スカイぺの音にビビる毎日
山から家に直帰して、お姉ちゃんと遊んで、ご飯を作って、みんなと一緒にご飯を食べて、お姉ちゃんを振り切ってお風呂に入って、お風呂から上がって、お姉ちゃんを振り切って部屋に入って、パソコンの電源をつけた。
廊下でお姉ちゃんが叫んでいるが気にしないでおこう……。ゴメンねお姉ちゃん……。
すぐにスカイぺをつけてネット上の親友まりもさんのログイン状態を見てみる。
「あれ……。いないや……」
この前ログインしたのは、土曜日かな? 僕二日もログインしてなかったんだね。
僕にとって二日はすごく長い。それくらい、遊び相手がいないから。
遊び相手はお姉ちゃんくらいだよ……。……廊下のお姉ちゃん、大人しくなったね。部屋に戻ったのかな?
と、ここで!
「あ!」
タイミングばっちり!
まりもさんがちょうどログインしてきた。
僕はさっそくメッセージを送った。
ユウ:こんばんは!
まりも:やあ。二日ぶりかな?
ユウ:うんそうだね
まりも:毎日のように話していたから死んでしまったのかと思ったよ。
ユウ:死んでないよ。ちょっと、バタバタしてて……
まりも:パソコンの前に座る時間が減るのはいいことだね。これから先スカイぺにログインする時間が減っていくといいね
ユウ:そんな。僕まりもさんと話したいよ
まりも:嬉しいこと言ってくれるね。でも顔も名前も知らない相手をそこまで信用するのはいかがなものかな
ユウ:でもまりもさん優しいから、信用してもいいよね
と、ここで突然どんどんと隣のお姉ちゃんの部屋から物凄い音が聞こえてきた。どうやらお姉ちゃんが僕の部屋の壁をどんどんと叩いているみたいだ……。さっき相手にしなかったことを怒っているみたい……。あとで謝っておこう。今はそれよりもスカイぺだ。
まりも:私は別にかまわないけれど、こんなコミュニケーションツールだけのつながりなんてすぐに切れてしまうよ。パソコンが壊れでもしたらもう連絡がつかなくなる。そんな薄いつながりに頼ってはいけないよ。君はもっと現実世界を大切にするべきだ
ユウ:うん。それは分かってるよ
ユウ:でも、実は今日親友ができたんだ!
まりも:へぇ。それはそれは。でも親友なんてものは突然出来る者なのかい?
ユウ:親友ができたというか、昔の友達と仲直りできたんだ!
まりも:なるほどね。私としては少しさみしい気もするけれど、いいことなんだろうね。おめでとう
ユウ:ありがとう!
まりも:実生活が充実してきて、私の事なんか忘れるくらい現実を楽しんでほしいものだね。私は所詮、君の想像上でしか生きられない存在だからね
……それは、僕嫌だよ。
まりもさんのことは絶対に忘れたくないよ。
だって、一番の親友なんだもん。
例え顔が分からなくっても、名前を知らなくても。
そんなの関係ないくらい好きだもん。
ユウ:まりもさんも現実だから絶対に忘れないよ。僕まりもさんのこと好きだもん
まりも:
回線の不都合か、そのあとすぐにまりもさんのログイン状態が解かれ、返事がないまま、その日のスカイぺを終了した。
まりもさん。
それだけしか分からないけれど、とっても優しい人。
地球に隕石が落ちてきて、僕と誰かが生き残るのだとしたら、一番生き残っていてほしいなと僕が思ったのは、顔も名前も知らない、パソコン越しのつながりしかないまりもさんだった。
それくらい、まりもさんには支えられたから。
誰よりも、まりもさんは優しい人だから。