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はしるべからず

作者: 逆福

私の通う学校と自宅の間には大きな神社がある。入り口にある鳥居を越えればすぐに本殿があり、その裏手には大きな池がある。池を囲うように道があり、本殿から出て、池を見ながら一周してまた本殿に戻ってこれる。神さまについては詳しくないけど雰囲気が好きだから暇な時にたまに散歩をしている。ある日時間が空いていたので神社に散歩に来ていた。池を一周している途中で何か揉めているようだったので、そちらに意識を向けると神主さんらしき人といかにもランニングしていますという風体の人がいた。ぐるりとそれなりの距離を一回りできることもあってかたまにランニングをしている人を見かけるが、この神社ではランニングやスポーツを禁止していたと思うのでその事について注意しているようだった。あまり関わりたくはないと足早に通りすぎようとしたら、注意されていたランナーが神主さんを振り切って走って逃げていった。振り切られた神主さんはしばらく呆然としていたが「…様の祟りかありますよ」と微かに呟きその場を去っていった。一部始終を見ていてあまり良い気分ではなくなった為すぐに帰る事にした。


家に帰ってきて財布がないことに気づいた、神社で神主とランナーのやりとりをみていた時に落としたのかもと考えた。もう日が落ちて辺りは暗くなってきていたが、さすがに財布は探さないわけにはいかないと神社に向かうことにした。母に神社に財布を落としたので確認しに行くと告げると、話を聞いていた父がもう暗いから自分もついていくと言って、一緒に神社に向かうことになった。

神社につき鳥居を通って本殿に向かう。普段は日中に来ているために特に何も思うことはなかったが、境内にはほとんど灯りがなく、また周りも林に囲まれているせいか外から光が届かず、かなり暗くなっていた。本殿から池の周りの周回路に入ると明かりはなくなり暗闇が広がっていたが、一緒に来ていた父が懐中電灯を持ってきていたので、足元を照らしながら進み始めた。財布を落としたと考えられる場所は、本殿とは真逆の場所にあり、それなりの距離があるため暗い中目的地に辿り着くまで普段より大分長い時間がかかった。目的地について財布を探し始めると割とあっさりと財布を見つける事ができた。中身を確認して問題がないとわかると安心したせいかどっと疲労感に襲われたので、少し休んでから帰ろうと言って、父と少し休憩をしているとどこからか砂利をひきずるような足音が聞こえてきた。こんな時間に来る人がいるのかと思っていたが音のなる方に一切明かりがないことに気づく。父が持っていた懐中電灯を音のなるほうに向けると、そこには明らかに普通ではない、人の形をした何かがこちらに向かってせまってきていた。驚いて逃げ出そうとすると父に手を掴まれ、動いてはダメだと私を止めて懐中電灯を消した。暗闇の中、恐怖心で震えながらその場に留まっていると、ざざざと音を立てながら、どんどん何か近づいてくる。迫ってくる何かから目線を外すために下を向きながら真横を通りすぎるのを待っていると、微かに走るな走るなと呟いているのが聞こえた。足音が聞こえなくなると父は私の手を引きながら来た道を無言で戻り始めた、何事もなく本殿まで戻ってくると体中冷や汗をかいていた。


鳥居を出て家に向かう途中に父があの神社について教えてくれた。あの神社には二柱の神様が祀られていてそれは昔この辺りを治めていた武士とその娘であり、あの神社が立っている場所はもともとその武士が住んでいた屋敷がたっていたらしい。娘は足が不自由であったが武士は娘をたいそう可愛がっており、本殿の裏の池は娘が楽しめるようにと武士が作ったものであった。動けない娘が悲しまないように、娘の目に見える範囲で走る事を禁じていた。しかしある日娘は池に落ちて死んでしまい、武士もそれを悔いてあとをおって死んでしまった。それから数日たって武士の幽霊が出て人々を襲うと噂になり被害が立て続けに出たため、霊を鎮めるために神社を建てることになったとのこと。父になんでそんなに神社について詳しいのか尋ねてみると、神社の今の神主とは同級生で昔教えてもらったとの事だった。学生の時あの神社で肝試しをすることになり、その時もさっきのように幽霊に遭遇したが、同級生であった神主に同じように助けてもらったという事だった。神主曰く見た目が怖いだけで走って逃げたとしても、少し足を怪我する程度の害があるだけということで、当時肝試しに参加した他の順番の友人達も数人、幽霊に遭遇したが大きな怪我をする人はいなかったという事である。父の話が終わるというぐらいに家に到着し、玄関から入ろうという時、ただ度が過ぎる相手には大きな災いがあると父は呟いた。


それからもたびたび神社に行く事はあったがあのランナーをみることはなかった。


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