第六十二話 再びアルター皇帝の墳墓へ
ドッペルゲンガーから自分たちはアルター皇帝の墳墓にいると言われ、僕達はアルター皇帝の墳墓へと向かう。
出発前にマウロ伯爵にアルター皇帝の墳墓に向かうことを伝えると、前回僕が大火事を起こして以来立ち入り禁止になっていると教えてくれる。
アルター皇帝の墳墓へと続く洞窟を進んでいくと、墳墓入り口の部屋の端から明かりが通路に刺しているのが見えた。
「アンデッドどもをもっと集めよう。貴君らはそれらと共に我が主が儀式を終えるまで入り口の守護に当たっていただきたい」
部屋からは風邪をひいたようなガラガラ声の男性の声が聞こえてくる。
「私はドッペルゲンガーと共に教祖様の儀式のお手伝いに向かう」
「承知した。早々に終わらせて契約を履行してくれ」
「わかっておる。約定通りダントーインの侵攻に合わせてアンデッドの大群でナブー王国を内側から混乱させる」
部屋には複数の人がいるらしく、そんな会話をしている。
「シュヴァルツ」
「はい」
僕とシュヴァルツは防御魔法を付与させると部屋に突入する。
「なっ!? しっ、侵入―――」
「遅い」
入り口付近にいた革鎧を着た人間の男性が侵入者と叫ぼうとするが、シュヴァルツが両手剣で袈裟斬りに一刀両断する。
中にいたのは人間の戦士が二人、骸骨を連想させるような戦化粧をしたエルフの男性、そしてズワーズのアンデッドの大群だった。
「子供と全身鎧の騎士……ドッペルゲンガーが言っていたナブー側の冒険者かっ!」
人間の戦士達が抜刀して此方に襲い掛かってくる。
シュヴァルツが前に出て戦士二人の攻撃を両手剣や鎧の肩当などで受け止めて応戦する。
骸骨の戦化粧をしたエルフは手に持った黒い杖をこちらに向けると、ズワーズのアンデッド達が津波となって襲い掛かってくる。
骸骨の戦化粧をしたエルフは価値を確信したように背を向けて墳墓の奥へと向かおうとする。
「万物の根源たるマナよ 日輪の光となりて その輝きを照らせ 太陽光爆発!!」
「なっ!?」
こちらが太陽光爆発でズワーズアンデッドの大群を一瞬で消滅させると、骸骨の戦化粧をしたエルフはこちらに振り向き信じられない者を見るような顔で呆然としていた。
「万物の根源たるマナよ 矢となりて 我が敵を討て 魔法の矢!!」
「クッ! 骨よ 積み重なりて 壁となれ 躯の壁!!」
僕が十本の魔法の矢で攻撃すると骸骨の戦化粧をしたエルフは手に持った黒い杖を地面に突き刺す。すると周囲のアルコーグに積まれている骨山の骨が磁石の様に杖に引き寄せられて壁になり、僕の魔法の矢を防いでいく。
「グウウッ! なっ……なんて魔法威力なんだ!?」
黒い杖はその力を行使する度に何か代償を払うタイプなのだろうか、十本の魔法の矢を防いだ骸骨の戦化粧をしたエルフは先ほどまでは青年顔だったのに、気が付いたら中年のような顔に老け込んで苦悶の表情を浮かべていた。
「骨よ 矢となりて 我が敵を討て 骨の矢!」
「万物の根源たるマナよ 大岩の盾となりて 我を護れ 石の城壁!!」
骸骨の戦化粧をしたエルフはアルコーグに積まれている骨山に黒い杖を向けて呪文を唱えると、骨が浮かんだかと思うとこちらに向かって矢のように飛んでくる。
僕は呪文を唱えて杖で地面を叩くと、石畳が起き上がるように壁になって骨の矢を塞ぐ。
「万物の根源たるマナよ 狼の牙となりて 我が敵を噛み砕け 狼の顎!!」
「骨よ 喰らいつけ 骨の顎」
今度は僕の番だと呪文を唱えると、無数のエネルギー状の狼の頭部が現れ、骸骨の戦化粧をしたエルフを襲わせる。
骸骨の戦化粧をしたエルフは黒い杖を頭上で一周させると、アルコーグに安置されていた頭蓋骨が浮かび、僕が生み出した狼の頭部と戦う。
骸骨の戦化粧をしたエルフは頭蓋骨が破壊されるたびに加齢していき、髪は白髪になっていき、顔もしわが増え、黒い杖を持った手は枯れ木のような老人の手になっていく。
「マスター、加勢します!」
僕と骸骨の戦化粧をしたエルフが魔法で攻防を繰り返している間、シュヴァルツは人間の戦士と戦っていたが、倒してこちらに加勢にきた。
「貴様らっ! 足止めをしろ!!」
骸骨の戦化粧をしたエルフは焦ったようにそういうと、黒い杖を死んだ人間の戦士達に向ける。
すると、死んだはずの戦士たちがゆらりと起き上がり、うめき声をあげながらこちらに襲い掛かってくる。
骸骨の戦化粧をしたエルフは人間の戦士達をゾンビにすると、墳墓の奥へと逃げようとする。
「逃がすか! 万物の根源たるマナよ トリモチの床となれ 粘着!!」
「ぐおっ!?」
骸骨の戦化粧をしたエルフの進行方向の床をネズミ捕りのような粘着性のある粘液だらけの床にする。
骸骨の戦化粧をしたエルフは粘着性のある床に足を踏み入れた瞬間転倒し、床にくっつき起き上がろうと藻掻く。
「シュヴァルツ!」
「お任せください!」
シュヴァルツは蘇ったゾンビの対処に向かい、僕は骸骨の戦化粧をしたエルフの元へと向かう。
「ドッペルゲンガーはどこだ!」
「くっ……なぜここがわかった」
僕がドッペルゲンガーの行方について聞くが、骸骨の戦化粧をしたエルフは憎しみを込めた目でこちらを睨み、自分たちの居場所がなぜ分かったかを聞いてくる。
「ドッペルゲンガーが教えてくれたよ。ここに雇い主といるってね」
「おのれぇぇぇ……やはりあやつ裏切っておったかあああ! ルベド! ボナセ・ハゼウラ!!」
僕達がここに来た理由を教えると骸骨の戦化粧をしたエルフは怨嗟の声を漏らす。
どうやらドッペルゲンガーとこの骸骨の戦化粧をしたエルフは手は組んでいるが仲は良くないようだ。
後半の言葉の意味は分からないが、唾を吐きながら叫んでいることからエルフの最大限の侮辱言葉なんだろうと想像はつく。
「いったいここで何をする気なんだ」
「ふんっ! そんなこと我が教えると思ったか? ブラッグロッドよ、我が命を贄に暗黒より悪魔を呼び出せええ!!」
骸骨の戦化粧をしたエルフは皮膚がはがれるのもいとわぬように、粘着の床から強引に上半身を起こすと、自分の体に黒い杖を突き刺す。
すると骸骨の戦化粧をしたエルフは早送りの様に白骨化していき、頭蓋骨の口から怪物がはい出てくる。
頭蓋骨の口から這い出てきたのはハゲワシの頭、キリンのような長い首、灰色の羽毛に覆われた人間の体という奇怪な生物だった
「あれは……アビスデーモンのバーロックです!」
ゾンビを排除したシュヴァルツが新たに現れた悪魔を見てその正体を叫ぶ。
バーロックは僕達を認識すると跳躍し、蜘蛛か蜥蜴の様に天井に張り付き、叫び声をあげる。すると分身の術を使ったようにバーロックの姿が無数に分裂し、全員同じ動きをする。
「クエエエエエエエ!!」
「マスターッ!」
バーロックが壁を蹴ってこちらに爪で攻撃して越そうとする。シュヴァルツが迎撃に入って両手剣で弾くと、バーロックはあちらこちら飛び跳ねて距離をとり、ヒットアンドアウェイ攻撃を繰り返す。
シュヴァルツはカウンターを狙うように攻撃するが、分身を消すだけで本体に命中せず、分身が少なくなればバーロックはまた分身を増やす。
「万物の根源たるマナよ 邪悪の影を払う 聖なる光となれ 破邪の光!!」
「ギュエっ!?」
僕は呪文を唱えてて杖を掲げると、杖の先端が光ってバーロックの分身をすべて消滅させる。
バーロックは自分の分身が消されるとは思っていなかったのか戸惑いの鳴き声を上げながらも、僕に向かって鋭い爪を伸ばす。
「シュヴァルツ!」
「御意!!」
僕はさらに魔力を込めて光度を強めると、バーロックは光に目がくらんだように顔をそむける。
シュヴァルツはその隙をつくように半月を描くような動きで両手剣を振るい、バーロックの腕と首を斬り落とす。
それが止めとなったのか、バーロックの首と胴体から青白い炎が噴き出すと体を燃やし灰となって消えていった。
「先へ進もう!」
「はいっ!」
僕達はドッペルゲンガーと今回の黒幕に追いつくために墳墓の奥へと向かった。




