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ユーディキウムサーガ 父親に捨てられた少年は好きになった少女のために最強の剣士を目指す  作者: ムラタカ


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16話  マグラーナへ 

シェイン、フィーファ一行は馬車に揺られていた。


御者席にはアルフィダ、レイラが座り手綱はアルフィダが握り馬車の操作を担っている、

客席には護衛と言う名目でシェインとフィーファが相席している。


馬車はラミュアが提供してくれたものだがイノセントの家紋等は掘られおらず多少値の張りそうというだけの一般的に売られている馬車だ、

これから敵国といって差し支えない場所に赴くのにイノセントの家紋などがある馬車に乗れば相手国に要らぬ警戒を持たれるため当然の措置だろう。


ちなみにガノッサとは既に別行動しており彼等はレスティーナ方面へと向かっていった。

レスティーナ国内にはレイラ以外にもマグラーナのスパイが多数侵入しているのは明らかでそのスパイから逃れるために国から逃げ出してきたのが事の始まりだ、


既にスパイの根城とかしたレスティーナは安堵できる場所とは言い難くフィーファ自身何度か危険な目に会ってきた。

昨日までの自分は同盟国のマグラーナが敵意を持っているなど考えもしなかったから当然だがレイラが自分を拉致するために2年も前からその機会を虎視眈々の狙う尖兵でそのレイラすら全容が掴めていない正規のスパイがフィーファの家であるレスティーナ国内に跋扈しているなど考えただけでもゾッとするものだ。


今回ガノッサはその事実確認とスパイの洗い出しのために帰国するとの事だが一騎士にそこまでの権利などはなくスパイの洗い出し自体密やかに行う必要があるだろう、


「ははは!コレではどちらがスパイかわかりませんな、まったく」


と冗談交じりに笑っていた。

ガノッサとて不安なのだろうと思うがそれをフィーファに悟らせないやうに明るく振る舞っているのが見て取れた。


「おじい様はどうしているのでしょうか、」


「え?」


馬車内でおもむろにフィーファがつぶやくがその独り言はシェインにも聞こえていた。


「あ、ごめんなさいです、いえ、この事態をおじい様は何処まで把握しているのかなとふと思いまして、」


「おじい様ってたしかレスティーナ国の王様か…?」


「はい、そうですね…」


「そう聞くとやっぱりフィーファってお姫様なんだな、」


「ふふふ、そうですよ?もっとひれ伏してうやまってくれてもいいですよ?」


「ちょーしにのんな!」


シェインの発言にふふふと笑い流すフィーファ


「おじい様はとても厳しいけどとても優しい方なんです、お仕事で忙しくても私の事をよく構ってくれて、私のワガママは何でも大抵は聞いてくれた、友達が欲しいと言えばレイラを連れてきてくれたし、どんなに高価なものでもなんでも、プレゼントしてくれた、でも」


「でも?」


「けっして城の外には出してくれなかった」


「王族主催のパーティーや催し、諸外国との交流パーティー、催しは沢山あったらしいですけどおじい様はそれ等への参加を決して許してはくれませんでした。城下町へ遊びに行くなど以ての外、そんな事を言えばおじい様は普段の優しいお顔を真っ赤にして人が変わったみたいに怒り出すから私はおじい様を怒らせないようにおじい様のご機嫌取りをするようになってて、気付けば私は唯一の家族を避けるようになってたんです。」


「唯一?」


先程からフィーファの話にシェインは違和感を感じていた、おじい様という家族の話はよく出てくるものの両親、母親や父親の話はまるで出てこない、そのことを避けているのか、あるいわ、


「私にも親がいないんです、父親も母親も、物心ついた頃から私には親の思い出というものがありません、こんな事をいったら失礼なのは解っているつもりなんですが、お母様のいるシェインが羨ましかったんです、」


「そっそうだったのか…、」


「はい、両親の事を聞いてもおじい様は話してはくれないし、しつこく聞くとまた怒り出すからおじい様には聞けない、まぁ…困ったものです、

でも狭い城内にずっといれば嫌でも噂の一つ二つ耳に入ってくるものですよ、」


「聞いてもいいのか?」


「話しだしたのは私ですし、シェインには知っておいて欲しいと言うのもあります、むしろ聞いてくれるんですか?」


「途中で止められたら気持ち悪いからな、それに成り行き状仕方ないけど俺だけ色々話してるのにそっちは話さないとかずるいしな、」


「フフ、子供みたいですね、」


「うっせっ!」


心底楽しそうに笑うフィーファに毒気を抜かれた様な気持ちになるシェイン、フィーファもシェインとは気を使わなくて良いためか話す気も無かったことをペラペラと話してしまう、こんなに穏やかな気持ちになれたのはいついらいか、思い出せないけど彼がいてくれたなら自分はどんな事でも出来てしまうと、そんな気持ちになってしまう。



「私の父親に当たる人物は他国の王子だったそうです、レスティーナの当時お姫様だった私の母親と王子だった父親の結婚、国と国、親と親、大きな2つの権力のもと二人は結ばれました、所謂政略結婚というやつですね、そしてそんな二人から生まれたのが私です。」




子供ならではの鈍感さからか、政略結婚から生まれた子供がどんな思いを抱くかそんな単純な事に気づけないシェインは場違いにも政略結婚ってなんか大人な感じだな、と愚かしい感想しか抱けなかった。

だからだろう、次にフィーファがはなった言葉が自分がいかに子供であるか、いかに彼女の苦悩を理解してないかが理解出来てしまいシェインは数瞬前の自分を殴り飛ばしたくなる。

  


「多分ですけど私は両親から必要とされなかった子供なんだと思うんです

だから二人にとって必要ない私をおいて自分達だけで何処か楽園の様な場所にいったのかと漠然と思ってました、普通はいつか両親が迎えに来てくれるとか都合のいい事を考えそうなものですが不思議とそんな風には全く思えなくて…、」



「でも私の聞いた噂はそんな生優しいものではなくて、もっと悲惨なものでした」


「悲惨って、どう悲惨なんだよ?」


「お母様がお父様を殺すために刺客を差し向けたとか、お父様がお母様に毎夜酷い事をしてて、お母様がお父様を刺殺しただとか、お父様がお母様を殺してしまってその事を隠蔽するために国同士が共謀してるだとか」


「……いや、無茶苦茶だろ、そんなの…」


フィーファが話した両親の噂話は想像以上にどうしょうもない、ろくでもない話ばかりでシェインはフィーファにかける言葉が見つからなかった、

自分の親のこんな話を幼い頃からきかされて、真実がどういった話かもわからないんじゃ実の親を信じるなど出来なくなって当たり前だ、


それでも一つだけ確実に理解出来る事がある、それは片親であっても親のいない辛さを知っているシェインだからこそわかる事だ、

フィーファは同情して欲しいわけでもましてや理解してほしいワケでもない、ただ話を聞いてほしいだけなのだ。


「結局今も真相はわかりません、でも一つ確かめたい事があります、お母様はお父様と結婚する前おそらく好意を寄せてた殿方がいた、噂ではない事実としてその殿方はお母様の信頼を得てもっとも近くて遠い立場に就いたそうです、即ちお母様の近衛騎士に、」


「王族と一介の騎士が結ばれる事はありません、だからお母様はその方を自信の近衛騎士に選びました、その際お母様は宝剣をその方に贈与しています。」


「宝剣?」


「レスティーナには代々から王族がもっとも信頼を置く近衛に宝剣を贈る風習があります、もっとも宝剣は全部で4つ、即ち王族から選ばれるのは四人のみとなる、お母様がその方に贈ったのは4つの宝剣の一つ“歓喜の剣”」


「歓喜の剣……、」


「はい、宝剣は4つの人の感情から命名されてるらしいですが何故そんな名前の付け方をしてるのかは私も良くはしりませんけどね、」



「なんでそんな話を俺にする?」


「似てるんです、私が資料でみた物と、シェイン、貴方が持つその剣が、」


「っ!?コレが?」


「はい、」


「ま、待ってくれ、何かの間違いじゃないのか?これは母さんから貰ったものだ、そんなだいそれた物じゃないと思うけど…」


「シェインのお母様に?」


「おう、ってもしかして俺の母さんがフィーファのお母様?」


「そんな訳ないでしょ、城にお母様の肖像画がありますから会ったことはなくもと顔はしってます、シェインのお母様も綺麗な方ですが間違いなく別人ですよ、」


「そうか、」


「私が気にしてるのはシェインのお母様が何処でソレを手にしたかですかね、」


「この剣か、」


シェインが母親であるクリスから貰い受けた剣、

たしかにずっと疑問ではあった、何故母さんがこんなものを持っているのか、どうして俺にコレを持たしてくらたのかも、


「この剣はもともと俺のオヤジが持ってた物だって聞かされてる、出ていく時に金の足しにしてくれって言って出ていったって、母さんが言ってた、」


「シェインのお父様が、その剣の本当の持ち主、じゃあ、お母様の思い人って、」


パズルのピースがハマったような気がした

顔しか知らない、抱いてもらった記憶も話した記憶もない母親の思い人

それがシェインの父親なのかもしれないのだと


同時にその確信はシェインの中にもあった

自分と母親を置いて消えた父親、何処で何をしてるのかも、生きてるのかも死んでるのかもわからない、今まではそれでも良かった、わからない以上想像の余地は沢山あったし、自分に都合よく父親像を作る事も出来た。


しかしこれは話が違う、フィーファが話した事を踏まえて推測するならば父親は自分と母さんを捨てて他の女の元に行った事になる。

オヤジの視点から見れば長年恋してたお姫様と駆け落ちして幸せを掴んだサクセスストーリーになるんだろうがなら何故俺がいる?母さんはどうなる、

見過ごせる訳がなかった。


「とりあえず今はその事よりもマグラーナの事を優先しましょう、考えても答えの出ない難題より、早急に答え合わせが必要な議題が私達にはありますからね、」


「あっ?あぁ、そうだな、それもそうか」



フィーファはこの話はこれでおしまいと言わんばかりにばっさりと話題をマグラーナに方向転換した、

シェインもその露骨なまでの話題反らしに難癖を付けたい気持ちもあったが考えても仕方ない事より優先しなければならない事があると考えを改める事とする。


「そういえば勇者だったか?マグラーナには愉快な奴がいるんだな、」


「笑い事ではないですよ、レイラの話が本当なら勇者は人を操る力を持っているらしいですし、もしそれが本当ならマグラーナの実権は実質勇者が握ってるといっても過言ではないでしょうし、」


「勇者って呼ばれてる割にしては狡い奴だよな、」


「名声通りの人なんてほんの一握りでしょう、人には多かれ少なかれ裏の顔があるのでしょうしね、」


「嫌になるな、」


そんな話を二人がしているのと同時刻、御者席の方でも話をしている二人がいた、アルフィダとレイラだ、


「まさかお前と旅をする事になるとは思いもよらなかったよ、レイラ」


「それは私も同じですよ、アルフィダ様、」


「様は止めろよ、むず痒くなる、」


「そうはいきません、自由騎士とはいえど貴方は騎士だ、一介の兵が対等に話していい相手ではない、」


「そんな事気にしてる奴、今日日いないぞ?そもそもお前はお姫様の護衛兵だ、ソコラの騎士より位は高いんじゃないか?」


「護衛、ですか、今の私にとって今の立場は何なのでしょうね、フィーファ様を騙し、今度は国を相手に騙そうとしている、私は何がしたいのでしょうね?」


「そんなん俺が知るわけ無いだろう?自分の事を決められるのは自分だけだ、自分が正しいと思った事をやればいい。」


「貴方は凄いですね、それほど歳もかわらないのに、私と大違いだ…、」


「買い被りだ、何処にでもいるガキだよ、俺は、」



御者席に沈黙がおとずれる、アルフィダは無言で馬の手綱を握っていたがしばらくするとレイラにおもむろに問いかけた。



「そういえば勇者とはどういった奴なんだ?俺も色々マグラーナの情報を仕入れているはずだけどあまり目立った話を聞かない」


「私もよくは知りません、王から絶大な信頼を得ているのだとか、かなりの待遇を受けてるイメージですね、ただ、カリスマというのでしょうか?不思議な魅力があるといいますか、私も彼からの命令ならどんな事だって聞きたいと強く思っていましたし、まぁ今は何故あそこまで思っていたのか解らないのですが、」


「ますます洗脳じみてきたな、人の心を自由に出来るのだとしたら、厄介なんて言葉では足りないな、」


「それより私はあのイノセントの長、ラミュア女王の方が気掛かりですよ、私には彼女が不気味に映ります」


「でも凄い美人だったな、」


「………、」


「そんな目で見るなよ、怖いな〜」


アルフィダの軽いジョークにレイラは人睨み。

男というのは本能的に異性に対してどこまでも素直な生き物だ、

アルフィダも男の子である以上そういった性質は当然持ち合わせているが今の場合、レイラをからかうため技とフザけてみせた


レイラは生真面目で向こう見ずな性格だ、曲がった事が嫌いでこうと決まった事は守り通す、無論下ネタなどは大嫌いで口にもしたくないほどだ、ただアルフィダは昔からこうやってレイラと行動することがあればたまにからかったりして遊ぶのが存外好きだったりする。

彼女の純粋な反応が面白いのだろう、

まぁレイラからしたらたまったものではないが



「まぁ、たしかに胡散臭い女であるのは認めざる負えない所だな、露骨にコチラを利用しようとしてるのが見て取れる、」


「はい、何を考えてるのかわからない、底の見えない怖さがある気がします。」


「お前としては奴が出張って来なければ当初の任務は完遂出来てたろうしな、」


「…………、そうですね、彼女が出てこなければ私はフィーファ様をマグラーナに無事送り届けて2年に渡る長期任務を完遂出来ていたんでしょうね、でも」


「でも?」


「もしかしたら私は彼女に感謝してるのかもしれない、心の底ではずっと不安だったし、自分は正しいと定義づけてないと怖くて狂いそうだった、フィーファ様を騙す事も自分が取る行動でフィーファ様がどうなるかのかを想像するのも全てが怖くて怖くて仕方なかった。」


「お前はまだやり直せるさ、彼女はお前を許したしお前を必要としてくれてる、その彼女の期待に答えてやればいいさ。」


「私は……そうですね、この身をとして彼女を護る、それが彼女を騙し続けた彼女への贖罪になるなら…」


レイラの静かな決意を見てアルフィダは心の内で一人呟く

(たとえ許されなくとも俺はお前を守り続けるさ、それが殺してしまったグライン先生への唯一の贖罪になるなら、)


何処か似た者同士なこの二人、しかし決定的に異なる部分がある、ソレは引き返せたレイラと既に手遅れなアルフィダ。


だからこそ波長があったのかましれない、アルフィダはレイラと始めてあった時滅多に他人に関心を持たない自分がレイラに対して興味を持った事にアルフィダ当人自身が驚いた程なのだから、

既に手遅れな自分と違い、彼女にはまだやり直す時間がある、そう感じたからこそアルフィダはあの時レイラをダークエルフから助けた、

しかしその行動はレイラを助けたというよりは許され救われたレイラを見て、自分自身もあんな風に救われたいという願望だったのかもしれない、


(おこがましいな、我ながら女々しい事この上ない)


マグラーナへの旅はまだ続く、馬車を目一杯走らせても最短で1週間はかかるだろう、なんの運命かレスティーナの姫を中心としたこの旅でシェインと再開し、自分と同じ様に後悔と残根に囚われた少女との旅はアルフィダに一つの希望をもたらしてくれるかもしれない。


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