恐怖の狂想曲!!悪夢の予言!!(2)
続きです。
悪魔がミシェルに目を向けた。
凍てつくような視線に、ミシェルは魂まで射抜かれたような気がした。
悪魔は少年とも少女ともつかぬ中性的な声でミシェルに語りかける。
悪魔の発する言葉は、ヨーロッパ大陸の古今様々な言語に精通するミシェルが、今まで聞いたこともない言語だった。
しかし、ミシェルには悪魔の発する言葉が不思議と理解できた。
悪魔はこういった。
「死を嘆き恐れよ。我は恐怖の大王。破壊と殺戮の化身なり」
悪魔は腕をおもむろに頭上に振り上げると、ミシェルの脳天へ打ち降ろそうとした。
しかし、その瞬間に天空から青白い閃光が一直線に悪魔へと疾った。
悪魔の華奢な肉体は閃光に貫かれ鮮血を吹き上げる。
ミシェルは恐怖と混乱により立ち上がることも声を上げることすらできない。
悪魔の頭上の上空には、豊かな髭を蓄え荘厳な気配を纏う壮年の男が浮遊していた。
悪魔は男に向かって語りかける。
「貴様か。」
悪魔は麗しい貌を意地悪そうに歪め、続けて言葉を発した。
「今までどこに隠れていた。この臆病者め。」
「我に抗い続け、星々の民を我との勝ち目のない戦駆り出した貴様が、最後の最後に見せた抵抗がかくれんぼとはな。」
男は悪魔に対し毅然とした態度で言い放った。
「愚昧な野獣め。貴様が如き者の言葉など何の価値もない。思考することすらできず、破壊と殺戮にただひたすらに溺れるだけの存在が。」
そして続けてミシェルに目を向け言い放った。
「聞け。異星の賢者よ。」
「この獣は愚かであるが、この宇宙の何者でも阻むことを許さない強大な力を持っている。」
「そしてこの獣は決して滅びぬ。」
「ワシはこの獣の脅威から宇宙を救うべく奔走したが、力及ばずこの獣を打倒することが叶わなかった。」
「ワシは自身に残された最後の力を使い、貴様の魂をこの星に召喚した。それは貴様にこの獣の脅威を示し警告するためだ!」
「もはや宇宙に残された生命は、ワシらの銀河から遠く離れた貴様らの住む地球の生命だけだ!」
「宇宙から生命を絶やしてはならない!ワシは貴様ら地球人に最後の希望を託す!」
「この星はこの獣によって破壊され尽くし爆発するだろう!しかし獣はそれでも決して滅びぬ!」
「こやつは星を滅ぼした後、生命の波動を感知し地球へと向かうだろう!」
「地球の賢者よ!備えるのだ!この獣を打倒すべく、この脅威を後世に伝えよ!」
そう言い終わると、賢者は神々しい白いオーラを全身から放ち、悪魔へと突撃する。
猿が絶叫するように哄笑し迎え撃つ悪魔。
その体から赤黒い悍まく強大なオーラが迸る。
悪魔と男が正面から激突すると、その衝撃により星が崩壊し始めた。
ミシェルの視界は暗転した。
そしてミシェルの脳裏にある数字と文字が浮かんだ。
19
99
juillet(7月)
ーーーーーーミシェルは部屋のベッドで目を覚ました。
いつもと変わらぬ穏やかな朝だった。
ただ一ついつもと違ったことは、ミシェルの体は赤い液体で染まっていた。
それは悪夢の中で、あの悪魔が吹き出した鮮血と同じ臭いがした。
次から原題編に移行します。