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ユーディキウムサーガ 父親に捨てられた少年は好きになった少女のために最強の剣士を目指す  作者: ムラタカ


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68話   お話をしましょう




「どうも皆様初めまして、私、フューフェ・ウラニティと申します、以後お見知りおきを」


ディオールとアラン、そしてアルフィダ達が乗る馬車を囲むように陣取る物々しい集団を代表するかの様に出て来た少女は華麗な所作で挨拶する。

突然の少女の登場に呆気に取られるディオール達だがそれすらも意識の外に飛ばされる程の衝撃に直面して言葉を失ってしまう。

レイラが忠誠を誓ったレスティーナのお姫様であるフィーファに、彼女の容姿が似ていた、いや似すぎていたのだから。


「えっ……と…フューフェさんとらはフューフェという名で間違い無いのですね?」


「あら?面白い事を聞かれるのですね?先程フューフェとそう名乗りましたのに?」


「え?あ〜いや、とある人物に良く似ていらした物でつい…、ね?」


「あら?もしかしたらそれは他国のお姫様の事でしょうか?それは仕方ありませんもの〜」


「仕方ない…?」


「はい、その他国のお姫様…フィーファ・レスティーナと私、フューフェ・ウラニティは血を分けた姉妹ですからね、」


「姉妹…?」



馬車の中にいるアルフィダ達も彼女の言葉に絶句している、余りの発言に思考が追いついていないのだ。


アルフィダはレイラとレコ、それぞれに視線を向けるが二人共首をふる、知らないという意思表示だろう。


もっともレイラにレコ、なんならアルフィダにも彼女の言葉が真実だと決定付けるある可能性には行き着いていたが。

そしてそれはディオールもまた同様だった。



「その様な方が居られるとは聞いた事が無いですなぁ…」


「あら?そうなの?てっきり私の言葉の真否の事なら大方の予測は立っているのではなくて?」


「………。」


「ふふ、そう気になさらないで?その推測でおそらくはだいたい正解でしょう」



ディオールやアルフィダ、レイラ達がいきついた推測とは彼女が本当の意味でフィーファの姉妹だろうと言う事だ。

フューフェの実父であるアングリッタの元王子は女好きで有名だと知られておりフィーファの母、つまりエルミナと結婚した後も女遊びを辞めなかったと言われている、つまり彼女はこの国の元王子の隠し子かあるいは…。


しかし噂はもう一つある、フィーファの実父、アングリッタ王はエルミナに対して自身の性欲を当て付けるように苛烈に発散していたという話もまた有名だ。


その行為に愛情や恋慕は無く、ただ自らの性欲を発散するための行為だったらしくエルミナは彼にとっては只の性欲処理の道具だったと言う話はレスティーナ城内に務める者なら誰でもしっている話だ、無論噂の粋を出ない程度の話だが、

もしこの噂が事実なら元王子が避妊等をしているはずもなく、彼女はそういった過程で生まれた命の一つとなるのだろう。



「ふふふ、我が父の事ながらお恥ずかしい限りです、今は少しまともに成られたのですが、アレを実父だと思うのは今も変わらず恥ずかしいですわ」


「では貴方は本当の意味で…フィーファ・レスティーナ様の姉妹だと…」


「えぇ」


「いやはや、意外でしたな、あの方に妹さんがいたなんて、」


「あら?どうしてあっちが姉で私が、妹と認識されたので…?」


「え?……えーと……」


「思い込み、先入観、理由は色々あるのでしょうがそういった物に囚われていては見える物も見えなくなりますよ?ディオールさん♪」


「はっ…、ははは、こりゃまいりましたなぁ…」


「ふふ、まいられましたねぇ…ふふ」



独特の間を持つフューフェにディオールはタジタジだ、いい歳のオッサンが十代の少女に言い様にあしらわれている姿に馬車内のレイラやアルフィダも開いた口が塞がらない、

見かねたアランが助け舟ではないがフューフェに確信を付く質問を投げ掛ける



「それで、貴方はいったいどういった目的で我々に近づいたのですか?もう我々の正体にはお気づきの様ですし、そちらも何かしらの思惑があるのでしょ?」


「はい、勿論ですわ」



アランの問いかけにニッコリと微笑んで即答するフューフェ、彼女にとってもこの状況が安全でないのは明らかだろう、

彼女がどれ程の地位をこの国できづいているのかは謎だがそこそこのポジションにいるのは彼女が50人程の兵士を動員してこの場に来ている事からも明らかだろう、

それでも万全とは言えない

イレギュラーは如何なる形でも到来する、

今日彼女がこの場で命を落とす可能性もゼロではないのだ、その可能性を考慮しているからこそ周りに控えている騎士達からは常に緊迫感や緊張感が見て取れる。


それでもこの場に彼女自身が来ているのはそれだけ大きな目的があるから、そう思っていたのだが…



「あの馬車の中にはレイラさんにレコさん、私の妹がお世話になっている使用人の方々が居られるのですよね?もしかして姿が見えないアルフィダ様もあの中に待機していらっしゃるのかしら?ふふ」



こちらの行動がどうしてこうも筒抜けなのかは疑問に尽きないがバレてるならこれ以上下手な三文芝居を自演する必要はないとアルフィダやレイラも馬車から出できた。


括っていた縄はあらかじて簡単に取り外しできる工夫をしていたため、元々拘束力はなくこうして簡単に取り外しが出来たのだ。

アルフィダは初対面となるフューフェに気安く話かけてみた。



「驚いたよ、アンタには色々コチラの調子を外されてる事にな、」


「誰ですか?貴方?」


「へ?」



てっきり向こう側もアルフィダのテンションに合わせて会話に乗ってくると思っていたが早速で調子を外される。



「大変愛らしいお嬢様ですけど…参りましたわ、てっきりアルフィダ様が同行していると考えていたのですが、こちらの情報処理能力にも荒があったと言う事ですか」


「………、あっ…」



アルフィダは失念していた、今自分が女装している状態な事を、この姿でいつものムーブをかましても全く決まらない事を

アルフィダは失念していた。



「アルフィダ……ドンマイです」


レイラにポンと肩に手を置かれる

手のひらを額に当ててはぁ~と溜息をつく



「こんな成りだが俺がそのアルフィダだ、アンタの巧妙な立ち回りのお陰でめかし凝んで来た意味が無くなったよ」


「まぁ…、まぁまぁまぁ!!貴方があのアルフィダさん!大変その女装お似合いですわ!絵画に残したい程の完成度ですわ!」


「やめてくれ……」


潜入捜査目的からの女装だったがフューフェ嬢には大変評判なようでそういった意味でこの変装は全くの無意味という訳では無かった様だ。

アルフィダにとっては罰ゲームも良い所だが。



「それで…結局の所、アンタがこんな回りくどい方法をとってまで俺等に会いに来た理由は何なんだ?」


「あら?もうそのお話に移るんですか?まぁいいですよ、そうですね〜、簡潔に言えばあの娘に対する嫌がらせでしょーか?」


「嫌がらせ?」


「あの娘、私の妹、フィーファは自分の事を何も知らず今を生きてますわ、それがどれ程に烏滸がましい行いかも知ろうとせずに、だから少し嫌がらせをしてやろうと思いましたの、ふふ」



レイラはフューフェの言葉に我慢ならないのかアルフィダを押しのけて彼女に食って掛かるように言葉をかける



「お言葉ですが貴方にそんな事を言う権利があるとお思いなのですか?彼女の事を何も知らない貴方が!」


「ふふ、しってますわよ?あの娘の事なら、少なくとも貴方などよりよっぽどね?」


「なっ!貴方は!」



「お嬢様、申し訳ありませんが、お時間です、」


「あら?もうそんな時間?待ち望んだ日を迎えれて時の感覚が早く感じてしまうわね、貴方方、もし宜しければ私の屋敷に同道して下さらない?そこでなら時間を気にせずにお話…出来るのでけれど?」


レイラは直ぐ横のアルフィダとレコ、そしてディオールやアランに顔を向ける、皆一様に頷き相手の招待に同意する意志を見せる


「わかりました、貴方に同行しましょう、」



結局騎士達を下がらせたフューフェは自身の屋敷にレイラ達を案内する事となった、その屋敷はここからまた離れた所にあるらしくまたもや馬車による移動となる。

フューフェはここに来るために乗ってきた馬車に乗り、アルフィダ達もそれに同行する事となる。



「彼女がフィーファ様の姉、親族だというのは本当なのでしょうか、」



誰にともなく質問したのはレコだ、レコもレスティーナでメイドをしていた身だ、城内の噂は度々耳にしている。

がそれは当然だ、王がフィーファにたいしてワザと流した事実の噂なのだから。



「おそらくは事実だと思います、フューフェ・ウラニティ…彼女の存在にも驚かされましたが、フィーファ様と瓜二つな容姿にも驚かされましたね、姉妹だからとあそこまで似るものなのでしょうか…、」


「人間の構造なんて突き詰めればわからん事だらけだ、そういった事もあると言えばそれまでの話だろうな、」


「そうですね……そうですけど…」


「いいじゃないの、あの娘が自分から自分の話をしてくれる場を用意してくれるのだから、私達はその話を聞かせてもらいましょ?」


アランは前方を走る馬車を見ながらそう結論する

実際彼女の事に関しては分からない事だらけだ、

考えても仕方ない、そもそも彼女の目的すらハッキリしていないのだから。



「そういえばあの女、姫さんに嫌がらせするのが目的とか言ってたな、個人的な恨みとかあるんだろうかね〜」


「わからんがフィーファ姫があのフューフェとかいう女の事を何も知らないなら互いに関係はかなり薄そうだけどな、血は繋がっていてもそんなの、他人と変わらんだろ、」


「厄介な事だな、」


アルフィダとディオールの会話も一段落した頃、前方の馬車が大きな敷地に入っていく、いよいよ目的の場所、


フューフェの住む屋敷が近づいて来たようだ


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