9話 旅立ち
仮面騎士との戦いからしばらくたった後、
シェイン達はシェイン宅に集まっていた、
村への被害はアルフィダがシェイン達に合流する前に村長に避難誘導を促していたようでそのため大きな被害当はなく若干の怪我人は出たが死者は出ておらず比較的軽微で済んだ
もっともこれまでずっと平和だったカラッタ村にモンスターが群れを成して攻め込んで来るなど前代未聞でお国のお姫様を匿ったせいだとか自分達は穏やかに暮らしたいだけなのにお国同士のイザコザに巻き込まないで欲しいなど村人達の鬱憤やら憤慨が直近でこの村にやって来たフィーファ達に向けられていた。
しかしあのモンスター達は明らかにソレとは無関係……なのかはわからない、わからないが一つハッキリしている事がある。
「アイツが、あの仮面が狙っていたのは俺だ、それにアイツ、夢の事を知ってた……」
黒で塗り固められた仮面の騎士
あんな得体の知れないヤツに命を狙われる謂れはない、
それでも狙われたのは紛れもない事実
「俺がこの村にいたらまたアイツはこの村に来る…」
そうなればまたここが戦場になる
母さんやロイおじさん、村の皆が巻き込まれ最悪死者だって出かねない、
そんなのは嫌だ、もう誰かが目の前で死ぬ光景など見たくはない、そんなのはまっぴらゴメンだ
シェインがそう考えていると部屋のドアがゆっくりと開きアルフィダが入って来た
「何の様だよ?」
「そう噛みつくなよ、お別れを言いに来ただけさ」
「お別れ?」
「この村には任務で立ち寄っただけだ、もう用も済んだしソロソロ出ていくよ…」
「はぁ?」
「もともと村の中に入るつもりはなかったんだがな、流石に見過ごすのは夢見がわるそうだったしな、」
「ちょっとまてよ!任務って何だよ、お前はなんのためにここに来たんだよ、」
「うーん、まぁいいか、話すって約束だったしな、俺は密命手間ある人物の監視を依頼されてるんだよ、その人物がこの村に立ち寄ったって情報を得てな、見に来たんだよ、まぁ入れ違いだったみたいだがな、」
「それってまさか、フィーファのことか?」
「あぁ、お前はあのお姫様と面識があったのか?」
「少し話しただけだ、」
「ふーん、まぁそういう事だ、彼女等を追わないといけないからココに長いも出きないんだよ、」
「待て!彼女をどうするつもりなんだ!」
「安心しろ、殺すのが任務じゃない、その逆で彼女の護衛が俺の役目だ、」
「そんなん信用出来るかよ!お前は…!」
「…そうだな、俺は先生を、殺した、その事実は変わらないし、今更謝って済む問題でもない、言い訳もしないしそんな資格もない、俺を憎みたいならそうすればいい、お前にはその資格があるよ…」
「…なんだよそれ!ふざけんなよ!先生は…先生はな!」
「じゃあな、シェイン…久々に会えて嬉しかったよ、」
「待てよ!逃げんな!まだ話は終わってない!」
「俺はお前と話す事なんてもう無いんだがな、」
「俺もついてく!」
「はぁ!?」
「俺もついて行くって言ったんだ!」
アルフィダは深くため息をついて答えた
「あのなぁ、遊びじゃないんだぞ?シェイン…。」
「そんな事は分かってる!」
「分かってねーだろ?
最悪人が死ぬかも知れないしお前が人の生き死にに深く関わる事にだってなって行くかもしれない、この村で平和に生きて来たお前がそんな世界で行きていけるのか?」
「約束したんだよ、護るって!」
「約束?なんの話だよ?」
「フィーファとしたんだよ!俺が護るって!」
「くふっ、アハハハ!マジかよ?お前!」
シェインの言葉に吹き出し、大笑いするアルフィダ、
そんなアルフィダのあんまりは態度に顔を真っ赤にしてシェインは噛みつく様に叫ぶ
「笑うな!
何が可笑しいんだよ!俺は真面目にっ、」
「ハハ、悪い悪い、そうか、誰かを護るためにか、お前は先生の教えを実直に守ろうとしてるんだな、」
そう言ったアルフィダの顔はなんとも言えない感情が籠もってる様に見えた
シェインにはその表情の意味はわからない、
わからないが少なくとも彼が自分を馬鹿にして言った言葉ではない事くらいは察しがつく。
「そう言う事だから俺を旅に連れてけよ!」
「駄目だ。」
アルフィダの意志は固いようでシェインの同行を頑なに認めてはくれない、
彼がシェインが憎くて拒否してるわけではない、
少なからず大切に思ってくれてるからこそ旅に同行させたくない、シェインにだってそのくらいの事はわかるつもりだ
それでもシェインもまた折れるつもりは無かった、
もう決めていたのだから、ここ村を出てフィーファの元に向かうと、
二人が互いの意志を目に乗せて睨み合う、そんな時だった、
「悪いげどその子の頼みを聞いてあげてくれないか?」
「え?」
二人が振り向いた先にはシェインの母、クリスがロイに支えられながらシェインの部屋の中に立っていた
二人して言い争っていたから気づかなったようだ、
血を多く流したクリスは傷こそふさがっているが立ち眩みなどが酷くまともにたっていられないほど体力を欠いている、
それでもクリスがこの場にやって来たのはアルフィダに息子の頼みを聞いてもらうため、
「クリスさん、アンタ自分が何言ってるか理解してますか?」
「アルフィダ、アンタの気持ちは嬉しいよ、でもアタシはシェインの…自分の息子の気持ち、決意を尊重してやりたいんだよ」
「どうしてそこまで…、」
「シェインは昔から聞かん坊でね、アンタも知ってるだろ?一度決めたら滅多な事でもない限り辞めないんだよ、きっとこの子はいつか私の静止なんて振り切って勝手に飛び出してく、」
「……。」「母さん……。」
「もともと今日私はこの子を送り出すつもりだった、正直とても不安だし、やっぱり止めておけば良かったんじゃないかって後悔してたほどだよ、」
「だったらなぜ……」
「アンタがここにいるからだよ、」
「俺が?」
「知ってるよ?アンタがあの日の事をずっと後悔してるってね、だから、ずっと見守ってくれてたんだろ?」
「!!?」
「え?どういう事?」
シェインが二人の話の意味について理解できず困惑してる合間も二人の会話は続いていく
アルフィダは改めて母という存在の偉大さに気付かされた、自分には母との思い出などない、
だからこそ、彼女の、シェインの母親の願いがとても眩しいものに感じられた
「アンタになら委ねられる、迷惑かもしれないけどウチの聞かん坊息子をどうか頼むよ、」
「俺で良いんですか?」
「アンタ程の適任はいないよ、アタシのお墨付きさ」
「はっ、全く嬉しくないぜ…」
クリスの言葉にアルフィダはしばらく下を向いて黙りこくってしまう、
しかししばらくすると顔をあげてシェインにこう行ってのけた
「覚悟はあるんだな?」
「覚悟か、母さんにも聞かれたよ、正直わからない、でも俺は人と交わした約束を破りたくない、それに俺には夢があるんだ、絶対に叶えたい夢が、だから俺を連れてってくれ!」
「…………、分かった、準備できたら門前に来い、」
「いいのか!?」
「行きたいんだろ?」
「アルフィダ!!」
アルフィダはシェイン達に背を向けると片腕をあげてそのままシェイン、クリスの家から出ていった
「まさか母さんがアルフィダを説得してくれるなんて思わなかったよ、その、ありがとう」
「聞かん坊のアンタが1人で突っ走るより余程安心でしょ?アルフィダに迷惑かけないようにね、」
「……でも、アイツは先生を……」
「先生も言ってたでしよ?
人を憎むなって、それに一度アルフィダともよく話してみな、今とは違う考え方が出来る様になるかもしれないよ?」
「……、そうしてみるよ、」
「うん。そうしてみな、」
二人の間で穏やかな時間が過ぎて行く
ロイはそっと部屋から出て二人の事を影から見守る事にした。
ロイは二人にとってもっとも身近な他人だ、
それは覆らない事実で、それがもどかしく、また、悔しかった。
シェインは母親との話に区切りをつけると聞きそびれていた事を聞く事にする、モンスターの襲来やら仮面騎士やらでそれどころではなかったので仕方ない、
「母さん、そういえば聞いてなかったけどこの剣はなんなんだ?
結構高価な物に見えるけど何処でこんな物を…、」
「あぁ、それはアンタのお父さんが置いってった物だよ、」
「お父さん?…オヤジが…、」
「うん、置き土産だってさ、売ればそこそこのお金になるから生活の足しにしてくれってさ、ホント、かってな事ばかり言ってたよ、」
「オヤジは今何処にいるの?」
「さぁね、生きてるのか、死んでるのかもわからない、私を置いて何処かに消えたよ、」
オヤジの事を話す母さんの顔は貼り付けたような笑顔で、昔を懐かしむとか思い出に浸るとかそんな物ではなくどこまでも無。
昔あった事をただ語っている、そんな空虚さが滲み出ていた。
「母さんはやっぱりオヤジを憎んでるの?」
「さぁね、昔はそんな気持ちもあったかもだけど今は昔そんな事もあったなってそう思うだけだねぇ、」
「コレ、俺が使っていいの?」
金の装飾がなされたきらびやかな剣、売れば確かにそれなりの額がつくだろう事は俺にも何となくわかる、
ただ母さんがそれをずっと売らずに手元に置いてるのは未練があるからじゃないのか?
それを俺が使っていいのか、それを聞いたつもりだったが
「こんな狭い田舎の一軒家でサビついてくくらいならアンタに使われた方が剣もきっと喜ぶよ、」
母さんはそんな言葉を返してきた。
「わかったよ、コレは俺が使わせて貰う。返せっていっても返さないからな!」
「言わないよ、安心しな、」
その後軽く母との談笑を終えシェインは14年間暮した家から旅立つ事となる。
背には母から渡された荷物を抱えて、
その中には例の剣もある。
「じゃ、行くよ、母さん」
「ええ、行ってらっしゃい、戻りたくなったらいつでも戻ってきな、」
「あぁ!」
あれ程つまらなくて、退屈な場所だと思っていたこの村だけどシェインにとっては生まれ育ったたった一つの故郷なのだ、いつか戻って来たら母さんやロイおじさん、沢山の人達に思い出を語ろうとそう自然に思えた。
村と村の外を繋ぐ門前には本人が言ったようにアルフィダが待っていた。
「もういいのか?」
「あぁ、」
「なら行くか、」
二人は並び立って村を出ていった
シェインにとって始めての外の世界
広大に広がる世界はシェインにどんな物を見せてくれるのか、それは今のシェインには想像するしかできない。
だからこそシェインの胸は期待に高鳴っていた。
シェインが旅立って幾ばくかの時間が経過し、夜は老け込み周囲は暗闇に包まれている
それは彼の故郷、カラッタ村でも変わりはない
シェインの自宅、クリスの自宅でもある一室でクリスは開け放たれた窓から闇夜に浮かぶ月を眺めていた。
「シェインが旅立ったわ、」
彼女の声は彼女以外誰もいない部屋のなかで空虚に反響する
「これでよかったんだよね…?バーミント」
その問い掛けに答える者はいなかった。
もしこの小説を読んで少しでも面白いと思はれたなら、ブックマークや、↓の★★★★★を押して応援してもらえると幸いです、作者の執筆モチベーションややる気の向上につながります、お願いします