表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

膝枕で耳掃除をするおはなし

作者: 紫藤 楚妖

ガチャンッ!

「ただいまー」

夜、玄関の戸が開くと同時に元気のない女性の声が男の耳に届いた。

「おかえりなさい。今日は遅かったね」

「うん、あとちょっとで終業だったのにあのお局様が」

彼女のいうお局様とは自分に厳しく、同じくらい他人にも厳しいという人らしい。

別に彼女に意地悪をしているわけではなく、お局様もしっかり残業をしているのも分かっているので

彼女も愚痴を言ったりはしない。

「今日のご飯はなに?」

「今日はお鍋だよ。帰ってくる時間が読めなかったから、まだ煮込んでないよ。先にお風呂はどう?」

「ありがとう。お先にいただきます」

女性はそそくさと着替えてお風呂に向かう。その途中で足を止めて言う。

「ねぇ、たまには一緒に入る?」

彼女が頬を赤らめながら言った。

私は笑いながら答えた。

「お鍋の火を見てないとだめだから。また今度ね」

その言葉に彼女は残念そうな顔をする。そんな彼女を見て私は言葉を続けた。

「明日ならいいよ」

彼女の表情は一転して笑顔になり、足取りも軽くお風呂に入った。


「「いただきます」」

彼女と私は両手を合わせていった。

「春雨は入ってる?」

「入ってるよ。鳥肉のつくねも入れておいた」

この二つは彼女の好物である。ちなみに我が家では鍋のしめは卵を入れた雑炊である。

これも彼女が鍋のしめは雑炊派であるからだ。

私は彼女が好物を食べてにこにこと笑うのを見るのが大好きだ。

「あの、片付けが終わってからでいいから、また耳掃除してもらっていい?」


後片付けの後、約束通り彼女に耳掃除をしようとしたら、膝枕でしてほしいといわれた。どうも今日は甘えたいらしい。

ざっと見たところ特に耳垢らしきものは見当たらない。

それでもおねだりをされたらやらないわけにはいかない。

耳の中を傷つけないよう注意しながらかいていく。たまに声をかけるのを忘れない。

「大丈夫?痛くない?」

「ん~きもちい」

「かゆいところあったら言ってね」

「はーい」

リラックスできているようでよかった。

「ぁー、そこ。もっと奥のところ。そこ。そこが気持ちいい」

「かなり奥まで入れてるけど痛くない?」

「痛くない。もっとかいて」

「はい、わかりました」


こうして夜は更けていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ