3話 私を助けてくれませんか?
フィーファが語ってくれたグライン先生の話は俺の聞いた事のない物ばかりだった。
建国の英雄、そう呼ばれるに至った先生の武勇は広く伝えられ誰もが知る所となったらしくそんな先生の話が伝わって来ないこの村が如何に辺境に位置してるかを改めて思い知らされた。
列国五大国家群と呼ばれる大国間での諍いは五大国家の政治的力の大きさが拮抗している近年に置いて起きる事はなく、平穏を維持していた。
もっとも水面下では他国を出し抜こうと虎視眈々とその機会を伺っている国は多いらしく油断を許さない状態なのだとか、
まぁ俺はそう言う難しい話はちっとも分からなかったのだが重要なのはその五大国家の一つに数えられるラティクス王国の現国王、王が王座に即位する際に大きく尽力したのがグライン先生なのだという。
ラティクス王国は昔から完全な実力能力至上主義で代々優れた能力を持った者が王位を得る王選制度が取られている。
王が現国王に即位する際に友人でありまた戦友だったグライン先生の尽力は計り知れない物だったらしく半ばその武勇はラティクス王国民の間では伝説のように語り継がれているのだとか、しかしそんな王の盟友は王選後は姿をくらまし、この10年行方が掴めなかったという。
しかしあるツテからこの村に隠居生活を送っていると情報を掴んだフィーファ一行は一縷の望みを持ってこんな何もない村に足を延ばした結果は2年も前に事故で目的の人物が亡くなっているという真実を知るという結果に終わった。
あの一行がなんの目的でこの村に、グライン先生に会いに来たのかはわからない、
しかし俺はどうしょうもないほど興奮していた、
今までは相手などいなかった、
頭の中で作り出した架空の相手に剣を向けて振り回していただけのお遊びだったがさっきのは違った。
本当の命のやり取り、本当の戦い、本当の殺し合い。
少しでも判断を間違えば俺も、彼女も死んでいたのは間違いなく、今になって自分の行いが軽率だったことを痛感させられるがあの時はちっとも辞めようとは思わなかった、戦うのが楽しくて仕方なかったのだ。
今までの努力が無駄じゃなかった事が、意味があった事が証明されたような気がしてたまらなかったのだ。
「はぁ…」
ため息が思わず口から漏れ出る、ごちゃごちゃになった気持ちを静めるためにもシェインは自身が寝床としているベッドへと倒れ込んだ。
現在シェインは自分の家へと帰ってきていた。
あの騒動からすでに数時間程の時間が経過していた。
村長や村の大人達が大慌てで小さな村の中を走り回る程の大騒ぎとなっていたが子供であるシェインがその渦中に加わることは許されず家に強制退去させれた形だ。
フィーファも子供なのにこの扱いの差はなんだと憤りを感じるもこの騒ぎの中心には彼女がいる事も理解している。
彼女と自分、同じ年代の子供でも立ってる境遇の違いには歴然とした差がある、
どれだけ背伸びしても所詮は子供でしかない自分の非力さが理解できてしまうのがたまらなく嫌だった。
そう、嫌なのだ。
もう置いて行かれるのは、
先生に、
兄弟子に、
実の父に、
付いていけない自分が嫌なのだ。
うだうだと考えていたシェインは息抜きに家の外へと出た。
すでに日は落ち空には大きな月が暗闇を照らしている。
灯りなどない村の夜は真っ暗で一面が闇で覆われている。
それでも勝手知ったる村の中ならばなんの問題もなくシェインは師の墓の前までやって来る事が出来た。墓の前にはすでにモンスターの死体はない、すでに焼却処分された後でこの場所はもとの静寂を取り戻している、
そんな場所には先客がいたらしく手のひらから光の球のようなものを生み出し、闇を照らしだしている。
光に照らされた彼女は幻想的で金色の髪が光を浴びて黄金色に輝いていて先ほども彼女に抱いた妖精のような魅力に拍車をかけていた。
「魔法って便利そうだな、」
「シェイン…?こんばんわ」
フィーファの手のひらから生み出される丸い光は彼女の体内魔力、マナによって生み出されている。
彼女にとっては初歩的な技術なのだろうが魔法と言った技術を見た事がこれまで無かったシェインにはそれなりに新鮮な物にみえた。
「アンタは…こんな所に居て大丈夫なのか?」
「フィーファですよ?シェイン?」
「あっ、スマン…」
「ふふっ…眠れないので皆に内緒で抜け出して来ました。」
「いいのかよ…それで」
「ここにくればシェイン、貴方とまたお話が出来ると思っていました。」
「俺と?」
シェインの問いかけに対して少しの間の後フィーファはシェインの顔をジッと見つめるとおもむろに口を開いた。
「はい、シェイン…私を助けてくれませんか?」
そう言葉にして
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