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4章8話 オークと人間と獣人は、意気投合した

 獣人の村から、何人もの獣人が、不可侵の谷に面した魔族の森の木を伐りにやってきていたが、そろそろ建築も落ち着いた頃合いなので、今日が伐採の最終日となった。


「いやー本当に助かりました!ゾフさん」


 代わり替わり来る獣人を指揮しに来てくれていたのは、ゾフだった。


「なに、こういう仕事は慣れているからな!昔は丸太を10本引きずって山を登ったことだってある!」


 ん?前に聞いた話では5本だったような――


「それで、今日が最後なんですが、ちょっと見てほしい所があって……ご足労頂いてもいいですか?」


「ああ、かまわないよ!」

 ゾフは快諾してくれた。


 ノアが見てほしい所、というのは、今後行路として使いたい、エルデ山脈の切れ目だ。


 ノアとゾフ、それと来てくれていた獣人2人を乗せて、馬車で移動する。


「ここです」


「おお、これは……なんかすごい所だな」


「この崖の谷間を道として使いたいんですが、落石が多くて……これをどうにかする方法って何か思いつきませんか?」


 ゾフと獣人二人は、仕草そっくりに考え込む。


「ふうむ……打撃でいけないこともない……が……」

「オーク族ならどうでしょうかね?」

「魔法でどうにか……ってそんな大きな魔法無理か……」


 三者三様の意見が出てくる。


「なるほど……オーク族ですか……例えば、ドレイクさんにくさびを作ってもらって、それをオークの皆さんに打ち込んでもらい破砕するというのは?」


「そうだな。それなら行けるんじゃないか?岩を小さくしちまえば、後はどうとでもなりそうだ。それで、この道の長さはどれくらいなんだ?」


「人間の脚で1日かからないくらいかと」


「そうか。それじゃひとまず、ミネスの村のオークたちに話を通しておくぞ。了解が得られたら、連絡を入れる」


「ありがとうございます!ドレイクさんには、石のサンプルを持って行って交渉してみます!」


 これで行路は何とかなりそうだ。正直手に余していた案件なだけに、喜びもひとしおだった。



 ノアは、その足でノルンの村へ向かい、ドレイクに交渉しに向かった。



 ***



 ビズマの村で一泊し、ノルンの村に到着する。


「ドレイクさん、折り入って相談がありまして」


 ドレイクはちょうど休憩しているところだった。


「ノアか。どうした?」


 ノアは石のサンプルを見せた。


「これと同じ大きな岩をオークの方々で破砕しようと考えているのですが、なにかいいものないですかね?」


 ドレイクは石をハンマーで軽くたたいたりよく観察する。


「ほう。これなら効率よく切り崩すくさびを作ったことがある。オークの馬鹿力なら、問題ないだろう」


「ホントですか!あー良かった!」


「難しくねぇから、すぐ用意できるが、どれくらい欲しい?」


「そうですね……とりあえず20で様子みたいです」


「わかった。数日で用意する。出来たら、ビズマの村へ納入で良いか?」


「はい、お願いします!」


 これで後はオーク族の返答次第と言う事になった。



 ***



 数日後、ゾフの伝言が魔女の森へ交易に来たビズから伝えられる。


「ノアさん、オーク族の件、問題ないそうです。10人ほどは出せると言っているそうですよ」


「了解しました!ゾフさんには、くれぐれもお礼を!で、時期なのですが……1か月後を予定しているとお伝えください。具体的な日取りは後日」


「わかりました。ではそのように伝えます」


 オーク族10人……これを受け入れる場所を作らないとならない。立地としてはこの行路のすぐそばが好ましい。そして、行路が完成した後でも使えるよう、宿として建設してしまおう、とノアは考えた。1か月あれば、人手をかければ何とか建設は出来るだろう。


 ノアは少し急いでいた。建国宣言の時期はまだ決めていないが、東側諸国の要人を西側に呼ぶには、この行路が必須になるに違いない。数日かけて、さらに危険を冒して魔族の森へ迂回する必要が無くなるからだ。


「あとすみませんビズさん。可能な限りで良いのですが、オークも使えるような人間の宿を急遽つくりたいのですが、人手って出せそうですか?」


「それも確認してみますね!でもあまり期待しないでください……俺らはご存じの通り、そこまで建築が得意ではない……」


「人間も協力してもらうつもりなので、そこは何とかなります!出来る範囲で良いんで!」


「そう、ですね……わかりました」


 後は人間側の協力者だ。ノアはマギナ村へ向かった。


「ナイトハルトさん、ちょっとお願いしたいことが」


「これはノアさん!どうかしたのか?」


 ノアは行路開通計画を全て話した。


「なるほど。それで宿を急遽作りたい、と」


「そうなんです。それで、多分獣人と協力して作業になりそうなので、指揮能力に長けてて、偏見のない大工をできるだけ多く探しているんですが……」


「ノアさん!そんな都合のいい人材なんてそうそういるものではないよ!しかし!いやーノアさんは実に運がいい!実はコルダ村に腕利きの大工集団がハイデンから逃げてきていてね!」

 最近あまり見ていなかった、ナイトハルトの大げさな語り口調が披露される。


「そうなんですか?」


「ああ!マイルス組、といったかな。彼らに早速話を通しておこう!」


「ありがとうございます!日取りはそちらで決めて問題ありませんが、なるべく早く進めたいです!」


「了解した!」



 翌日、ナイトハルトからマイルス組の了承を得たと報告があった。

 これで準備は全て揃った。ビズにも報告し、7日後の着工となったのだった。



 ***



 そして当日――。ノアは、まさかこんなことになっているとは思わなかった。


 現地集合をしたのだが、マイルス組の4人、獣人からはゾフ含め3名、そして――オークが2名。以前ノルンの村で農作を教示してくれていたミネスの村長ネスと妻のロスだった。


「久しぶりだね、ノアさん」


「お、お久しぶりですネスさん!でもどうしてここへ……?」


「どうしてって、仕事を依頼したのはそちらだろう?我々はその準備に来たまでさ」


「準備……とは?」


「もちろん、我々が寝泊まりするところさ」


「すまない、ノアさん。説明が遅れたな。ネスさん方は、宿の建設に協力したいと言ってきてだな。人手が足りないと聞いていたし、せっかくだから連れてきたのだが……」

 ゾフが間に入って経緯を説明する。


「あ、いえ、わざわざ来てもらって助かります!ですが……」


 ノアにとっては、はじめましてになる相手――マイルス組の方々がなんて言うか。


「獣人にオークか!これは仕事が楽しくなるな!俺はマイルス組を仕切ってるマイルスってもんだ!たまにドワーフに間違われるが、一応人間だ!以後よろしく!」

 マイルスはオークにも決して臆せず、冗談交じりに自己紹介をする。


「あっはっは!しかしドワーフにはこんなにユーモアのある御仁はおらんだろうさ!私はネスとこちらは妻のロスだ」

 マイルスを皮切りに、それぞれが自己紹介をした。そしてそのまま、なんだか和気あいあいと宿の建設がスタートする。


 なんかこうも異種族がスルっと作業にあたれることを、ノアは感動してしまった。これこそ、エルノア国の目指す理想の姿なのだと。


 しばらく作業を眺めていると、マイルスは初対面のはずの獣人、オークの特性をよく見て仕事を割り振っている。人間は技術の必要な組み立てを、獣人はそのサポート、オークは木材を運搬を担っている。この調子なら、3日もあれば建ってしまうのでは――そうとさえ感じるほど、効率よく仕事が進んでいく。


 ノアはこの場をマイルスに任せ、魔女の森へ戻ることにした。



 ***



 そして3日後――


 本当に宿が建ってしまった。

 中はオーク仕様でとにかく大きく作られている。人間が泊まるとしても、この解放感はたまらない。


 ノアが感動していると、得意げにマイルスがやってくる。


「まさか3日で建っちまうとは、俺もビックリだぜ。だが作りは手抜きしてねぇ。オークが暴れたって、壊れやしないだろうさ。とりあえず寝れりゃいいってんで、家具とかは後回しにした。どうせ後で人間仕様に改造せにゃならんから助かった」


「いやほんとビックリですよ……でもこれで次の作業に入れます!マイルスさん、そして皆さん!お疲れ様でした!」


 お疲れさん!と皆が口々に言う。建った宿を見て、皆が満足げに笑っていた。


 この日は皆で宿に泊まり、宴をするというので、ノアも参加した。


「なに!?ノアさん!?国を作るのかい!?」

 ゾフとネスの話の流れで、ノアにそうネスが問う。


「ええ、人間の村2つと獣人の村3つを併合して、エルノアという国を」


「なぜそれを我々に言わないんだ!ぜひ我らミネスの村も編入させては貰えないか!?」


「えぇと……お話は大変ありがたいです。ですがお酒の席ですし、改めて書状をお送りしますね!」


「ネスさんはとにかく人間に興味があるみたいなんだ」

 ゾフがそうノアに補足する。


「ああ、人間はすばらしい。我々にはない知恵や技術がある!この体の大きさで怖がられるが、ミネスの村の住人はとにかく他種族に友好的なんだ。彼らは我らに無いものをもたらしてくれるからな!」


「僕も同じ考えです!みんな個性があるからこそ、助け合った時の力が大きい!」


「そう!そうなんだよ!なんだノアさん!話が分かるじゃないか!ささ、飲んで飲んで!」


 ノアは意外にもネスと意気投合した。話してみなければわからないものである。


「ほう!ノアさんにネスさん、あんたら見どころがあるな!俺もそう思うぞ!人は助け合ってなんぼだ!人一人ではなんもできやしねぇ!」

 マイルスも便乗する。


「ようし!こうなれば飲むぞお前ら!俺らは兄弟だ!!」


 マイルスがここ一番盛り上がる。湯水のように用意した酒は消えていき、夜は更けていった――


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