテーブルの上に、横たわった馬のお面と一枚の紙が置いてあった。

 僕は慌てて窓に目をやる。

 道路に垂直方向にあるベッド上の窓があいていた。楠さんがいつも入ってくる窓だ。

 僕は大急ぎで窓から顔をだし友達の姿を探す。

 遅かった。誰の姿も見えない。

 道路側の窓からも覗いてみる。

 当然、誰も見えない。

 はふぅと息を吐き、改めてテーブルの上を見てみた。

 馬と、手紙。

 手紙にはいい思い出があまりないけれど、見ないわけにはいかない。

 僕はゆっくりとそれに近づき、そっと持ち上げた。


「……」


 佐藤君へ。

 私は君のことが嫌いです。

 もう何もしないでください。

 できれば息もしないでください。

 さようなら。


「……やっぱり、手紙は嫌いだよ」


 雛ちゃんと同じことを言われた。

 何もするな。

 誰も僕が何かをすることを望んではいない。

 なら、それがいいのだろう。

 何もしなければよかった。

 動画を撮りたいだなんてみんなを誘わなければ雛ちゃんと小嶋君が傷つくことは無かったし、前橋さんに楠さんのことを問い詰めなければ楠さんは傷つくことは無かった。

 遡れば、そんなことだらけのような気がする。

 お姉ちゃんをすごく怒らせたこともあったし、三田さんを泣かせたこともある。

 思い出すのは嫌な事ばかりだ。僕の嫌なところばかりだ。

 手紙を置き、馬を手に取る。

 ひょっとして、ひょっとすると、僕がこの馬を見つけてしまったのが原因なのではないだろうか。

 あの時、秘密基地で足跡を見つけた時怯えて逃げればよかったのではないだろうか。

 あの時、馬の動画を撮ろうだなんて非日常的な事考えずに真っ直ぐ帰っていればよかったのではないだろうか。

 あの時、小学生の時に怒られたことを気にし続けて懐かしい呼び方で呼ばない方がよかったのではないだろうか。

 あの時、怖い同級生に怯えたままアニメを押し付けるなんてことしなければよかったのではないだろうか。

 あの時。

 あの時。


「僕らしさって、なんだろう」


 僕は気弱で臆病で後ろ向きで。

 負を固めたような人間だ。

 ここ最近僕がしてきたことは気弱でも臆病でも後ろ向きでもない。

 僕が僕らしく過ごしていれば、今でも以前のような平和で何もない日々を過ごしていたのだろうか。

 楽しくなかったけれど辛くもなかった。

 友達がいないけれど、友達を傷つけるようなこともなかった。

 ひょっとしたら、そっちの方が幸せだったのかもしれない。

 友達がいることは楽しいけれど、なにものにも代えがたいけれど、傷つけてしまうことは何よりもつらい。

 だったら、はじめから一人だった方がよかったのではないか?


「僕らしさって、なんだろう」


 一人寂しく生きるのが僕らしいのではないか?

 幻想妄想の世界でヒーローになるのが僕らしいのではないか?


「後悔なんてしないって決めたのに」


 少しずつ自分を変えて、友達を作って。

 後悔なんてする必要が無いと思っていたのに。


「僕は、何を望んでいるのだろう」


 友達だったのか。

 平和だったのか。

 無だったのか。


「……あの人は、何を望んでいたのかな」


 手に持った馬と高く掲げ、向かい合う。


「みんなは、何を望んでいるのかな」


 掲げた馬をそのまま頭の上に置いてみた。被りはしない。ただ乗っけてみただけだ。


「人の気持ちは、難しいね」


 自分を嘲笑い、馬を片付ける為にクローゼットへ向かった。

 この馬は貰った大切な物だから。陽のあたらないところへ片付けておかなければ。

 僕は馬を頭の上に乗せたままクローゼットの取っ手に手をかけ、勢いよく開いた。


「……?!」


「……」


「……」


「何? 私がクローゼットの中にいたら悪いの?」


「一般的には多分褒められたことではないと思うけれど、僕は構わないよ」


「あっそう」


 そう言って楠さんは素早く僕に馬を被せ僕を思い切り蹴とばした。


「い、痛い!」


 何も見えないけれどトタトタと走る音が聞こえる。どうやら窓から帰ろうとしているようだ。


「待って!」


 そう叫びながら馬を脱ぎ楠さんを視界にとらえる。

 楠さんは手に持っていた靴を右足だけ履き窓枠に足をかけているところだった。


「じゃあね佐藤君達者で」


「あの、楠さん!」


 楠さんが左足の靴を屋根の上に置く。このままでは帰ってしまう。

 帰ることは構わないけれど、伝えなければならないことがあるんだ。

 僕は屋根に降り立った楠さんに向かって大きな声で叫んだ。


「楠さんごめんなさい! 秘密をばらしてしまってごめんなさい! 嫌かもしれないけど、僕に何をしてもいいからこれからも僕と友達でいてください!」


「……」


 楠さんが屋根の上で僕の方を見てくれた。


「酷い事されるよ。私は過去にそういうことをしたんだから。佐藤君も知っているでしょ?」


「僕が悪いから、仕方がないよ」


「へぇそう。やっぱり君はマゾだ。気持ち悪」


「……それと、その」


「何、言いたいことがあるなら早く言ってよ。私だって屋根の上はそんなに好きじゃないんだから」


「なら玄関から来ればいいのに……」


 いつでも歓迎するよ。


「だから早く言ってってば」


 そうだった。

 僕は、伝えてみた。


「……さっきね、雛ちゃんに、好きって言われた」


 伝える必要があったのかどうか分からないけれど、とにかく言った。


「……。あっそ。お幸せに」


 それを聞いても楠さんの表情は変わらない。


「それを私に伝えてどうするの?」


「……沼田君に好きって言われたこと、僕に教えてくれたから」


「そう言えばそんなこともしたっけ。やられたらやり返す、立派だよホント。死ねばいのに」


「……死には、しないよ。生きさせてもらうよ」


「ふーん。勝手にすれば。じゃあこれからもよろしく。良いお友達でいようねさよなら」


 それだけ言って、楠さんが視界からいなくなった。


「ま、待って……! もう少し……!」


 引き止める為に窓から身を乗り出してはみたけれど、楠さんはすでに家の前の道路に立っていた。


「また月曜日に」


 視線だけ向けてそう言い、すぐに視線をまっすぐに向ける。そして早歩きで帰って行く。その姿を目で追うが、すぐに自分の部屋の壁が邪魔をして楠さんの姿が見えなくなってしまったので別の窓へと移る。

 楠さんは急ぎの用事でもあるのかスピードを緩めることは無かった。

 おえばよかったのだろうけれど、なんとなく、追う必要はない気がした。

 残された手紙も、なんだか気にならなかった。

 僕の部屋に来てくれた。

 それだけで充分答えになっているような気がするから。


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