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からくり競艇人物外伝

からくり競艇人物外伝第4話:鎌倉明菜編

掲載日:2026/02/03

外伝:『真紅の氷華、静かなる独走』

――女子レーサーNo.1、鎌倉明奈の肖像

「女王」という呼び名を、鎌倉明奈はあまり好まない。

その言葉に含まれる「守られる存在」という響きが、彼女の誇りにそぐわないからだ。

大阪支部のエースとして君臨する彼女のマブイは、透き通るような純白に、時折混ざる鋭い真紅。属性は、水の極致である**「氷華」**。彼女が水面を駆ければ、その軌跡は一瞬で凍りつき、後続の機体の操作を狂わせる。

「明奈ちゃん、今日も完璧やな。ファン投票もぶっちぎりやで!」

周囲の喧騒を、彼女は柔らかな微笑みで受け流す。しかし、整備室に入り、愛機のハッチを閉じた瞬間、その微笑みは消える。

彼女の戦いは、常に「自分」との対話だった。

女子レーサーNo.1という看板は、少しのミスも許されない重圧となって彼女にのしかかる。ましてや、大峰幸太郎や篠田篤といった怪物たちと渡り合うには、誰よりも冷酷に、誰よりも精密にマブイを制御しなければならない。

ある日のTG予選。

鎌倉は、西野貴志率いる「ポンコツ会」の執拗な強襲にさらされていた。

「おらぁ! 女王様を玉座から引きずり下ろせ!」

西野の「爆炎」が、鎌倉の視界を真っ赤に染める。渡辺優子の「ダンプ」が、機体の装甲を激しく叩く。

普通のレーサーなら、その気迫に気圧される場面。

だが、鎌倉の瞳に宿るマブイは、さらに静寂を深めていった。

(……うるさいわね。その熱、全部凍らせてあげる)

鎌倉のマブイが臨界点を超えた。

機体から放たれた極低温の波動が、西野の炎を瞬時に沈黙させる。氷の刃のようなターンで、わずかな隙間に機体を滑り込ませた彼女は、一瞬で3艇を抜き去った。

ゴールを駆け抜けた彼女を待っていたのは、割れんばかりの歓声。

ヘルメットを脱ぎ、長く美しい髪をなびかせながら、彼女は再び「女王の微笑み」をカメラに向けた。

だが、その胸の内で、彼女は静かに独りごちる。

「……次は大峰さん。あなたの『日』の光でさえ、私の氷は溶かせないわよ」

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