59話 レイラとアルフィダ
レイラがアルフィダと出合ったのは今から3〜4年前の話だ、
フィーファのお付きとしてマグラーナに派遣されレスティーナにやって来る前の話
孤児だった彼女はマグラーナの騎士団長ガウスに拾われそのお陰で人並みの生活が出来る様になったがそれまでは酷い物だった
当時12〜3歳だった彼女に手を差し伸べてくれるような出来た大人など当然おらず、盗み、騙し討など生きる為に出来る事ならなんでもやった、
無我夢中だったし、善行だとか悪行だとかそんな事に頓着していられる程に余裕もなかった
マグラーナに住む住人も国自体が不安定な事には気づいてたし、国を出て他国に向かう者や徒党を組んで略奪する者など治安は悪くなる一方でマグラーナに残った者などはろくでなしのならず者ばかりだった
そんな彼女に手を差し伸べてきれたのがアラン・オリジンズとディオール・プルオールの2名だった、
彼等は日雇いの傭兵で、その日払いの報酬でのらりくらりと世界を渡り歩く旅人だった。
と当時は聞かされたがなんの事はなく、ラティクスからの密偵で傭兵という体でマグラーナにやって来ていたのだと言う事を後から知る事になる、
この二人との出会いがレイラに傭兵という道もあるのだという事を知らしめてくれた事になるのだからレイラからすれば大恩ある存在と言えた
しかしながらまともな食事も取れず痩せ細り、武道の心得もない12〜3歳の少女に傭兵など夢のまた夢だった、
しかしアランやディオールとの出会いは彼女にとっての転機となったのはまごう事なき事実で彼等の紹介で、ある孤児院を紹介され後に義理の父親として尊敬する存在となるガウス騎士団長と出会う事となった
こうしてガウスの孤児院に入った彼女は父親の力になりたいと言う目的と当初からの目的だった傭兵家業を実現させ、しばらくはアランとディオールに指示を受けながら傭兵家業を熟して行く
勿論子供が大人に混じって働くのだ、しかも傭兵は完全な実力至上の世界、弱いモノは強い者に淘汰され、まともな食い扶持にもありつけない有様だ、
最初の頃は血反吐を吐きながらレイラは仕事を熟した
二人からは戦い方を叩き込まれた
ガウスからも槍の使い方を叩き込まれた
元々の性格が功を奏したのかレイラは見る見る成長を果たしていった、
そんな頃だ、レイラがアルフィダに出合ったのは
彼はアランとディオールに連れられてレイラの前にやって来た、まるで捨てられた猫のようなそんな儚さをもった奴だなと言うのがレイラの第一印象だった、
顔に大きな傷があるがそれを差し引いても端正な顔立ちをした美少年だ、がそんな外見的特徴を台無しにするくらい口数が少なく無口でまた、何かに怯えたような態度を常にもっていた、
レイラは正直に言えばアルフィダの事が当初嫌いだった、
聞けば彼は貴族であるらしい、彼はレイラからすれば全部もっている、帰るべき場所、家、お金、そして力、アルフィダは強かった、
ホントに同年代かを訝しむレベルで、
自分達より大柄な大きな大人にだって引けを取らない、いや、問題にすらなっていない、
アルフィダが相手をすれば誰もが子供のお遊戯かの如くちっぽけな存在に見える
だからこそレイラは納得出来なかった
全て余すことなく持っているのに何故そんな悲しそうな顔をするのか、
何故そんな捨てられた猫みたいに不貞腐れているのか、何も話さない、何も語らない
そんな自分本位な態度が
同情を誘うような態度が気に食わなかった
アルフィダはレイラが住む孤児院に短期間だが住み込む事になり、レイラの鍛錬相手にもなってくれた
口数の少ない無口な奴だが不思議と面倒見は良くレイラの特訓に文句を言う事なく付き合ってくれていた
今にして思う、何故アルフィダはいつも私の相手をしてくれていたのかと、シェイン、彼に会ってその理由も理解することが出来た
どどのつまりアルフィダは私を介してシェインとの時間を取り戻したかったのだろう、
師殺し、その大罪から逃れるための免罪符
シェインに許して貰う事で彼は救われるのだろう
今は亡きグライン・アンティウス本人からは許しを得る事は出来ない、だからこそグライン・アンティウスと最も近い存在であった末の弟子から、シェインから…
「不器用だな、ホントに」
「何が?」
「!?」
レイラの独り言に質問が帰って来て彼女は思わず驚く、無理もない、独り言は一人で呟くから独り言なのだ
そこに他人から質問なんて返されればもう既にソレは独り言として機能していない
物思いにふけっていた気分を台無しにされたレイラは質問をしてきた人物へと文句をたれた
「レコ、突然声をかけないで、ビックリするじゃない」
「貴方が珍しく黄昏れた顔してるからつい声をかけたくなったのよ、オマケに意味深な言葉まで呟いてたら興味をもつなといわれてもそれは難しいわ」
「はぁ……貴方は昔から変わらないですね、」
「そう?コレでも随分と変わったと思ってるわよ」
確かにレコは変わっただろう、
昔の彼女は…といってもレスティーナ城に来てからの2年程度の付き合いでしかないが彼女は大きく変わった
まず、というより一つしかないが、大きな変化は彼女がフィーファ様に心酔するようになった事だ
元々の彼女はフィーファ様を、というより富や名誉、恵まれた環境に甘んじている人間を執拗に毛嫌いしていた、無論フィーファ様とて例外ではなくむしろ身近な王族だからこそその怒りの矛先がわかりやすく向いていた。
それがいったい何があったのか、フィーファ様にくっついて来た彼女は以前とは一転してフィーファ様に心酔しているのだ、訳が解らない
「貴方の心境にどんな変化があったのかは知らないけどフィーファ様に迷惑をかけない様になっただけマシですね、」
「勘違いしないで、私はフィーファ様に大恩を感じてるから彼女に尽くしたいと思うようになっただけ、ぬくぬくと贅沢を謳歌する奴等は今も私にとっては唾棄すべき対象よ、」
「そうですか、」
「それより私達はコレからどうなるの?あの連中は何?貴方の知り合いみたいだけど?」
レイラ同様に拐われていたのが彼女、レコだ。
レコとレイラの共通点は非常にわかり易い
マグラーナからレスティーナに派遣されてきたという経緯がある事だろう、
賊の別の荷馬車にはレコも手足が縛られ身動を封じられた状態で発見された
彼女からすれば自体が目まぐるしく変化している事になる訳で未だに助かったという実感を持てずに戸惑っているのだろう。
「安心して、彼等は私の知り合い、傭兵時代に色々世話になった恩人なの」
「そういえば貴方は最初傭兵としてレスティーナへの派遣を命じられたんだっけ、私達とは元々違うのよね」
レコには戦闘能力はない、格闘も武器をつかった兵法も、魔法に対する適正も、ダメ元で仕事を探していたら人手不足だった王城でメイドとして働けるようになり縋り付く勢いで仕事を受けた
本来なら貴族でもない孤児が王城内の仕事を雑用でも採用されるなどあり得るわけがないのだが当時のマグラーナの切迫した懐事情がそれを可能にしたという訳だ
「取敢えずコレから私達はどう身をふって行くかが問題ね、フィーファ様達も心配しているだろうし、なんとか戻る方法を考えないと、」
「悪いがソレは出来ない相談だね〜、メイドのお嬢〜ちゃん、うぇっぷ」
「え?」
ディオールはレコの発現を否定する様な事を言い、レコ、そしてレイラの方へと歩みよってくる、
「げっぷ、……はぁ、悪いが嬢ちゃん達には俺等の任務の手伝いをしてもらう事になったんだ、拒否権はね~の!うぷっ、」
「はぁ!?何を勝手に!」
「ディオールさん、その任務とは?」
「アングリッタへの密偵だ」
「アルフィダ…」
ディオールからアルフィダが説明を引き継ぎ話し始める
「レイラ達を拐った賊一行に依頼した奴がアングリッタと何らかの関係を持ってることの裏をとりたい、
マグラーナ王に不要な知恵を与えていた者やあのエセ勇者に力を与えていたのがアングリッタの策謀ならその重要参考人でもあるお前達に接触してくるのはわかってたからな、レスティーナ王がマグラーナからのスパイを全て粛清したせいでターゲットがお前達に絞られてしまったんだろう。」
「なっ、なんですか、それ、私達は体のいい囮じゃないですか!?」
「あぁ、そうなるな、もっとも俺は元々レイラを巻き込むつもりは無かった、囮は1人で十分だったからな。」
レコは自身が知らず内に囮にされていた事に怒りを感じアルフィダに怒りを向けるが当のアルフィダは当然の事のようにそれを流し、あろう事か、レコの囮発現を肯定した、それどころかアルフィダが本来考えていたプランによればレイラはここにいなかったのだという。
「なっ…そんな…、」
「ではアルフィダにとってはここに私がいるのはイレギュラーだと?」
「レコ嬢が連中にマークされているのは知ってたからな、どこかしらで動くとは思ってたが、まさか城の外に姫様共々出てくるとは思いもしなかったよ、連中からすればガノッサ卿と行動を共にしているレイラと王城にいるレコ嬢、拐うのはどちらも難易度が高いが比較的レイラの方が攫いやすい。」
「だったら何故連中は私1人の時では無くレコさんを…」
レイラが疑問を声に出した時アランがクスクスと笑い、ディオールはふ~と息を吐いた。
「なっ、なんですか、二人共?」
「簡単な話しですよ、レイラ、君には強力なガードが知らず内についていました、、だから連中は君に手を出せなかったんですよ、、そこに城からレコ氏がフィーファ姫と共に貴方方の拠点となるガノッサ氏の屋敷に集まる事になった、目標が一つ所に集中し、フィーファ姫やシェインなどが出払っている時を好機とみて行動にうつしたのでしょうね?」
「アルフィダが私を守っていた訳ですか、では何故今回は拉致されるのを見逃したんですか?トイレにでも行ってたとか?」
「ちげーよ」
「うぇっぷ、まぁ単純な話さ、いつまでも連中が嬢ちゃん達を攫えないままだと話が進展しないからな、連中には次のステージに移って貰わんと話が遅々として進まない、それに連中もかなり焦ってたからな、まぁ、アルフィダ坊は中々なっとくしてくれなくて困ったちゃんだったがね?」
とどのつまりは連中に行動させるためにレイラとレコが拉致されるのを黙認したがアルフィダ的には不服だったという事だ。
今回もっとも早く救援に向かったのはアルフィダでアランやディオール的にはもう少し連中の動きを観察したかったというのが本音だが普段から他者に興味感心を持たないこの少年がこんなに積極的に動くのが二人には新鮮に写りついついアルフィダの好きにさせてしまったという流れだ。
「それで、貴方達は結局私達に何をさせたいんですか?」
「レコ嬢には悪いが引き続き俺達に強力してもらう、レイラも乗りかかった船だ、このさい強力してもらう」
「それは構いませんが結局何をやらそうというのですか?」
「さっきもいった通りアングリッタの内情を探りたい、俺達はお前達を攫った賊連中に成り代わりアングリッタにお前達を連行する役をする、」
「まっ、待って下さい、私の、私の安全は…保証されるのですよね?」
「身の安全は保証する、と言いたい所だが俺は超人ではない、もしもの時は自分で自分の身を守って貰いたい。」
「そんな…、身勝手な…」
「悪いが身勝手は君の方だろ?君の発現は自分本位だ、自分が良ければレイラはどうなってもいい、そう言ってるように聞こえる…」
「そんなつもりは……私はただ…」
アルフィダとレコの問答を聞いていたレイラは静かに二人の話に割り込む
「問題ありません、もしもの時はレコさんは私が護衛する、傭兵として誰かの護衛として戦った事もある、なんとかなるでしょう」
「………、」
「それでアルフィダ、一つ教えてほしい…」
「何だ?」
「連中が使っていたあの妙な武器、アレはなんですか?」
「あぁ、アーティファクトのことか、」
アーティファクトとアルフィダがそう呼んだ武器、それを賊連中から回収した押収品から取り出したアルフィダはレイラやレコに見えるようにかざす
「これはアーティファクトといってアングリッタが極秘裏に製造している品だ、裏市場で広く出回っているが購入には特定の条件が必要で誰でも手にできる代物ではない、」
「条件?」
「条件は至って簡単だ、アングリッタ国出身の貴族である事、アーティファクトの情報を不用意に横流ししない、アングリッタに背かない、売り主をチクらない、そんな所だがコレらの条件に違反した者にはきつーいペナルティがくだされるとか。」
「ペナルティですか…、」
「あとは噂ではアングリッタが独自に持つ古代、旧文明期の時代に栄えた技術を現代に再現した物だとか言われてるな、」
「き、旧文明ですか?おとぎ話でもあるまいに…、」
「まぁ、そんな話に特に意味はない、重要なのはアーティファクトを手にした者に与えられる恩恵だ、…アーティファクトを手にする、たったこれだけで凡人は超人になれる、無才のモブが誰でもヒーローあるいは強大な悪になれるんだ、手にして戦意、戦う意志を持つ、それだけで筋力、瞬発力、俊敏さ、そしてオドを驚く程簡単に底上げしてくれる、その恩恵は凄まじく平時の3〜5倍になる、またアーティファクト自身も使用者に呼応して力を開放するらしい、」
「そんな馬鹿げた事が……そんな物が世界に出回ったら……、」
「あぁ、アーティファクト保有者と戦ったお前なら実感できるだろ?コイツのヤバさが、」
レイラはアーティファクト保有者と対峙した時自身の勝利を疑っていなかった、
それはそうだ、彼女は傭兵として辛いトレーニングを自身にかしまた傭兵として様々な戦場を体験した、シェインと出会ったあともそれは変わらない、その彼女が自身の判断を取り違える筈はないのだ、
相手は確かに素人だった、体つき、武器の構え方、体捌きや間合いの取り方、そのどれもが人目で素人だと理解出来りお座なりな物だった、だからこそデタラメだった
構えも流派も覚悟も何もない
ただの純粋な暴力、圧倒的な力を持って敵をねじふさる暴力
まるでチグハグで矛盾だらけ、弱そうな素人から分不相応な怪力と瞬発力でレイラとガノッサはあの時に圧倒された、
アルフィダは初手で迷いなく相手の手首ごとアーティファクトを斬り吹き飛ばした、冗談ではなくあれこそがアーティファクト保有者にたいしたベストな対策なのだろう。
「アーティファクトの事はわかった、と思う。正直自身はないけど…やってみますよ、囮の役を」
「待ってレイラ、貴方は怖くないの?死ぬかもしれないのよ?」
「私の命はフィーファ様に救ってもらった物だ、彼女の為に出来る事があるなら私は何だってする」
「これの何処がフィーファ様の為になる!彼等に利用されているだけじゃない!」
「この問題を解決しないと私達は常にアングリッタに狙われる事になる、彼女の側で彼女に尽くすために生きる道を選んだんだ、なら一刻も早く問題を解決しないといけない、」
「あぁ……ははは…は……そう…ね。」
力なくうなだれたレコはくぐもった声で覇気のない笑い声を漏らすも最後には覚悟を決め前を向く
ここにアングリッタに向けた即席のチームが誕生した、
未だ拭えない不安を抱えたまま…
彼等彼女等は動き出す。
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