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【第3話】魔王軍ですらクビ、存在がデバフ

婚活ギルド、出禁。

冒険者ギルド、永久NG。

もうこの世界に俺の“受け入れ口”は残されていないのかと思った。だが、ひとつだけあった。


──魔王軍である。


異世界モノではよくある話だ。勇者の素質がない者が、敵側に引き入れられて開花するって展開。

要するに、俺の“人間的バグ”を逆に活かせる組織──あるとすれば、ここしかねぇ。


「すみません、志願入隊希望なんですが……」

魔王軍の拠点となる黒鋼の要塞、その門番は俺を見ると軽くうなずいた。


「転生者か。歓迎するぞ。人間の社会で馴染めなかったんだろ? うちはそういう奴、多いからな」


おお……なんて寛容。こっちが正解だったのかもしれない。


入隊初日。配属されたのは“感情情報管理部隊”──要は諜報部だ。

人の心を読み取り、揺さぶり、心理的に戦う精鋭部隊。

俺のスキル「共感遮断」が、もしかしてここで生きるかもと期待していた。


だが現実はこうだった。


上官「自己紹介どうぞ」


俺「志無野 睦夫です。スキルは、言い訳、責任回避、共感遮断──です」


全員が沈黙。

微妙な空気の中、上官がメモを取りながら言った。


「えーと……“共感ができない”“責任を取らない”“言い訳が得意”……どこの敵勢力ですか?」


それから3日、俺は何もできなかった。


報告書を書くも、「言い訳ばかりで読めない」と突き返される。

訓練では仲間と意思疎通が取れず、勝手に離脱して“裏切り”ログが付く。

挙げ句の果てに、魔王直属の参謀にこう言われた。


「お前、人間界でも味方いなかっただろ。こっちでも無理だ」


最終日、部隊内の“精神スキャン担当”が俺の心を覗いた。

スキャン後、彼は静かに言った。


「……これは……デバフだな。存在が毒になってる」


その日のうちに、俺のステータス画面が自動更新された。


【新規デバフ付与】

・志無野(状態異常):存在するだけで味方の士気を下げる

・範囲:視界に入る全味方

・解除方法:不明


そのログは魔王軍のマニュアルに追加され、俺の名前は“ステータス異常リスト”に載った。

そう、“志無野”がデバフ名になったのだ。


俺は処理部から渡された退職通知を握りしめ、静かに門を出た。


「……これ、転生の意味あったか?」


もはや異世界の“味方サイド”すら、俺を扱いきれない。


第3話終了──志無野、不採用のちに記述型デバフへと昇華される。

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