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5章2話 首都長は、王へ想いを打ち明けた

 議会が終了し、魔女の家に戻ったノアのもとに、ナイトハルトの従者、クリスがやってきた。


「ノア様……すみません、夜分に……」


「いえ、大丈夫ですよ。どうかされましたか?」

 ノアには何となく察しがついている。以前――ナイトハルトと初めて会った日も、クリスはナイトハルトへの誤解を解くために来たことがある。


「ナイトハルト様は、元々は軍事力を持たないこの領土について疑問を持っていました。例え国でなくとも、何か村を守る手立てがないか……マギナ村を任されるようになってからは、時間さえあれば考えていたようです」


「そうだったんですか……」


「しかし、ノア様から建国の話があり、そこで盟約された、話し合いによる平和……ナイトハルト様はそれに感銘を受けていました。さすがノアさんだ!私なんかよりもさらに先を見据えている!と。そして建国宣言。あの演説はさらにナイトハルト様を惹きつけました。ノア様はご存じないと思いますが、ノア様が離籍した後のパーティーでは、各村長に挨拶がてら、いかにノア様のお考えが素晴らしいか説いて回っていました」


 ノアは、無言でクリスの言葉を噛みしめながら聞く。


「ナイトハルト様は、少し裏切られた気分だったのだと思います。軍事力を持たないことがどれだけ大変か理解しています。しかしそれをやってのけるのだとナイトハルト様は信じていた……」


「……………………………」


 ノアは肩を落とし、深くうなだれる。そして、ナイトハルトと話し合いが必要だと感じた。


「……………ありがとうございます。クリスさん。あなたのような従者をもって、ナイトハルトさんは幸せ者だ。明日一番で、ナイトハルトさんを訪ねて、話をしましょう」


 ノアのその言葉に、クリスはパッと顔が明るくなる。

「あぁ……ありがとうございます……!私も、このような国王に出会えて幸せです……」


 クリスは目を潤ませてそう感謝を述べた。



 翌朝――

 ノアは首都マギナへ向かおうと準備をしている中、ナイトハルトの方から魔女の村へやってきた。


「ノアさん!昨日は申し訳なかった……つい感情的になってしまった……あれでは話し合いにならない……深く反省している」

 開口一番、ナイトハルトは深く頭を下げる。


「ナイトハルトさん……謝るのは僕の方です。もっとあなたに相談するべきだった……」

 ノアも、頭を下げる。


「それで、ナイトハルトさんには、詳細をきちんとお話しようかと。執務舎へ移動しませんか?」


 ノアたちは執務舎へ移動した。

 執務舎では、既にダリアとルークが既に仕事を始めていた。軽く挨拶をし、さらに奥の部屋――ノアの執務室へと入っていく。


「それで、ルタ・スクリット共和国との同盟の話……主に共同技術開発の話ですが……」

 ノアは、国王ルタ・スクリット4世との会話を事細かに説明した。彼らの国が持つ独特の社会制度、ノアと共通する平和思想、軍事力への課題と解釈の一致、人を含めた豊富な資源が可能にする技術再現性への期待などを。


「なるほど……技術開発の面は私も共感する。私も元魔道具技師だ。ときめきすら感じてしまう。しかしやはり引っかかるのは軍事力……要は人を殺す技術だ。技術者として、人を殺すことにその英知を費やすのは、反対したい」


「それは僕も同感です。僕も前世では技術者だった時期が長い。だから、軍事力は防衛力のみとして、決して人を殺さない技術を模索したい」


「…………できるのか?」

 ナイトハルトは頭を上げ、ノアをじっと見やる。


「僕は出来もしないことを言いません。少なくとも、僕は、僕の中では、出来ると確信しています」

 こればかりは信じてもらうほかなかった。ノアは出来ると確信している。が、それが何かまではまだ見えていない。しかし必ず――。


「ノアさんの考えはよく分かった。私も賛同しよう。しかし、くれぐれも忘れないで欲しい話がある」

 ナイトハルトは、淡々と語り始める。


「私たちは侵攻により故郷から逃げてきた。始めはフェルニス王国を憎んだ。それはもう、本当にどうしようもないほどだ。奪い返したい。後悔させてやりたい。そんなどす黒い感情に支配されそうな時もあったし、今も無いわけではない。しかしその感情から生む結果はきっと幸福ではない。私は、そのどす黒い感情を理性で抑え込もうとした。暴力は、やり返せば新たな憎悪が生まれるだけだ、とね。しかしいくら考えても、暴力に対抗できるのは暴力でしかなかった……。そんな中だ。ノアさんが建国を、話し合いによる平和を持ち出してくれたのは。救われた気分だったよ……本当に。だから、ノアさん!暴力の無い国を……戦争の無い世界を……作ってほしいんだ……殴られれば殴り返してしまう愚かな私たちを……ぜひ導いて欲しい」


 赤裸々な告白だった。ここまで自分の醜悪さを話してくれたナイトハルトに、ノアは応えたかった。


「ナイトハルトさん……ありがとう話してくれて……。でも、そんな自由で平和な国は、僕一人では作れません。ぜひ、力を貸してください……」


「ノアさん…………」


 ナイトハルトは感極まって涙する。ノアもつられて目じりを拭いながら、二人は固い握手をした――。



 ***



「それでですね、ナイトハルトさん。この同盟の結論を伝えに、視察も兼ねてルタ・スクリット共和国まで行こうと思うのですが、一緒に同行しませんか?首都長の仕事は、しばらくはクリスさんに任せて」

 ノアはナイトハルトにそう提案する。


「おお、それは素晴らしい提案だ!是非とも同行しようではないか!他には誰が同行するんだい?」


「外交大臣のダリアさんにお願いしようと思います。顔合わせも含めて」


「それはいい案だ!早速ダリアさんも含めて旅程を決めようではないか!」


 ノアは、ダリアを呼びつけ、経緯を説明する。


「まあ!それはありがたい話ですわ!元商人の腕の見せ所ですね!旅程ですが……そうですね、ルタ・スクリット共和国までは約4日。コニト村、シズ、カトレを経由して向かうのが安全なルートですわね。私は明日には出立できますが、お二人はどうですか?」

 さすがダリア。若いながら仕事が出来る。


 ノアもナイトハルトも明日の出立には問題ないということで、早速明日、ルタ・スクリット共和国へと出立することになった。



 ***



「なに!?ルタ・スクリット共和国へ明日出立するだと!?」

 魔女の家に戻り、いそいそと明日の準備をするノアに、珍しくルナリアが声を荒げる。


「はい。僕とナイトハルトさん、ダリアさんの三人で。どれくらい滞在するか分かりませんが、居ない間はルークさんとクリスさんで何とかなるかと」


「はぁぁぁ…………行きたい…………私も行きたい……ルタ・スクリット共和国は良い国だ…………魔法体系が西側と違うんだ……こちらでは手に入りにくい書物も多い……」

 珍しく引きこもりエルフは、外に出たがっていた。


「…………一緒に行きますk」

「行く!!!」


 ノアが言い切る前にルナリアは返事をする。


 ハイデンへ一緒に行った時と違い、ルナリアがエルフだと各所に伝わっている。偏見が無いかノアは心配だったが、逆に、その偏見はこういう機会が無いと払拭されないのも事実だ。なによりルナリアが自ら行きたいと言っているのだ。

 ノアは、ダリアに参加者が増えることを伝えに執務舎へ再び向かうのであった。


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