【第2話】婚活ギルド出禁、冒険者パーティ即クビ
異世界に転生したからには、やっぱり何か始めなきゃな。
ステータスはクソだったけど、人生をやり直せる可能性はゼロじゃない──はず。
俺はまず、“婚活ギルド”に向かった。
なんでもこの世界では、婚姻も仕事もギルド管理が主流。合理性こそ正義らしい。
恋人すらできたことのない俺だが、転生者特典で少しはワンチャンあると思った。
「こんにちは、志無野です。パートナー募集中で……これがスペックです」
カウンターで水晶端末に自分のステータスを表示すると、受付嬢の顔が凍った。
【共感力:0.0】
【状態:共感遮断(呪い)/解除不可】
彼女は機械のように微笑みを作りながら言った。
「当ギルドでは、共感力3.5以上の方のみ対象となります」
俺は思わず聞き返した。
「え、それって差別では?」
「いえ、“情緒災害リスク”への配慮です。あなたは他者の心を読めないだけでなく、自覚も持てない。いわば、“感情のバグ”です」
完全に門前払い。
ギルドの掲示板には俺のデータが“照合拒否済み”として貼られていた。
“共感力未満者”──まるでデータのゴミ。
俺は静かにその場を後にし、次なる希望に向かう。
冒険者ギルド。ここならきっと戦闘能力とか体力勝負。共感なんて関係ねぇ。
「パーティ募集、まだやってる?盾役探してるって聞いたけど」
カウンターで声をかけると、受付の男性が訊ねた。
「スキルは?」
「言い訳、責任回避……それと、共感遮断(呪い)です」
「……うん、帰れ」
それが俺の“転職活動”の終わりだった。
後で知った話だが、冒険者に必要なのは連携力と信頼。
スキル欄に“責任回避”がある時点で、「パーティーを全滅させてもしらばっくれる地雷認定」らしい。
ギルドの魔導端末には、俺の記録が更新されていた。
【登録者名:志無野 不二雄】
【職歴:即日解雇】
【備考:協調性ゼロ/共感死角持ち/ログイン不可】
もう一度言う。
俺は、異世界で婚活と冒険──両方のルートから追い出されたのだ。
夕方、広場のベンチに座りながら、俺は天を見上げてつぶやいた。
「……マジで、なんで転生したんだろうな」
通りすがりの子どもが母親に尋ねた。
「ねぇ、あの人何してるの?」
母親は目を伏せて言った。
「“感情なき者”よ……関わっちゃダメ」
第2話、終了──俺、異世界でもセーブデータを作る許可が下りない。