【第5話】異世界恋愛オーディション番組で公開処刑
異世界転生から数週間──俺にチャンスが舞い込んだ。
「転生者であるあなたを、恋愛リアリティ番組にキャスティングしたいんです!」
番組名は『異世界LoveTrial』。
男女5人ずつが共同生活を送り、好感度の高い組み合わせがエンディングで結ばれるという、よくある異世界版“テラス的な何か”。
俺は震えた。
人生で一度もモテたことのない俺が、ついに“ヒロイン枠”と接点を持てるチャンス……!
「地球から来た転生者ってだけで話題性バツグンですから」
プロデューサーはそう言った。
共感力0.0という事実は、なぜか“まあ編集でなんとかします”でスルーされた。
そして初回放送日。
スタジオは煌びやかで、ヒロインたちは異世界とは思えない洗練された美少女ぞろい。
天真爛漫なエルフの少女、無口な司書型美人、ツンデレ魔法使い──
俺はテンションMAXで初対面に臨んだ。
順番に自己紹介が進み、ついに俺の番。
「どうも、志無野です。趣味は……まあ、アイドルです。現実の女の子にはあまり興味なかったけど……えっと、見た目は経理が得意そうな眼鏡女子が好きです」
沈黙。
空気が凍った。
「あと、記憶にないことは責任取れないってスタンスです。あと他人の感情、汲み取りミスることがよくあるんですけど、それって俺の責任ですかね?」
その瞬間、効果音の“ピロリロリ〜ン♪”が流れた──マイナス好感度発生。
画面上には派手なテロップが表示された。
【共感力:−2.1】
【史上初・放送中に感情数値マイナスを叩き出す転生者】
演出BGMが止まり、共演者たちが静かに笑顔を失った。
視聴者投票で“追放希望”の数値が跳ね上がり、俺は放送初日にして退場が決定。
楽屋裏で、プロデューサーが俺にそっと声をかけてきた。
「……君、もしかして“映っちゃいけないタイプ”だったかもしれない」
帰りの馬車の中、俺は鏡に映る自分を見つめた。
誰よりも自己紹介に命をかけていたのに、誰の心にも一ミリも触れなかった。
第5話、終了──俺のテレビ初出演、好感度ではなく“精神汚染指数”で記録される。