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甲殻類アレルギーなのに新鮮なら死なない? 命がけの食事会と崩壊した婚約  作者: 品川太朗


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9/10

第9話:義家族崩壊の兆し──因果応報の連鎖

噂話の時間です。 「嫁殺し未遂の家」として有名になってしまった大野家。


地域社会での信用を失った彼らが、狭い家の中でどうなったか。 友人から素晴らしい報告(吉報)が届きました。


自業自得のオンパレード。 どうぞ、コーヒーでも飲みながら優雅にご覧ください。

 季節は巡り、コートが必要な時期になっていた。


 私は新しい職場で、充実した日々を送っている。

 あの一件以来、私は自分の命と時間を大切にするようになり、仕事もプライベートも以前よりずっと順調だ。


 ある週末、私はカフェで友人の加奈子かなこと会っていた。

 彼女は偶然にも、あの大野家の実家の近くに住んでいる。


「でね、美咲。聞いたわよ、あの家の噂」


 加奈子はコーヒーカップを置くと、声を潜めて話し始めた。


「あの辺りじゃもう有名よ。『嫁殺し未遂の家』って」


「……すごいネーミングね」


「だってみんな知ってるもの。救急車騒ぎにはならなかったけど、裸足で逃げ出したお嫁さんと、それを怒鳴りながら追いかける息子……その翌週には、あんたが乗り込んで絶縁状を叩きつけたんでしょ?」


 人の噂とは恐ろしいものだ。

 多少の尾ひれはついているだろうが、大筋は合っている。


 地域社会という狭いコミュニティにおいて、「アレルギーの嫁に無理やりカニを食べさせようとした」という狂気じみたエピソードは、格好のゴシップだったのだろう。


「それでね、ここからが本題。……あの一家、離散したらしいわよ」


「えっ」


 加奈子の口から語られた大野家の末路は、想像以上に無様なものだった。


          ◇


 きっかけは、世間体だった。


 近所のスーパーに行けばヒソヒソと指をさされ、ゴミ出しに出れば露骨に避けられる。

 「あら、大野さん。今日も新鮮な食材をお探し?」なんて嫌味を言われることもあったらしい。


 プライドの高い義父にとって、それは耐え難い屈辱だった。

 定年後の悠々自適な生活を送るはずが、地域での居場所を失ったのだ。


『お前たちのせいだ! お前たちがバカなことをしたせいで、俺まで恥をかいている!』


 家の中では、毎晩のように怒号が飛び交うようになったという。

 そして、ついに義父は「こんな家にはいられない」と離婚届を突きつけ、家を出て行ってしまった。


 残されたのは、義母と義姉・佐緒里の二人だけ。

 地獄はそこから加速した。


 溺愛していた長男・悠真は左遷され、安月給の地方暮らし。実家には寄り付きもしない。

 心の拠り所を失った義母の矛先は、すべての元凶である娘へと向いた。


『あんたが! あんたがあんなテストなんて提案しなければ、悠真は今頃エリートのままだったのに! 私の老後を返して!』


 対する義姉も黙ってはいない。


『お母さんだってノリノリだったじゃない! 「嫁のしつけになる」って笑ってたのは誰よ! 私のせいにするな!』


 お互いに責任をなすりつけ合い、罵り合う日々。


 さらに、義姉にも因果応報が訪れた。

 彼女は密かに婚活をしていたらしいのだが、交際直前までいっていた相手の男性から、突然断られたという。


『噂を聞きました。弟の婚約者を殺しかけた家の方とは、親戚になれません』


 それがトドメだった。


 義姉は部屋に引きこもり、義母は心労で寝込みがちになり、かつて立派だった庭は雑草が生え放題の荒れ果てた姿になっているそうだ。


          ◇


「……自業自得、という言葉しか出てこないわね」


 話を聞き終えた私は、静かに紅茶を口にした。

 不思議と同情心は湧かなかった。


 彼らが今味わっている苦しみは、彼ら自身が「新鮮なら大丈夫」「嫁なら従え」という身勝手な論理で積み上げたものだ。それが崩れ落ちて、自分たちの頭上に降り注いだだけに過ぎない。


「でしょ? ご近所さんも『バチが当たったのよ』って言ってるわ」


 加奈子は肩をすくめた。


「悠真くんの方も、こないだSNSで見たけど……悲惨よ。物流倉庫の仕事がキツいのか、愚痴ばっかり書いてる。友達も離れていって、『いいね』も全然ついてなかった」


 かつてはキラキラした商社マン生活を投稿していた彼のアカウント。

 今は誰からも見向きもされない、ただの暗い独り言の掃き溜めになっているのだろう。


「そう。……でも、もう私には関係のない人たちだわ」


 私は窓の外を見た。

 秋晴れの空が高い。


 あの日、呼吸ができなくなるほどの恐怖を感じた「食事会」は、もう遠い過去の記憶になりつつある。


 彼らは狭い家の中で、お互いの憎しみを反芻はんすうしながら生きていくのだろう。

 出口のない地獄で。


「さ、暗い話は終わり! 美咲、新しい職場の人はどうなの? いい人いないの?」


 加奈子がニヤニヤしながら話題を変える。

 私は苦笑しながら答えた。


「うーん……実はね、ちょっと気になってる人がいて」


「えっ! 嘘、詳しく聞かせてよ!」


 私の新しい人生は、もう始まっている。

 腐ったカニの臭いも、粘着質な家族の視線もない、清々しい場所で。

「新鮮な食材をお探し?」 ご近所さんの嫌味、キレッキレですね! プライドの高い義父には相当効いたことでしょう。逃げ出しましたけど。


残された義母と義姉。 かつて結託して美咲をいじめた二人が、今度は狭い家の中で共食いを始めました。 これぞまさしく地獄絵図。


さて、悪人たちの処分はこれにて完了です。 彼らは一生、その腐った沼の中で足の引っ張り合いをしていくことでしょう。


物語は次でラストです。 最後は、美咲自身の新しい幸せを見届けましょう。


最終話、最高の「乾杯」を。


全話投稿済みです。 ハッピーエンドの第10話へお進みください!

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