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第7話 前編 「ふたりの距離、ふたりの決意」

マキ、動きます。


【マキ視点】


ユリカってね、ほんとに表情が動かないのよ。いつもクールっていうか、こっちが何言っても顔色ひとつ変えないの。ま、そういうとこもカッコいいっちゃカッコいいんだけど。


で、今そのユリカと、ジムの裏の自販機前で缶コーヒー片手に並んでる。こういうときって、案外ポロっと本音が聞ける気がするから、ちょっと賭けに出てみた。


「ねえ、ユリカ」


「なに?」


「ずっと思ってたんだけどさ、ユリカって強いよね。技術もそうだけど、心がぶれないっていうか。……正直、ちょっと羨ましかったなぁ」


ユリカは無言のまま、コーヒーをひと口。うん、予想どおりの反応。


「でもね、この前のマツリの試合、見てて思ったの。あの子、あんなにボロボロになっても立ち上がって、最後まで殴りにいったでしょ? あれ見て……なんか、自分がすごく軽く見えちゃった」


自分でもびっくりするぐらい素直な言葉が出てきた。……こういうの、いつぶりだろ。


「フミヤくんに謝ったの。ちゃんと、面と向かって。めちゃくちゃ緊張したけど……でも、言えてよかったって思ってる。変わるって、ちょっとだけ怖いけど、悪くないもんだよ」


ユリカは何も言わずに空を見上げて、缶を軽く振った。


「ユリカもさ、できれば変わってほしいなーって。いや、命令とかじゃなくて、あくまで希望? お願い? マツリと本気でやり合うなら、ただの“勝負”にはしてほしくないなって……そう思っただけ」


うわー、あたしにしては真面目すぎたかも。喋りすぎたかな? ちょっと恥ずかしくなって缶をゴミ箱に投げたそのとき。


ユリカがぽつりと、息を吐いた。


「……答えは、リングの上で出すよ」


それだけ。だけど、たぶん、それで十分。


***


翌日。


マツリの試合はもう目前。ラストのスパー相手が必要だって話になって、ちゃっかり手を挙げたのは、もちろんこのあたし。


「んじゃ、相手しまーす」


「マキさん? 本気で?」


「うんうん、ほら、最後の仕上げにはちょうどいいでしょ?」


マツリの眉がピクリと動いた。


「……わかった。手加減、しないでよ」


「はいはーい。こっちも全力でいかせてもらいまーす」


どこまでも緊張感のない口調で、拳を構える。だけど、心の中ではちゃんと覚悟してた。


これはマツリの“最後の仕上げ”。あたしにできることは、全部ぶつけるだけ。

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