20話 醜悪な3人
ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!
なんなのアイツなんなのアイツなんなのアイツ!
数刻前の出来事を思い返し聖女フィオナの頭の中はある少年の何気ない疑問への問いかけでいっぱいであった。
いままで彼女の内面を見透かすような、それこそ土足で上がり込んで来るようなマネをした人物などいなかった。
皆彼女の作り笑い、笑顔という名の仮面を彼女の本質、聖女という肩書どおり、清く清廉潔白な少女と思ってきた。
実際は他者を蔑み、貶し迷えるものを嘲笑するろくでなし、愉悦に塗れた精神性をもったものなのだが
もちろん彼女に問いかけた少年、シェインはひと目でそこまで彼女の本質にたどりついたわけではない、
ただ彼女の態度と言動に違和感を感じたからに過ぎないのだが、
「どうしたのだ?聖女フィオナよ?そんな思い詰めた表情をして?」
「え?」
「先程から心ここにあらずといった感じぞ?」
フィオナの眼の前には肥え太った醜悪な風防の中年男性が過度に装飾された派手な椅子、一般的には玉座と呼ばれている物に座りコチラを見下ろしていた。
その者に対しフィオナは素速くいつもの人好きする愛らしくも可憐な表情をつくりごめんなさい、なんでもないんですと答えた。
フィオナが相対している人物はこの国、マグラーナの現国王その人である。
もっとも周囲からは無能であることが露見しておりその威厳は地に落ちて久しい。
フィオナの周りにはそれぞれ勇者アノス、姉で女剣士のアリエス、勇者アノスの妹で魔術士のセシリアがそれぞれ控えていた。
現在この勇者パーティーは王に呼ばれ任務終了の報告のついでに王からの招集に玉座の間に訪れていた。
本来ならめんどくさがりのアノスは王の招集になど行かずアリエスやセシリアとよろしくやっていたところだが現在は報酬の受け取りという目的もあって仕方なく足を向けていた。
本来ならば王に対して不敬に過ぎる勇者アノスのこの態度だが王は勇者に逆らえない、何故ならば今国が存在出来ているのは勇者アノスの存在あったればこそだからだ、
国の実権は実質勇者アノスに掌握されており、王はその実お飾りでしかない、国の体裁を取るため王と言う存在が必要なだけで勇者の名声がギリギリの所で国の崩壊を食い止めている。
そんな崖っぷちな状態にあるのが今のマグラーナと言う国の実態であった。
「うおっほん!…よくぞ参られた、勇者諸君、此度の任務実にご苦労…」
「そーいうのいいから速く報酬出してくださいよ、コッチは貴重な時間割いてアンタの下らない話しに付き合ってやってるんですよ〜?」
「ぬがぁ!?ぐぬぬ〜、すっ済まなかったな、勇者殿、だが報酬の前に是非貴殿にも手伝って欲しい案件があってな?」
「報酬も貰ってないのにまた次の仕事っすか?アンタ俺の事舐めてます?別にいいんすよ?コッチは?」
「まっまってくれ!まずは話を聞け!?ソナタ等もこの件には関わっている、2年前レスティーナに派遣した使者が標的を伴って帰国したと知らせをうけている、この意味、聡明な勇者一行ならわかるな?」
「はぁ2年前?そんな昔の事しらねーよ、いいから速く金出せよデブ!」
「ぬがっ!?きっ、貴様!王であるワシに向かってデブだと!?」
「なんだ?怒ったのか?豚の分際で?」
「きっ貴様〜」
肥え太った顔を醜悪に歪ませ真っ赤に膨れ上がった茹でダコの如き表情の王は勇者アノスを睨みつける、
それをひょうひょうと小馬鹿にした態度を取るアノス、
今はこんな茶番に付き合ってる気分ではないと聖女フィオナは内心毒づく。
「王様、ごめんなさい、怒らないであげて、王様は一人で国を支える立派なお方だってフィオナは誰よりも知ってますよ!」
「む!聖女殿!!」
それまで茹でダコのような形相だった王はフィオナの言葉に鼻の下を伸ばし直ぐ様だらし無い顔になる、
そのだらし無い顔に辟易としながらフィオナは話を進める
「王様、使者ってレイラの事ですよね?2年前にレスティーナのお姫様の信頼を得るために派遣したスパイの」
「うむ!たしかその様な名であったかな、流石は聖女殿だ、よく覚えていらっしゃる。その者が今しがたレスティーナの姫君を伴い帰国したのだ」
「まぁ!」
低度の低い話にウンザリしながらも多少は実りのある話題が飛び出した。
2年前に王命令とアノスの洗脳という二段構えでの指示のもとレイラはレスティーナへと派遣された。
当時のアノスは自分の能力、洗脳の魔眼の力に酔いしれ様々なことに首を突っ込んでいた、その一つがこのレイラなる人物の件だ。
レイラはこの国の騎士団長が有する孤児院の孤児で当時若干13歳という若さで傭兵になった少女だ、
燃えるような赤髪と目が特徴的な少女だが当時のフィオナとアノスには小汚い浮浪者という印象しか受けなかった。
しかし幼いながらに養父である騎士団長からなかば洗脳教育ともいえる教育をうけており、マグラーナ国に強い愛国心を持っていた。
洗脳能力で何処までやれるのかを遊び感覚で実験していた当時のアノスはマグラーナ等という寂れた国だけにとどまらず次の標的をレスティーナの支配に方向転換しその国お姫様を懐柔する方向で動いていた。
まぁお姫様なんだから凄いかわいいんだろうという、どうしょうもない思いが動機なのがなんとも締まらないが、
ただ、孤児上がりの傭兵などという小汚い存在が姫とお近づきになれるわけないだろと当時はアノスの思いつきを馬鹿にしていたがどういうことか、今日の成果に繋がってしまった、わからないものだ。
予想以上にアノスは頑張りレスティーナ側にレイラを推薦出来るよう洗脳能力をフルに利用して彼女を推薦したし、レイラも元々努力家な所があり皆の期待に答えたいと努力したようだ。
そしてなにより洗脳の効果でアノスに強い恋慕の気持ちを植え付けられており、彼の期待に答えたい一心で研鑽をつんだようだ、洗脳による偽りの感情だとしっている分、実に滑稽で面白かったので彼女の事はよく覚えていた。
「レスティーナの姫フイーファ譲を利用す…オホン!協力願えれば我が国も以前の活気を取り戻せよう。
そのためにも勇者殿、そなたには是非協力して彼女の善意ある助力を得るための手助けを願いたいのですよ、出来るのでしょ?貴方なら?」
今はっきりと利用するとこの豚言ったなとフィオナは内心でため息をこぼす、
私の前で善人ぶって気に入られたいという浅ましい考えが透けて見える、
実に気色悪いおっさんだ、とも、
「思い出したぞ、そうだそうだ、そうだった、フイーファ姫といや美人で有名だしな、噂じゃ、フィオナに勝るとも劣らないって話だし、くく、俺のハーレムに加えるに足る人材だよな、」
「………。」
(相変わらず一言多いヤツだ、洗脳なんてセコい事しないと誰ともまともに接する事も出来ない臆病者のくせに、私を下に見やがって…!)
「いいよいいよ、待っててねフイーファちゃん、今すぐ俺のハーレムに加えて沢山可愛がってやるからな〜くひひふへへへ」
醜悪は見た目に醜悪な欲望、醜悪な本性をもつ醜悪な3人は互いを見下しながら己の欲望にどこまでも素直に行動を開始した。
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