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2章9話 男は、鍛冶師と鍛冶師を繋ぎたかった

「で、さっきの話の続きなんですが…………」


「ああ、ドレイクが獣人村にいるって話だったな」


 ルナリアが恥ずかしさから少し落ち着いたので、話を元に戻す。


「ええ。で、最近コルダ村で知り合ったベゼルという青年がいるんですが、彼は鍛冶師になりたいらしくて、それでドレイクさんと会わせられないかな、と」


「先にも言ったが、人間が魔族の森に入るのは難しいし、ドレイクを人間領に連れて行くのも難しいな。そもそも別に人間領のどこかの街の鍛冶屋に弟子入りすれば済む話なんじゃないか?」


「そうなんですけど……なかなか独りで知らない街に行くのが怖いらしくて」


「まぁわからんでもないな……で、なぜその青年は鍛冶師になりたいんだ?」


「元々鍛冶屋の家系らしくて、自分も父親の背中を見てそうなりたいと。でもその父親、彼に何かを教える前に亡くなったようです」


「ん?鍛冶屋の家系?コルダ村の鍛冶屋か?…………もしかしたらその青年、魔素に耐性があるかもしれないな。今度連れて来てみたらどうだ?」


 ルナリアには何か思い当たることがあるらしい。


「わかりました!ルークさんに連れてきてもらうよう頼んでみます!ありがとうございます!」


 相談してみるものだな、とノアは感心した。



 ***



 数日が経った。


 魔女の家ではノアの部屋増築の準備が進んでいる。

 ポーションの製造も順調で、原料である薬草も十分。このペースなら1か月ほどでルーデン公国行きの200は用意できそうだ。


「毎度さん!ノアさん!いるかい?」

 ルークがやってきた。今回も頼ることがたくさんなので、どんな顔をしてくれるか楽しみだった。


 まずはルークに、先日ビズマの村から持ってきた交易試供品を見せる。


「あーなるほどなるほど。なかなか面白いものばかりだね。一つ一つ説明するけど、いいかい?」


「ありがとうございます。僕から見たら何が何だかさっぱりなので」


「そうだろうね……まず、この茶葉たちだけど、これとこれはあまりお金にならないと思って欲しい。一般的な茶葉だから、飲む分には問題ないけど、かなりの数流通しているからね。だけど、この細い葉の茶葉。これはなかなか高級なものだよ。乾燥させてから使うんだけど、その方法が少し特殊でね。生葉でも売れるけど、日持ちも考えると、現地で乾燥まで出来ると、いい特産物になるよ」


「なるほど……その乾燥方法って、獣人に教える手段ってありますか?」


「うちのフローレンスが茶葉に詳しいから、方法を書いたもので良ければ」


「ありがとうございます!」


「それと鉱石だね。これは鉄鉱石。コルダ村でも取れるね。鉄鉱石だけの交易となると、かなり難しいかな。重量があるくせに無駄な部分が多いから、値が付きにくい。おお……これはルビーだね。アクセサリーとしても人気はあるけど、武具の装飾としても重宝されているね。貴重な宝石だから、そこそこの値は期待して良いよ。あとはこの魔石……これは獣人が狩った獲物のものかい?」


「そうです。このサイズはなかなか手に入らないそうですが」


「これはかなりの高値がつくけど……量はさばけないね。たまに出てくる程度なら、ギルドを通してなんとかしてみるよ。魔石に関しては、基本的には専門の流通ルートがあるからね」


「わかりました。ありがとうございます!」


 このあと、ルークからざっくり、どれがどのくらいの量なら、どのくらいの食料などと交換できるか、教えてもらった。これで交易の中継は出来そうだ。


「あともう一つ頼みごとが……」


「え、なんだい?嫌な予感がするけど」


「今回は大丈夫です!あの、可能なタイミングでいいんで、コルダ村からベゼルという青年をここに連れてきてもらえませんか?」


「ベゼル君かい?かまわないけど、どうしたんだい?」


「いい鍛冶師のあてが出来たんで、顔合わせさせようかなと」


「おおそれはいい!わかった!すぐにでも話をしておくよ」


 ああそれと――とルークはノアに荷馬車の中身を見せる。


「これが頼まれていた、最近流行の皮製品だ。鞄と小物中心だけど、防寒具なんかも面白いかと思って持って来てみたよ。それと……これが型紙だ。革の設計図だね」


「え、こんなものまで!?ありがとうございます!!」


「バラして研究するより、設計図があった方が早いからね」


「さすがルークさん…………気が回る!」


「お代は、さっき見せてもらったもので賄ってもいいかな?」


「足りますか?」


「ああ問題ない。それと、頼まれていた干し肉と野菜、麦。かなり量があるけど大丈夫かい?」


「ええ、僕らも獣人から薬草を仕入れているので、そのお代です」


 そういうことか――と、ルークは納得した顔で頷いていた。


「次回以降もこの量で持ってくるよ。あとはやりながら、調節していこう」


「わかりました。本当にありがとうございます……」


 それじゃあね――と、今回はポーションを受け取らず、ルークは去っていった。



 ***



 翌日――


 ビズマの村から、ビズ一行が薬草の納品にやってきた。


「ノアさん!薬草持ってきました!」


「ああ、ビズさん!ありがとうございます!こちらも交換品が届きましたので、持って行ってください。それと、以前話していた革細工の件、製品がいくつかと、なんと設計図まで手に入りました!」


「おお、野菜や肉がこんなに……ありがとうございます!それに設計図まで……これは捗りそうですね!」


「あと、こないだ試しにいただいた交易品ですが、この細い茶葉と、このルビー……赤い鉱石を主軸に行きたいと思います。どちらも高値がつきそうです」


「そうですか!それは何よりだ!」


「ですが、この細い茶葉のほうですが、特殊な乾燥を施すともっといいそうなので、後日また、その方法が判ったら連絡しますね」


「いやもうほんと……ノアさんには頭が上がりません……」


 ビズは深々と頭を下げた。


「ああ、そうそう、今そこで僕の部屋を増設してもらうのに、大工さんが来ているのですが、もし、建築でまだ悩んでいるようなら、訊いてみてはどうですか?」


「え、人間……ですよね……?」


「そうですけど、すごく優しい良い人でしたよ。きっと快く教えてくれると思います」


「では、ちょっと声をかけてみます……ノアさん、本当にありがとうございました!」


「いえいえ、帰りの道中、お気をつけて!」


 ノアとビズはここで別れた。


 ノアは家の中に戻った。かすかに聞こえるその大工とビズの会話は穏やかで、しっかりコミュニケーション取れている様子。ノアは一安心し、ビズマの村から持ってきた茶葉で二人にお茶を入れることにした。


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