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6話  シェイン対ガノッサ


話はフィーファがダークエルフの少年、レン・ニーズブルーと出会う数時間前、 ガノッサに敗れたシェインは自室のベッドの上で項垂れていた。


勝てるはずの戦いだったはずだ、ならどうして負けたのか、技術的にも瞬発力の面でもシェインはガノッサを圧倒していたはずなのに最終的な結果はシェインの敗北に終わった。

ガノッサは鈍重だった。

シェインの素早い動きにまるで付いてこれてはいなかった。

何度も彼の背中を取れたし何度も彼に剣を振り下ろす機会を作ることは出来た。

しかしシェインは一度もそれをしなかった。

いや、出来なかったと言ったほうが正しい。

格下と舐めて掛かったガノッサの剣気にあてられて、思うように攻めに徹する事が出来ずにいた。

こんなはずはないと体に鞭を振るうが思うように動いてはくれない。

自分に大きな隙が生まれている事は自覚出来たがしかしどうしょうも無かった。

明確にシェインの心がガノッサという格下に対して恐怖心を抱いていたからだ。


本当はわかっていた。


本気の殺し合いを俺は本能的に恐れたのだとシェインはよく理解していた、決闘はただの死闘へと変わり純粋な殺意にあてられ怖じ気づいたのだ。


殺意を相手から向けられ殺されかけたのは実の所、これで二回目だった。


二度目はガノッサとの決闘、二回目はフィーファを助けるためにモンスターに挑んだ事…ではない。


2年前の模擬戦。 そう、グライン先生が他界したあの日だ。


俺の兄弟子、先生のもう1人の弟子、2年前の事件を切っ掛けにこの村から出て行った、いや、逃げ出した卑怯者。


「アルフィダ……」


彼との模擬戦は先生の監視の下、行われた。

ただの実力勝負でしかなく互いに切磋琢磨し磨き上げた成果を見せるだけの稽古の延長線上でしかなかったはずだった。


アルフィダは俺より二つ上の歳で当時は14歳、俺は12だった。


今は16歳になってるはずだと考えてふとした事に気付く、そっか、俺は当時のアルフィダと同い年になってたんだなと、どうでも良いことだ。


アルフィダは寡黙で喜怒哀楽といった感情表現が乏しい奴だった。

いつもぼーっとしていて何が楽しいのか何が辛いのか悲しいのか…そういった事が分からない奴なんだと俺は当時思っていた。


だから俺がそばにいてやろうと生意気にも当時の俺は思っていたんだとおもう。


楽しい事は俺が教えてやればアルフィダも笑顔になるって…そう思って。

その日俺は師匠であるグライン先生に頼みアルフィダとの模擬試合をする事になってご機嫌だった、まちに待った日だったから気分が高揚していたんだ。


アルフィダは何考えてるか分からない奴だけど凄い奴だった。

先生の教えを次々と吸収してみるみる強くなっていって俺は付いて行くのでやっとだった。

だから自分でも自主練して少しでも2人に追い付こうと必死で…、この時の俺は外の世界に憧れなんて持つ暇が無いほど満ち足りていたんだ。


少しでもアルフィダに追い付いてアルフィダに認められたらアルフィダはきっと笑ってくれる、そんななんの根拠もない目標を胸にやどして、 最初は文字通りただの模擬試合だった、でも次第にそれは殺し合いに変化していった。

いや、実力が伴ってない俺からしたらあれは殺し合いですらない、 ただの一方的な暴力だった。


グライン先生もすぐにただ事ではないと制止の号令をかけたがアルフィダは剣を納めなかった。

アルフィダがふった剣は俺の頬に後が残る程の深い傷を残しそこからドクドクと赤い液体が流れ落ちてとっさに剣を俺は上方向に向かってふった。


あてるつもりは無かったし向こうもあたるとは思って無かったんだろう、だからかそれは不幸にもあたってしまった。


アルフィダの顔からも赤い液体が縦に流れていて赤い液体で濡れたその瞳は氷のように冷たくて、俺はあの時初めて殺意というものを体感したんだと思う。


殺されると感じたときには目を強くつむり痛みに耐えるために体を縮めて少しでも苦痛が紛れるように努めた。


だがいつまで経っても痛みが襲って来ることはなく不思議に思った俺は目をゆっくりと開いた。


そこには先生の、グライン先生の顔があった。

先生は大丈夫か?


と俺に対して問いかけ俺がはいと答えるとそうかと相槌を打って穏やかな表情になった。  

先生の胸からは銀色の棒が伸びていて棒は赤黒い液体で濡れていた。

棒の生え際からは絶えず赤黒い液体がドロドロと流れ落ちていてそれがとても良くない事だとわかっていてもあの時の俺にはどうにも出来なかった。


「あっ!?ああぁぁあ、?」


先生の胸から赤黒い銀色の棒がなくなったと思ったら次の瞬間にはそれはアルフィダの手に握られていた、いや、それは最初からアルフィダの手に握られていたのだ。


当たり前だ、それはアルフィダの剣で先生の胸を背中から串刺しにしたのだから、赤黒い液体が、いや、血が流れてもなんら可笑しな話ではない。 自分のやった事に今更になって理解が追い付いたのか奇声を上げると血に濡れた剣を投げ捨て何処かに走り去っていってそれ以来アルフィダとは会っていない。 あのままだったら俺はきっとアルフィダを憎んでいただろう。


復讐をしょうと考えていたかも知れない、でも俺はそうしなかった。


「いいか、シェイン、憎しみで剣を振ってはいけない」


結果的に先生のその言葉は遺言となった。


遺言となった先生の言葉があったから、俺は怒りに飲まれる事はなかった。


でもそのせいで俺はいまガノッサから向けられた殺意に臆して縮こまっている。


ガノッサを、いや、あの日のアルフィダから向けられた純粋な殺意を思いだして恐怖心に心が支配されている。


もし怒りや復讐心でこの恐怖を誤魔化せたならどんなに良かったかとそう思ってしまっている、 こんな考え方をしていたら先生に会わせる顔がない。

そんな感じでナーバスな気持ちになってると自室のドアをトントンと叩く音の後に


「シェイン夜ご飯食べるの?」


という母親の声が聞こえてきた。


俺はそんな母さんの問いかけに


「後で食べるよ」


と適当にかえしていたがなんと母さんは部屋に勝手に入って来た、思春期の少年の心情など知ったことかとお構いなしに。

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