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灯りの森のうさぎ

お久しぶりです。

約1年ぶりの投稿になります。

今回のお話は大切な友人との別れと寂しさと伝えたかった言葉を手紙として書き綴る物語になります。

ある静かな森に、一匹のうさぎさんが住んでいました。

うさぎさんに名前はありません。けれど、この森では誰もが優しいうさぎさんのコトを知っていました。



 うさぎさんには、とても大切な友達がいました。

毎日いっしょに笑って、泣いて、遊んで、季節がめぐっても、ふたりはずっといっしょ。

かけがえのない大切な友達です。



 けれどもある日、友達は遠くへ行くことになりました。

とてもとても遠い場所へ。もう声も届かないくらい遠い場所。

うさぎさんは悲しくてたまりませんでひた。



 別れの日、友達に「さようなら」とはどうしても言えませんでした。

うさぎさんは何も言わずにただ、小さくうなずいて、友達の背中を見送るのでした。



 それからの日々、うさぎさんは毎晩、森の片すみに小さな灯りを灯しました。

それは、友達といつも遊んでいた場所。ふたりの思い出が、そっと息づいている大切な場所。



 うさぎさんは毎晩、友達に伝えたいコトを手紙として書きました。


「今日も森は静かだったよ」

「あなたが好きだった花が、今年も咲いたよ」

「今でもずっと、あなたの幸せを願ってるよ」



 その手紙はどこにも出せません。

けれど、うさぎさんは書き続けるのでした。

手紙を書くことで、友達のことを想う時間が、少しだけ寂しさをあたためてくれるからです。



 それから、季節は何度も何度も巡り、森に雪が降り、また春が来て——。



 年月は流れたある日のコト、見たことのない青い花が咲いているのを見つけました。

そっと触れてみると、花の中から、ふわりと一枚の紙が舞いおりてきたのです。



 それは、一通の手紙。届くはずのない大切な友達からのうさぎさんへの手紙でした。



「ありがとう。

 あなたの手紙、ちゃんと届いたよ。

 少し寂しかったけど、あなたと過ごした灯りの森での日々が、私の心のよりどころでした。

 離れていても、私もずっと―――

 あなたの幸せを願っていたんだよ」



 うさぎさんは、手紙を胸にそっと抱きしめました。

 

涙が一粒こぼれて、灯りの火をやさしく揺らしました。


その夜の灯りは、今まででいちばん、

あたたかく、そしてやさしく森を照らすのでた。



 もう寂しそうにしているうさぎさんはいません。

それからもうさぎさんは森に灯りを灯し続けるのでした。

胸に大切な友達の手紙をぎゅっと抱えて。


おしまい

最後までお読み頂きありがとうございます!

拙い物語ではありますが、評価と感想を頂けると励みになりますので是非よろしくお願い致します。

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