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ユーディキウムサーガ 父親に捨てられた少年は好きになった少女のために最強の剣士を目指す  作者: ムラタカ


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18話  荷物持ちのアレク

アレクは両手に荷物を持ち背に大きなカバンを背負っている。そしてそれ等をみんなのために即時利用出来るよう万全の体制を常に心がけている。

そんなアレクの眼前にはゴブリンやオークといった低級モンスターの死体数匹分とそれ等を処理した少女達が人仕事終えた達成感からか互いを労っていた。



「皆ご苦労、これで依頼は達成されたな、じゃとっとと帰ってお楽しみの続きとしゃれこもうぜ〜」


「も~アノスったらエロい事ばっかり考えてる〜!しょ~がないんだから!もう、」


「アノスお兄様…たまにはセシリアも可愛がってくださいね…」


「ふひひ、心配するな、妹だからって俺は遠慮なんかしないからな、美女はみんな同列に愛してやるさ」


「お兄様!素敵!!」


「もう!アノスったら」


「そういう事だからお前はモンスターの処理や武具の整備をちゃんとやっておけよ?それくらいしかお前には取り柄ないんだからさ!たのむよ?に・い・さ・ん?くくっ」


「はぁ、アンタホントにトロいわね、真面目にやってほしいわね、ホントに…こんなのが私の婚約者だったなんて反吐がでるわ!」


「愚兄様?お願いですからアノスお兄様の邪魔だけはなさらないで?愚兄様の分際でアノスお兄様の迷惑になるなんて万死に値しますわよ?」



しかしアレクにかけられる言葉はいつだって感謝の言葉ではなく罵倒だ、彼はいったいいつから罵倒を浴びるのが当たり前になってしまったのかわからない。

昔はよく自分に懐いていたかわいい妹のセシリア、

幼いころからずっといっしょで大きくなったら結婚しょうと子供ながらに約束した幼馴染で最愛の女性アリエス


ふたりはまるで家畜の相手をするかの如く、いや、家畜にだってある程度の敬意を払っている事を鑑みるとそれ以下、正しくゴミを見るような視線を向け蔑んでなじって罵倒を浴びせる。


最初は二人にたいして何か気に触るような事をしたのかと思い必死に謝った、だが次第に二人が明確な意思をもって自分を険悪していると理解した。


また俺にたいして険悪的な感情をもっているのは幼馴染と妹の二人だけではない、母さんも村のおばさんも隣のおねぇさんもみんな俺に優しかった人達はある日を堺に自分にたいし露骨なまでの悪感情を持つにいたった。


村の男衆も最初の内は俺の事を庇ってくれていたがいつからか周囲の女性達に同調して俺を罵倒し陥れるようになっていった。


そんな俺にとっての希望が幼馴染であるアリエスの一個下の妹フィオナだった。


フィオナは幼い頃から類稀な魔力を持って生まれた天才児だ、聖魔法に対して高い適性をもっていた。


このため聖女として皆から期待されており、その重圧からか、いつも小さな体で必死に毅然とふるまっていた。


「アレク兄さん大丈夫ですか?私片方もちますね。」


「あぁ、ありがとう、でもいいよ、そんな事させたら弟が怒るからね、」


「でも、そんな量を一人で持って歩くのは…」


「はは、ホントにありがとうフィオナは優しいね、」


「そんな事は…」


「おい!そこでなにしてるんだ!?」


ふたりの間に割って入ったのはサラサラの金髪に碧眼の青い目、整った顔立ちのイケメンの優男

勇者アノスだった。

アノスは聖女フィオナの肩に気安く手を置くと彼女の耳元に口をやりながらも器用に目を見ていった。


「こんなヤツほっといて俺の所に来いよ、コイツは荷物運ぶ事しか脳のないゴミなんだからさ、」


「…そうだね、アノスと「はい!アノス様!」いってお……」


アレクが話し終わるより早く被せるように聖女フィオナは勇者アノスに満面の笑顔で答える、

いままでの困り顔を満面の笑みに変え彼女はアノスと腕を組んで歩いていった、あっさりと、


「ははは、まいったなこりゃ、はは…、」


四人とも昔はあんな風では無かった、皆仲良くともに笑い泣き、喜び、悲しむ時もずっと一緒だった。

いつからこんな風になったのか、好きだった幼馴染は今では俺の事を口汚く罵るだけになり可愛かった妹は汚物を見るような目を向けるようになり、フィオナは形だけの優しさで取り繕う存在になっていた。


何よりかわったのは弟のアノスだろうか、

いつも足をくの字に曲げて蹲り周りの目を気にしてキョロキョロと忙しなく目をギョロつかせる挙動不審な弟、その態度が常に他者イラツカせ罵倒をはかれていた。

そんな奴を庇い励ますのが俺の役割だった、傷ついた弟を励ますのが兄の努めだと思って、

いつか弟から言われた言葉。

「兄貴にはわからない!俺の気持ちなんかが!」

今ならわかる、…気がする


アイツは惨めだったんだろう、

なんでも出来る兄と無能な自分、その対比をあからさまに囃し立てる両親や村の連中。


そんなアイツは今や皆から勇者と呼ばれ担ぎ上げられている。

称賛と切望を呼び畏敬の念を持って勇者と呼ばれ慕われている。

かつてのアイツは何処にもいない、

俺の記憶のしぼりかすの中にしか、


どうしてこうなったのか、俺の何がいけなかったのか、

考えてもわからない事を考えるのは無駄だと悟るのに時間をかけ過ぎた、お陰様でいらない希望にすがったせいでそれに裏切られる度に落ち込んで泣いて吐いてまた縋って、終いには何もかも諦めたんだ。






「アイツが勇者ってやつか、思ってたよりひょろっちい奴だな」



そうして一人で打ちひしがれていると誰かが話しかけて来た。


「そこのあんた、いいのか?行っちまうぞ?アイツ等?仲間なんだろ?」


「え?あぁ、いいんだよ、彼等は俺が荷物をしっかり管理してればそれ以外は興味ないからね、」


「ふーん、薄情な奴らなんだな、仲間なのに、」


「仲間、仲間か…」


「仲間じゃないのか?」


「どうなんだろうね?俺にもわからないよ、」


「つまり暇なんだな?だったら俺と少しつきあえよ?」


「え?」


「付き合えよって言ったんだよ?耳悪いのか?」


「あっ、いや、どうしてかなと思ってさ、」


「いいじゃん、暇人同士仲良くやろうぜ、」


「僕は別に暇なわけじゃ…」


「だー!!ごちゃごちゃと!いいからつきあえよ、」


そういって少年は即席で作ったような手製の木刀を手渡した。


「これって?」


「見て分からないのか?木刀だよ、ちょっと雑だけどな、」


「何故こんな物を?」


「アンタガタイがガッチリしてるし腕ぷっしもよさそうだし、強そうだと思ってさ、」


やたらとグイグイくる少年だなというのがその少年に対する第一印象だった。

こっちがたじろいでる隙に距離を詰めてくる、そのバグった距離感についつい押されている

剣どころか木刀すら握ったことなんてなくこの少年の厚かましさに驚かざる負えない、

しかし不快ではない、むしろ好意的にすら感じられる


いついらいだろうか、これ程純粋な態度でせっしてもらったのは、最近はいや、ずっと前から悪意のみが向けられる毎日に辟易としていた。


気付けばアレクは少年から木刀を受け取っていた。


「ド素人なんだけどかまわないかい?」


「鍛えてやるよ、」


「それは頼もしいね、」


そういってアレクは少年に木刀で切りかかった

木刀なので実際の殺傷力はない、だからアレクは精一杯少年と打ち合った。

カン!カン!と子気味良い音が空に反響する

アレクが打ち込めば少年はソレを受けまた少年も打ち返してくる。

言うだけあって少年はとても強く、体格差などまるで少年に対してなんのハンデにもなっていなかった。

久しぶりだった、荷物運び以外で汗を流すのが、腕が痺れ足が痛くなっても少年に向けて木刀を振り続けた。

やがて日が暮れはじめ周囲が茜色に染まり始める、

こんな時間までやっていたのかと驚かされる、ハァハァと息は上がり汗だくで酷い有様だ、

しかしここ最近感じる事の無かった充足感を全身に感じていた。


「ありがとうとても楽しかったよ、」


「そっか、そりゃ良かった!」


「君はすごね、息が全く乱れてない」


「素振りは日常的にこなしてるからな、兄ちゃんも思った通り筋がいいな、いい剣士になりそうだ」


流石だと思った、あれだけ打ち合って少年は対して疲労している様子はない。次第にアレクの中で少年に対する興味が湧き上がる


「今更だけど俺の名前はアレク、知ってると思うけど勇者パーティの荷物持ちだよ、」


「俺はシェイン、最近この国に来た旅人だよ、」


少年、シェインはそう答えた。

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