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イジメにあったので騎士団に訴えました。

作者: 瀬崎遊

 背後から何かボヨンとしたものがぶつかり、それが弾けて私の背を濡らした。

 それは次々に投げられ、私の横を通り過ぎていくものから、命中するものまで何十個、私に向けられて投げられただろう。


 私は飛んでくるものがなくなるまで動かずにじっとしていた。

 ぶつかるものがなくなり振り返ると、十二〜三人の女の子がいた。

 私は全員の名前を呼び上げて、自分の周りを見回した。

 なにかの中に水が入れられて、それが当たると破れて水がかかるようになっているのだと理解した。


「何の御用でしょうか?」

 意地の悪い笑顔を顔に張り付かせた人達が「私達は何もしていないわ」と堂々と嘘を言った。

「では御用はないのですね?」

「あなたになんか用があるわけ無いでしょう」

「そうですか、では失礼いたします」


 私はビショリと濡れたその姿のまま職員室へ行って、一つ拾っておいた投げられたものを教師に手渡して「背後からこういった物を投げつけられました」と報告した。


 先生はそれを見て顔を青くしていたが、私が紙とペンを用意してほしいと頼み、私の背後に居た十三人の名前と、それを見ていたであろう人達の名前を挙げ連ねた。


「話は後でいいから着替えてきなさい。風邪を引いてしまうわ」

「そんな簡単に済ませないでください」

「これが万が一薬品だった場合のことを考えてください」

「薬品・・・?」

「私は大怪我をしていたでしょう。今回は水でしたが、調子に乗ると中身が薬品に変わるでしょう」

「まさか!そんな事したりしないわよ」


「十五〜七歳の、することですか?これが」

 私は怒り心頭で伝えると先生は返答につまり、校長先生を呼びに行った。


 私は校長先生にも同じ話をし「騎士団を招集してください。私は傷害罪で訴えます」

「水をかけられた程度でそんな大事にしなくてもいいんじゃないかい?」


「一度目をつぶれば、二度三度と問題は大きくなっていきます。一度目で徹底的に潰します。騎士団をお願いします」


 校長は渋々ながら騎士団を呼び、傷害罪で訴えると伝えると、騎士団は犯人と思わしき人達を捕まえ、騎士団の留置場へと連れていき、目撃者として名前が挙がっている者達を事情聴取として騎士団へと連れて行った。

 私は濡れた格好のまま騎士団へと連れて行かれ、水の中に入っていたのは水の中に絵の具を溶いたものだったとわかった。

 

 たまたま私が着ていたドレスの色が濃い色だったので、今まで気が付かなかったのだ。

 担任の教師も着替えなさいとは言ったがタオル一枚貸してくれなかったことに思い至った。


「教師と校長はタオル一枚、貸してくれませんでした」

 とその報告を入れた。


 傷害罪なので、簡単には済まない。

 逮捕された子たちは留置所に入れられたままだし、目撃者は何度も何度も同じことを聞かれ、なぜ助けようとしなかったのか、なぜ声を掛けなかったのかと聞かれることになった。


 私が名を挙げた十三人がぶつけたことは間違いなく、絵の具を溶いて入れていたことに悪質であると言うことになった。


 私はなぜこのような物をぶつけられることになったのか理由を聞かれ「私の身分が低いにも関わらず成績が良く、休憩時間にも本を読むような人間だからです」と答えた。


 私は学園から持ってきた、ダンス用のドレスに着替える許しを得て、騎士団のシャワールームを借りて、シャワーを浴び、着替えて風魔法で髪を乾かして、三つ編みをして髪を縛った。


 シャワーを借りたことに感謝して、着ていたドレスは証拠品として預けることになった。


「裁判まで犯人達を家に帰すことを認めますか?」

「認めません」

「解りました。では留置場預かりとします」

「よろしくお願いいたします」

「目撃者は誰もあなたに声を掛けなかったのですね?」

「はい」

「では同罪として訴えます。ただし、彼ら彼女らは自宅謹慎とします」

「解りました」


「ご自宅までお送りいたします」

「助かります。よろしくお願いします」



 翌日学校に行くと、クラスの半数は出席していなかった。

 いや、学園の一/三、出席していない。


 私は堂々と授業を受け、休憩時間には図書館へ行き新しい本を借りて過ごした。


 クラスの二〜三人に何があったのか聞かれたが「騎士団に答えて良いという返事をいただいていないので、お答えできません」と伝えた。


 その時に教えてもらったのが、私に対して面白いことするから、見においでよと声を掛けられて見に行ったものが大半だったらしい。


「なにかが起こると知っていて教師に伝えるなり、私に伝えるなりしなかったあなた達も同罪ですね。騎士団に伝えておきます」

 モゴモゴと何を言っているか解らない人達は二度と私には近寄ってこなくなった。


 その翌日、講堂に出席している生徒たちが集められ、事情説明がされた。

 皆驚いたのが、目撃者も犯人と同罪に扱われることだった。


 知らぬふり見ぬふりが通らないと言うことを周知できたのは良かった。


 裁かれる人数が多いのと、学校の授業が遅れるなどの理由から早い日程で裁判が行われた。


 私にぶつけてきた人達は「犯人と言われるほどのことはしていない」と口々に言い、裁判官の心証を悪くした。

 目撃者達はなぜ知らぬふりをしたのかとそれにも罪があると言って、目撃者たちには夏休みの間中、騎士団に通って、掃除洗濯などの雑用をさせられることになった。


 犯人達は、自分がしたことの自覚が薄く、反省の色が見えないということで、明日から夏休み最終日までの間、強制労働という実刑が下った。


 犯人達の親たちには子育ての失敗と言われ、慰謝料として、金貨十枚ずつ支払うことを命じた。

 次に同じようなことがあった場合、子供達はブートキャンプへ入れることになると伝えられた。


 そして教師たちには、被害者にタオル一枚渡さないとは教師としてどうかと言われ、再教育を受けることを勧められた。


 私が受けた虐めはこんな風に決着した。

 今回処罰を受けた人達が学校に来たら、私は今度も徹底的に戦ってやる。

 私は私の尊厳を守るんだっ!!

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― 新着の感想 ―
ブートキャンプ… こんな短絡的なガキを腕力的に鍛えちゃダメじゃね?
[一言] >善意の人ならなぜ教師を呼びに行かないのでしょう? 善意だからだよ。 善意……碌にこれまでの過程や事情も知らないのなら、下手に介入すると双方から恨まれるとかよくある話。 命の危険のあるリン…
[一言] >目撃者は何度も何度も同じことを聞かれ、なぜ助けようとしなかったのか、なぜ声を掛けなかったのかと聞かれることになった。 >目撃者達はなぜ知らぬふりをしたのかとそれにも罪があると言って、目撃者…
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