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ユーディキウムサーガ 父親に捨てられた少年は好きになった少女のために最強の剣士を目指す  作者: ムラタカ


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58話  古馴染み

 

ゴトゴトと不規則な揺れを感じる、耳から届く音も不規則で一貫性がない、ただ鳥のさえずりや木々の揺らめく音、あとは風などを感じる事が出来る

そういった感覚からここが外なのだと解る


どうやら自分は馬車か、それに近い乗り物に乗せられている様だ

ただ手足が動かない、指は動くから手足が無いと言う事は無さそうだ、

視界も塞がれている、顔に布が巻かれていて周囲を確認する事とができない、

自分はどうやら身動を封じられ馬車に運び込まれ何処かに連行されているようだ、



(フィーファ様がいない時で良かった…)



フィーファ·レスティーナ、

レイラが身をとして守ると誓った少女だ、彼女の身に万が一などあってはならない、彼女はこの2年間、欺き続けた私を許し、生きる機会を与えてくれた

そんな彼女の恩義に報いる為にも彼女が自分の落ち度で傷つくなど合ってはならないのだ、


だからこそ此度の襲撃が彼女が不在の時で良かったと心から思う


ただ彼女は心優しきお方だ、

こんな私のような人間でも助け出そうと何かしらの手段に出るのは用意に想像できた、


だからこの状況から自力で抜け出さなければならない、

彼女に迷惑をコレ以上かけないために、



「おっ、どしたん?お目覚めか?」


「おおーグネグネ身動ぎしてるぜ、コレはこれでエロいなぁ〜」


「なぁなぁ依頼主に届ける前にちょっと遊んでもいい、この女、まじでそそるわぁ〜」



「ふぐぅっ!?」



どうやらレイラのすぐ近くに誰かがいるようだ、

いや、この状況で誰かなんて表現は間違いだ、

十中八九レイラを拉致した集団とみてほぼ間違いないだろう、

しかもその拉致集団は下劣な男達で構成されているのか、男達は本能に従順なある意味では清々しいまでに下衆な願望をもっているようだ、

身動が取れないレイラは単純に自分の身の危機にくぐもった声を上げるがそれがかえって男達の衝動に拍車をかける


「へへへ〜、たまんねぇなぁ、この女、鍛えてるからかいい体してやがるぜ、楽しみが……」


「おい!おい!あそこ!誰かが!」


「んだよ!!今良いところなんだよ!!邪魔すん…がばっ!!?」


「へ?」



軽率そうな印象を持つ男の声が途中で刈り取られたように止まる、その後近くでバタンっ!と大きな音がする、

何かが、おそらくは先程の男が倒れた音だろうか、



(何だ!?何が起こってる?)



周囲の男達の声に焦りを含んだモノが飛び交う、

悲鳴、怒声、あるいは罵声、

そのどれもが常時では飛び交う事のないモノなのは容易に理解出来る


ともすれば想像出来るのはこの馬車が何かに襲撃を受けていると言う事だろうか、


人の集団か、もっと悪い予測では人肉を好む好戦的な魔物、モンスターの類、

そのどれもが身動を封じられ視界さえ奪われたレイラにとっては最悪といって差し支えなかった、

嫌な予想が1人歩きする、だが



「大丈夫か?レイラ?」



聞き覚えのある声にそんな言葉をかけられ、目を覆っていた布が唐突に取り払われる、


そこにいたのはやはり知っている友人、

声から予測した通りの人物がいた、



「あ、アルフィダ…?何故貴方が、」


「俺だけじゃないぜ」


「え?」



未だ戦闘は続いているのか周囲からはけたたましい爆音や叫び声が聞こえる、

そこでレイラは知っている顔を見つける



「アランさん…、」


「やぁ、ひさしっ!ぶり…ですね…レイラ」


アラン・オリジンズ


襲い掛かって来た盗賊をなぎ倒しながらレイラに軽めの挨拶を放つアランと呼ばれた女性、

年のころはレコと同じく20代前半位の大人の女性だ、

ラティクスに見を置く女格闘家で鍛えた足技で多くの敵をなぎ倒す近接戦闘を得意とする女性だ、

レイラと同じく傭兵で金で雇われればどのような仕事もこなすが曲がった事や犯罪に加担するようなモノは受けない心情の持ち主である、



「おいおい、うぃっぷっ、よそ見してないで働けよぉー、うぇっ、ごくごくっ、ぷはーうめ~」


「おいおい、戦いながら酒飲むなよ!」


「馬鹿やろ!俺は酔えば酔うほど強くなんだよ!」



千鳥足のオッサンは敵に斬りつけられそうになりそれをアランが蹴り飛ばす、

ポカンとしていたオッサンはアランの顔をボーとみたあと「まぁそういった事もあるわ!」

とどういった理屈かは本人にしかわからない屁理屈をこねて更に酒をグビグビと飲んだ



「ディオールさん」


「ぷはー、よぉーレイラちゃん、少しでかくなったな」


「何処を見ていっているんだこの変態」


「あだぁっ!」



レイラにディオールと呼ばれたオジサンはアランに頭をはたかれ情けなく後頭部をかいている



ディオール・プルオール

同じくラティクスに見を置くモンク僧だが、彼自身は無神論者でモンク僧としての役職もただのジョブとしての意味しかなしていない

言ってしまえば技術を持つための手段としての役職でしかなく彼自身はハズレ僧侶あるいは下道僧侶と呼ばれてもなんら不思議ではない存在である、

酒を浴びるように飲みえずきながらも戦う姿は滑稽の一言だがそんな人物を頼ったアルフィダの判断は情けや同情ではなく、彼ならば期待に答えてくれるという確かな信頼から来ている



「皆さん…、いったいどうして…」


「アルフィダに頼まれましてね、しかしこの様な事になるとは思いませんでしたよ」


「全く、お前といたら退屈しないで済むわ、たく、うぇっぶ、」


「アングリッタの動向を探ってたらお前が攫われたって情報を聞いてな、連中には悪いが介入させてもらう事にしたんだよ、」


「そんな…、申しわけありません、私のせいで余計な手間を…」


「気にすんな、腐れ縁のよしみだ、昔はお前にも色々借りがあったからな、」



久方ぶりの再開にレイラの顔がほころぶ、

先程までは意味のわからない状態だったため緊張した状態から開放され一気に安心感が押し寄せてくる

襲撃してきた賊の正体などわからない事は山とあるが今はこの状況から抜け出せた事が何より嬉しく思えた

そんな緊張状態から抜け出せた反動か、

レイラ、そして助けに来てくれた知人達にももしかしたら隙が生じていたのかもしれない




「チョーしこいてんじゃねーぞクソ共がぁ!!!」



賊の1人、比較的軽症のそいつはなにやらごちゃごちゃとした装飾がアチコチに施された無骨というか機能性の欠けた不格好な剣を持ちそれをレイラやアルフィダ達に向けた


「いっ、いけない、アレは駄目だ!アルフィダ、逃げて、アレは…」


「なるほど、あれがアーティファクトか、」


「アーティファクト?」


「ケケケ!何でか知らねーが知ってんなら話がはえ~や!お前らマジ許せねーからな!女は半殺し、男は全殺しだ!」



「駄目だっアレを使わせては、アルフィダ、殺されてしまう、逃げて!早く!」


「安心しろ、あんなのに遅れは取らない」


「でも!アレは危険なんだ!アレは!」


「クケケケケケケカァー!!女の前でかっこいいとこ見せてポイント稼ぎかぁ?にーちゃん青春してんねー、でもざーんね〜ん賞〜!にーちゃんの青春はー、

ここで終わるんだよぉぉぉ!!!」



ブサイクな剣、アーティファクトと呼ばれたソレを振り回しながら男はアルフィダに突進するように駆け出す


アーティファクトは高速で振動し、触れるモノ全てを細切れにする切れ味を生み出す、

また、同時に使用者の身体的機能を数十倍に引き上げる

、人が簡単に超人的身体能力を持つ

それがアーティファクトのもつ機能、恩恵、だが、



「ぎゃあああああアアアァァァ!!!???」



アーティファクトは天に舞い上がった

男の手を持ち手にくっつけたまま、

ドスっと地面に突き刺さるとその反動で男の腕はアーティファクトから離れそのまま地面に落ちた


腕はピクピクと動いていたがやがて動かなくなった



「俺の腕えぇぇぇぇ!?」



男はなきべそをかきながら自分の腕を拾い上げ自身の腕の切断面にくっつけようとしているが当然くっつく訳はなく男はわんわんと子供みたいに泣きわめくしか出来ない



「残念だったな、お前の青春がここでジ・エンドだったみたいだ、じゃーな、」


「ひぎ!?まってまっかぺ?」



アルフィダはなんの躊躇もなく男の首をはねた


物言わぬ躯とかした男は自身の腕同様ピクピクと疲弊していたが最後には静かになった、





レイラはそんな死体を眺めながら静かに視線をアルフィダへと移すとアルフィダに向けて口を開いた



「…………、相変わらずですね、貴方は…、やはりマグラーナ王の首をはねたのも貴方か、アルフィダ」


「アレは生きてる価値が無かったからな、俺がやらずとも遅かれ早かれ同じ結果だったろう、」


「それでもフィーファ様は、王との話し合いを望んでいた、その機会を貴方が奪うのは早計ですよ、」


「姫様にはいずれ王としての器量を持って貰うつもりだ、だが今はまだその器ではない、今の彼女には荷が重いだろう、だから汚れ役がいるんだよ、」


「それが貴方である必要はないでしょう…」


「シェインは姫様の元で戦う決心を固めた、俺はその土台作りをしたいだけだ、」


「2年前の罪滅ぼしですか?シェインはそんな物望んでない、貴方がやってる事はお門違いだ、」


「かもな、でも俺はこんなやり方でしかアイツに返せねーんだ、」



深刻に考え込むアルフィダの背中をディオールは遠慮なく叩き込み姿勢を崩した彼の頭を無遠慮にガシガシと撫でる、撫でるというよりは頭を掴んで振り回してるという表現の方が正解な気もするのだが、



「ディオール!何をする、」


「お前は昔からグチグチ考え過ぎなんだ、もっと適当に考えろ、とりま飲め!酒を飲んで頭のなか真っ白にしろ!それから考えろ、」


「テキトーな事ばっかいいやがって、このノンベーが、酒くせーんだよ、」


「お前は少し適当なくらいがいい、過去の過ちを忘れろとは言わない、でもその過ちに押し殺されて優先順位をはき違えるな、」


「ディオールの言う通りです、貴方は貴方の道がある、罪滅ぼしにとらわれない行き方…それを見つけてみるのも一つですよ、」


「……、はぁ…、ご先達の意見痛みいるよ、」


「アルフィダも彼等の前では型無ですね、」


「……、うるさいよ、たくドイツもコイツも…」



悪態をつくアルフィダを他所にレイラはこれからの事を考えながら自分が取る行動、道先を思案するのだった、

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