12話 ダークエルフ
ラミュアは得意気に気分良く語っていた所を強制的に中断させられた事に気分を害されたのか、
その中断するに至った原因を作り出した人物、
屋敷への乱入者を睨みつけた
「誰なのかな?君は?」
ラミュアの視線
いや、この場にいる全ての者達の視線を得ても臆する事無く乱入者である赤髪の女槍使いレイラはフィーファ様!とフィーファへと呼びかけていた。
「レイラ、貴方、手に怪我が!」
「こんなもの何でもありません!それよりコチラヘ!速く!」
「でも!」
「いいから!速く!」
レイラの手の平からはおびただしい量の出血の後がある、強引に止血した後があるが痛々しい事に変わりはない、
彼女が何故そんな怪我を負っているのかは明白だ、
おそらくダークエルフ達の手によって施された睡眠欲を加速させる魔法結界、これによりガノッサやレイラ、その他の兵士達は昏睡状態に陥っていた。
この結界に抗うには睡眠欲を押し退ける程の強い何かが必要、レイラはその何かに痛みを選択することで睡眠欲に抗ったのだ
そのために自傷行為を選択し、自分の手のひらを傷つけた、
自身の護衛対象であるフィーファを護るために
フィーファからしてみればそこまでして自分のようなお飾りのお姫様を護ろうとしてくれた彼女に対して、
嬉しと不安の感情がグチャグチャに絡みあって訳が分からなくなる。
レイラの勢いに押され彼女の手を取ろうとしたフィーファの前にダークエルフの少年、レン・ニーズブルが音も無く立った。
「!っレンさん?」
「な!?ダークエルフっ、貴様!そこをどけ!」
レイラはレンに威嚇の意味も込めて怒鳴りつけるがそれには意にも介せずラミュアへと問いかける、
「ラミュア様?お願いできますか?」
「あぁ、いいよ」
そう返答したラミュアは手をレイラの方へとかざすとそっと一言呟いた。
「ハイヒール…」
するとレイラの手のひらの怪我はみるみる内に回復していき数秒後には何も無かったように元の状態に戻っていた。 これに対して魔法を学んでいるフィーファはラミュアの神業めいた技術に驚嘆する、
「凄い、惚けた人だけど技術は本物だ…、」
しかし等の本人であるレイラからしてみればこの行為は薄気味悪く映ったのだろう
噛みつくようにレイラはラミュアに吠えた。
「なんのつもりだ!ダークエルフ!恩でも売ったつもりか、」
「やめて下さいレイラ!この人達は敵じゃないです!貴方も知ってるでしょ?彼女達は列国同盟の方達なのよ?」
「関係ありません!コイツらが貴方に危害を加えた存在であるのは明白、この場で処断し貴方を安全な場所に避難させる、それが最適解です!」
「何を言ってるのです!落ち着いて話を聞いて!列国同盟の!イノセントのラミュア女王本人なのですよ?
そんな事を言っては貴方の立場が!」
「関係ないと言ってるんです!
彼女がイノセントの女王だという証拠もないのに!
フィーファ様は口車に乗せられているんです、
貴方は私の指示に大人しくしていれば…」
そんな二人のやり取りを黙って静観していたラミュアはなにがそんなに可笑しいのかクスクスと笑っていた。 まるで三流喜劇をみてツボにハマったかのように声を殺してクククっと人を小馬鹿にするように、
「なにがそんなに可笑しい!」
「あぁ、ゴメンよあまりに必死なものでついつい面白くなってさ、それで?茶番はおわりかな?」
「茶番?何を言ってるのですか?ラミュアさん?」
「邪魔が入ったがさっきの話の続きを始めてもいいかな?…たしか誰が君に危害を加えていたのかという話だったね? 単刀直入に言おう、それは彼女だよ」
ラミュアの言う彼女とは誰の事を指しているのか、そんなのはラミュアの視線を追えば明らかだ、ラミュアは真っ直ぐに彼女、レイラを見ているのだからこの一連の騒動の主犯がレイラが手引きした物だとラミュアはそう言っているのだ、
「厳密には彼女のバックの組織、マグラーナによって手引きされた物だと言う事だね。」
「何を根拠にそんなデタラメを!私に濡衣を着せて罠に陥れようとしても無駄ですよ!」
「デタラメ…ね?」
「そんな嘘です!嘘ですよね?レイラ?
そもそもマグラーナ国は同盟国です、私達と同じく列国五大国同盟に組する大国です、私にそんな事する意味が…、無いじゃないですか…、」
「事実だよ、君を追い込んでいたのは他でもない、彼女だよ、」
「あり得ない、マグラーナ国が私みたいな世間知らずの子供相手に、そんな…」
「フィーファ君、君はもう少し事実を事実として受け入れた方が良いと思うよ?」
「事実?」
「君はあのレスティーナ王の寵愛を一身に受けて育った、ただ一人の孫娘でありただ一人残された唯一の王族血縁者だ、
君自身が自分をどう卑下しようとその価値はそれだけで高いのは理解しているのだろう?」
「そんな事はありません、それに私の代わりなどいくらでも擁立出来ます、代わりはいるんです、……お飾りの王族でしか無い私にそんな価値は…それに、」
(私がいなくなっても彼女がいる……)
「フィーファ様、貴方は貴方です、貴方のかわりになる者などいません!
それを証明するためにも私に付いて来て下さい!」
「レイラ…」
「貴方がいれば私は、マグラーナは救われるのです、貴方の価値を証明するためにもどうか、」
「私は……」
「そこまでだ、」
そういって二人の間に割り込んだレンは自身のエモノであるナイフをレイラに向けて言った。
「三流の宗教勧誘でももう少しマシだぞ?根が真面目なヤツはシンドイなぁ?楽になれよ?」
「だっ!ダークエルフ!」
「やめて下さい二人とも、こんなの間違ってる!」
「何がどう間違ってるんだ?お姫様?
コイツが貴方を苦しめてた犯人の正体なんだ、もう貴方自身何処かで気づいてたんじゃないのか?」
お優しい事だなと最後に付け加えてレンはレイラへとナイフを投げ付けた、
とっさの事で反応が遅れたレイラはなんとか槍でナイフを払い落とすもそんなわずかな瞬間で懐までレンに距離を詰められ顎を強打される、
舌を噛まなかったのはたんなる偶然でとっさの判断が良かったとかそんな訳でもなくただ運が良かっただけ、これだけでレイラはレンから命を奪われていたのは明確で、
相手が手加減してる事を感じ取ったレイラは自身のプライドを傷つけられレンに対して怒りを感じるも顎を打たれた為か膝が震え立っている事も満足にいかない現状となった。
「グラビティフォール。」
そこにレンは魔法を唱えるとレイラの周囲を光が囲い次の瞬間には重力が何倍には増加し、歩く所か立っているだけでも大量の体力を消費する事となった。
「何だこれ!?体が…重い!」
レイラはその場に縫い付けられる形となり身動きが取れなくなる
それを確認するとレンは両手に鉤爪を装着し、レイラへと語りかける
「お前がマグラーナ上層部からの指示でお姫様に近づいた使者で間違いないようだな、その罪、死を持って償ってもらうぞ?レイラとやら?」
「待ってください、何故マグラーナがっ!同盟国が私に危害を加えるのです?意味がわからない、」
「自分の知る事が全てと勘違いしてる用じゃ一人前のお姫様にはなれないぞ?」
「茶化さいで!」
レンの巫山戯た物言いにムキになって反論するがフィーファ自身もうレイラが裏切り者であるとはなんとなく理解していた、
その事実から目をそらしたい一心でレンに 食ってかかるがそれが現実逃避であるともフィーファは理解していた。
「私にとってレイラは姉のような存在だった
どんな時も私の傍にいてくれた
ツライ時は話し相手になってくれた
なのに……無理だよぉ…」
「ならそこでうずくまって静観しているといい、それで全ては終わる。」
そういってレンはレイラにかけた重力魔法のセーフティを外し一気に押しつぶす為に手のひらの魔力を集約しょうとした、
しかしそれは音もなくレンへと肉薄した者の強襲により防がれた。
高い瞬発力を持つレンもこれには敵わず右手に装備した鉤爪でなんとか受け止めるも完全に手の平に集めた魔力は飛散しレイラは重力の井戸から解放されることとなる、
「命を奪うのは時期尚早に過ぎるんじゃないか?イノセントのダークエルフ?」
「誰だお前…」
「あ…アルフィダ?」
ダークエルフの少年レンと対峙する新たに現れた少年の姿を確認したレイラは状況の理解に苦心しながらもその少年の名を呟いた。
「よぉ、レイラ、久しぶりだな、しかし、なんとまぁ、いつかこんな日が来ると思ってたけど事の見事にやられたな?」
レイラに対してフランクな態度で接するアルフィダ、 彼はレイラを守るように彼女の前に立ちレンを睨み付ける
「たしかアルフィダと呼ばれたか?お前」
「あぁ、」
「なるほど、これは光栄だな、まさかラティクスの殺人狂とまみえる事になるとはね」
「安心しろ、殺しに来たんじゃない、そっちも無益な戦闘は避けたいんだろ?」
「後顧の憂いは払っておきたいんだ、こちらも避けれるなら避けていたいんだがね、」
「それは残念だな、」
まるで友人同士のような気安い会話の後二人は武器を構えた、 アルフィダは剣をレンは鉤爪を、
しかしレンは会話の最中も新たに貯めておいた魔法を持ってアルフィダに先制を仕掛ける
「グラビティフォール!!」
大きな光の輪が一帯を包み木々がへし折れ地面は歪みクレーターが瞬時に形成される
レイラに仕掛けた時とは比べ物にならない威力をこめた魔法攻撃、
しかしアルフィダはそのクレーターの発生よりも速くレンへの距離を詰めよこなぎに剣を振るう、
間一髪アルフィダの剣を避けるも頬を浅く切られ血が滴る
「なんてスピードだ、たく、お前…ホントに人間かよ?」
「生憎、スピードには自身があるんでな、」
軽口を叩きながらも動きを止めず素早い動きでもってダークエルフへと猛攻を仕掛けるアルフィダ
彼のが振るう剣は片側にのみ刃がある片刃の剣、
所謂刀に属するものである、
人を斬ることに特化したその性質から鉤爪のような武器に対して相性がすこぶる良く自然とレンは劣勢を強いられる事となる。
無論魔法による攻撃も鉤爪と併用して仕掛けておりこの戦法でレンが劣勢に立たされることなど滅多にないものだがアルフィダはそれを難なく躱しており常に優位に立ち回っている。
気づけば目標としているレイラから大きく距離を離されていた、
見た目から推測しても15~6の少年が体得出来る体捌きではなく数瞬の手合わせでもアルフィダの異常性を垣間見たレンは伊達にラティクスの殺人狂などと呼ばれていない訳だと得心する
明らかに場数を熟した者、戦い慣れた者だと、
「はぁ…、 同盟国とはいえラティクスにその女を助ける利点はないと思うんだけどお前にどんなメリットがあるのか是非聞かせて欲しいな、」
「ラティクスは関係ないさ、コイツは俺の数少ない知人でね、知り合いが死ぬのは悲しいだろ?」
「はは、バカみたいな理由だな、殺人狂と呼ばれている奴の言葉とは思えないぞ」
「勝手に呼ばれてるだけでこちらとしては不本意甚だしい限りだ。」
両者の戦いの最中フィーファがただ二人を静観している訳はなくレイラを連れこの場から逃げ出そうと考えていた、無論レイラが自身を1年以上ものあいだ ずっと害を掛け続けた張本人だと知って尚彼女の事を疑い嫌いきれずにいる甘さから来る行動だった。
「ここから逃げ出せたら聞かせてもらいますよ?レイラ、貴方が何を考えてるのか、」
「……私は何も考えてなどいませんよ…」
無論そんな二人を彼女が見逃す訳もなく、
「何処に行くつもりなのかな?二人とも」
イノセントの女王ラミュアが立ちはだかった。
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