【第7話】勇者面接でラスボス扱いされる
「転生者枠の勇者募集があるらしい」
そんな噂を聞きつけた俺──志無野 睦夫、49歳、職歴:全組織クビ──は、王都に向かった。
冒険も婚活も推し活も全部失敗した今、ここしか希望は残っていない。
最後の賭けだ。
勇者面接会場は煌びやかな白亜の宮殿。
受付には、国家直属の魔導士と騎士団がずらりと並び、転生者らしい奴らがスキルを見せ合って盛り上がっていた。
「やべ、俺だけ浮いてる……」
だがここは勝負。希望のために、一歩を踏み出すしかない。
「はい、次の方──志無野 睦夫さん、どうぞ」
面接官の前に立つと、まずはスキル確認から始まった。
【初期スキル】
・言い訳(Lv99)
・責任回避(常時発動)
・共感遮断(呪い・解除不可)
「……は?」
面接官のひとりが眉をひそめ、隣の魔導士がヒソヒソと相談し始める。
「……これ、勇者というより“災害”では?」
「いや待て、“敵の心理をかく乱する存在”って考えれば──」
「いや、それよりまず仲間と会話できるのか? 共感遮断だぞ」
「……そっちが問題だな」
空気が不穏になる中、形式通りの質問が始まった。
「仲間が瀕死になった場合、どうしますか?」
「無理そうなら……見捨てますかね。二次災害、怖いんで」
「民が泣いているのを見たら?」
「……リアクションに困るんで、距離を取ります」
「王女にプロポーズされたら?」
「責任重いの嫌なので、やんわり回避します」
数秒の沈黙。
魔導士の1人が小声で漏らした。
「……これ、魔王より怖くね?」
面接の最終評価が下された。
【判定:勇者枠 不適合】
【備考:思想危険度C+】
【分類:ラスボス系ムーブを無自覚で発動する対人災害】
翌日には、王国魔導ログに新たなタグが追加された。
『志無野 睦夫(人型感情遮断体)』
『共感交流:不可能』『士気低下範囲:半径20m』
俺は面接を受けただけで、“戦うべき対象”として国家ログに記録されたのだった。
第7話、終了──俺、勇者希望でエントリーしたら、討伐対象としてカテゴリ登録された。