17話 マグラーナの勇者アノス
マグラーナ王国とはレスティーナ王国やラティクス国、近年イノセント国も加わった列国五大国家の一つに数えられる大国である、
そもそも列国五大国家とは100年前、200年もの長期に渡り大陸全土を支配し続けた恐怖の魔王ハイゼンテールを打ち倒した5人の英雄によって基礎が作り上げられた国家群である。
そしてその五英雄の子孫が現代の列国五大国家の王族として現在のハイゼンテール大陸を統治運営している。
ちなみにハイゼンテール大陸の由来はそのままかつて大陸全土を支配した帝国、魔王の名がそのまま付けられている。
話をマグラーナにもどすがマグラーナ国はかつてハイゼンテール帝国が有していた化石燃料が大量に出土する鉱山地帯から得た資材により富を築いた国である、
無論マグラーナが大きく発展したのはそれだけが理由ではなく当時の統治者や先代国王の手腕、その国王を支えた臣下や民たちの成果であったのは言うまでもない、
しかし近年はその需要も底を付き始め数年先には今までのような売上は見込めないとの結果が出ていた、
無論この様な状況に対しても先代国王は対策を講じていたが先代国王が病に伏せ自身の王位を息子の王子にと譲り渡したのがこの国の不幸の始まりだった。
現国王となった男は自身が念願の王になった事に浮かれ喜びその財で自由を謳歌した、無駄に金を食い潰し異を唱えた者から爵位や立場を取り上げ黙らせた。
無論、政治学や、国家運営学など学ばなければいけない、なさなければならない王としての努めは他の者に丸投げ、絵に描いた様な無能、愚王の誕生となった。
結果、国の衰退は加速度的に速まり民は飢え貧困に喘ぐものも多くなり、貴族社会内では上下関係がより浮き彫りとなり上のものが下の者を見下す形がより浮き彫りとなり、先代国王が統治していた頃とは国としての質もなにもかも異なる衰退国と成り果てていった。
現国王も流石にこのような事態に直面し焦り慄くも時すでに遅くあとは緩やかに国が自壊するのを待つばかりとなった。
普段は偉そうにふんぞり返っている現国王もこの時ばかりは血相を変え家臣達に泣きつくも既に他国に移動を決めた者、国と運命を共にする覚悟を決めた者等など誰もが国の存続を諦めていた。
そんな時一人の男が現れたのだ
その男は恐るべき手腕で国を立て直して見せたのだ。
誰もが不可能と思えた無理難題を多くの人々の手助けを得て次々と、
男が声をかければそれに従わないモノはいないといっても過言ではないほどの優れたカリスマ性を持つ。
やがて人々から多くの称賛を呼びいつしか皆彼の事を"勇者"とそう呼ぶようになった。
勇者の名はアノス、
彼はマグラーナ領土の辺境で生まれ育った。
一つ上の兄と一つ下の妹の3人兄弟、幼い頃はまだ兄弟妹間での確執もそこまでなく傍目には仲の良い兄弟妹
だったことだろう。
しかしアノスは歳を重ねる毎に兄と妹との確執を如実に感じていく事になる
何事もそつなく熟す天才肌の兄、その兄にのみ愛嬌を振りまく妹、妹などは露骨に兄とアノスを天秤にかけ自分を見下していた、駄目な方のお兄様と
アノスは兄と比べるべくもなく要領の悪い凡人で兄はそんなアノスにも優しく決して見放す事はなかった。
しかし兄好きの妹からすればそれが面白くなかったのだろう。
妹はさらにアノスへのあたりを強め彼を強く罵った、
実の妹に貶められる苦痛、優秀な兄と比べられ勝手に落胆される苦痛、根拠もなくお前ならできるさと無責任な事を言う兄への増悪、そのくせコチラを哀れんだ目で見てくる兄に対する増悪、
彼の中はいつしか苦痛と増悪でいっぱいになって頭がオカシクなりそうな時だった。
左目が激しく痛み目玉が破裂しそうな激痛を感じ周囲だけでなく自分の体にまで自分を馬鹿にされるのかと慟哭する。
痛みか悲しみかどちらか、もはや解らないがとにかく涙が溢れて止まらなかった。
しかしこの激痛が彼にとっての分岐点であり新たな日常、人生の再スタート地点となる。
彼の目に宿ったのはシェイン達が推察した通りの代物、他者の意思、心をねじ伏せる洗脳の魔眼、それが彼にもたらされた彼のみの力だった。
最初そんな力が自分に発現したなど想像だにしていない彼は痛む目にイライラしながら日常を過ごしていた、しかし憤慨がたまりいつものように妹から嫌味を言われた時妹に勢い任せで言ったのだ、調子に乗るな!俺に口答えするな!
すると妹は以前までの高圧的な態度は鳴りを潜め口答えもしなくなっていた、
最初は違和感を感じる程度だったがあまりにも大人しくなった妹に持つ違和感は相当な物で試しに俺に従え、俺を敬え、尊敬しろと言えば妹は今までの態度が嘘のように態度を変え従順な奴隷のようになった。
そこでアノスは核心へと至った、自分はとても凄い力を得たと、
そこからは早かった
兄に思いを寄せ、また兄も恋焦がれている幼馴染みの少女の心を支配し両思いの二人の関係をこわしてやった。
またその幼馴染みの妹で周囲から聖女と呼ばれてる娘の心も支配し、支配する範囲を村から町に、町から城下街へと少しずつ広げていった。
政治的影響力の強い貴族やその血縁者にも手を出した。
その過程で色々と自分に都合よい環境を作り出すための政策をやっている内にアノスを勇者と呼び称え称賛する者達の声がマグラーナ中に広がって行く事となった。
こうして勇者アノスを中心とする一行がマグラーナ内で浸透していく一方でアノスはあることを危惧していた、彼は武芸には何一つ秀でた才能を持ち合わせていない、勇者と呼ばれる存在がまともに戦えないド素人と他人にしられてはいけない事、
彼の力、洗脳が人間の女にしか力を発現出来ない事、
そして何より自身のアイデンティティである洗脳能力が他人にバレる事
この3つが露見することをアノスは恐れている。
しかしアノスは知らない
勇者が洗脳能力を持っているかもとあたりをつけ行動している連中の存在を。
もしこの小説を読んで少しでも面白いと思はれたなら、ブックマークや、↓の★★★★★を押して応援してもらえると幸いです、作者の執筆モチベーションややる気の向上につながります、お願いします




