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一時転生先で冒険者スローライフ  作者: パクリ田盗作
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第五十四話 ヴォラーとの接触


 セブンブリッジのマウロ伯爵からの依頼でバグベアード帝国の残りの遺物の探索の為にエンドアにやってきた僕達はダントーイン帝国のエージェントと思われる集団の襲撃を受け、これを撃退した。


「証拠になりそうなものはないですね」

「やっぱり」


 シュヴァルツが死体を探るが、見つかったのは彼らの路銀と食料ぐらいで指令書といった正体に繋がるようなものはない。


「死体を処理して先を急ごう。待ち伏せしていたってことは下手すると、ヴォラー達も襲われているかもしれない」

「了解しました」


 襲撃者の遺体をまとめて焼くと、僕達はケチャという山に向かう。

 道は平原が尽きて山の斜面をくねくねと登っていく道になっていく。


「シュヴァルツ、今の聞こえた?」

「角笛のようですね。また聞こえます」


 くねくねとした山道を登り、灰色の低い岩棚の挟まれた谷へと下っていく道の先から角笛の音が何度も聞こえる。

 角笛の聞こえる場所へ足早に向かうと今度は剣戟の音が聞こえてくる。

 谷を降り始めた先で先ほどの襲撃者とよく似た装備の集団と牛の頭部と人の体をした人型生物、鎧を着た二足歩行のハイエナのようなモンスターがバグベアードの集団と戦っている。


「マスター、あれはミノタウロスとノールですね。あ、あちらはヴォラーの人達ですよ」

「よし、シュヴァルツはこれをもって加勢して」

「了解しました」


 シュヴァルツが指さす先にいたバグベアード達の額や鎧にはジュルチェから教えられた刺青が施されている。

 僕は指輪から魔剣アルクラーウを取り出しシュヴァルツに持たせる。

 口で加勢すると言ってもヴォラーの人達は信じないかもしれない。魔剣アルクラーウを見せたら話しぐらいは聞いてもらえるかもしれない。


「万物の根源たるマナよ かの者たちに不可視の盾を 魔法の盾(マジックシールド)!」

「っ!?」


 乱戦に近い状況でも魔法の盾は僕とシュヴァルツ、そしてヴォラーのバグベアード達に付与されていく。


「加勢する!!」

「魔剣アルクラーウ!? 戦士達! 今はこの者と共に苦境を乗り切るぞ! 続け―!!」

「うおおおおおお!!」


 突如付与された魔法に戸惑うヴォラーのバグベアード達。そこに魔剣アルクラーウを持ったシュヴァルツが現れると、ヴォラーの纏め役と思われるバグベアードが仲間達を鼓舞する。


 最初は押され気味だったヴォラー達だったが、僕の魔法の盾(マジックシールド)とシュヴァルツの加勢で拮抗状態まで巻き返す。


「万物の根源たるマナよ かの者達の傷を癒せ 集団治癒(グループヒール)!!」


 僕は離れた場所から魔法の支援を飛ばす。集団治癒(グループヒール)の魔法で傷を癒されたヴォラーのバグベアードは一瞬戸惑うが、直ぐに雄叫びを上げてノールやダントーインのエージェントと思われる戦士達に攻撃を仕掛けていく。


 バグベアードの戦士たちはコピシュと呼ばれる片刃の剣と木製のスモールシールドにレザーアーマー姿で、ノールたちの攻撃を盾で受け流し、最小限の動作で突いては離れるヒットアンドウェイ攻撃を繰り返す。

 時折ノールたちの反撃を食らうが、僕の付与した魔法の盾(マジックシールド)に阻まれて致命傷は負っていない。


 そのバグベアードの集団の中でも纏め役と思われる者は変わった武器を使っている。

 鎖でできた鞭によく似た武器だが先端に刃が付いており、サソリの毒針の様にノール達の死角から刺すように攻撃を繰り返す。


「うわっ!?」


 バグベアード達の戦闘を見ていたら、僕の近くに矢が飛んできて思わず飛びのく。鎧を着たダントーインのエージェントと思われる集団の弓使いたちが僕に狙いをつけて矢を放ってくる。


「万物の根源たるマナよ 我が意思に従いて その悪意を敵に返せ 矢返し(リフレクト)!!」

「なにっ!?」


 次々と放たれてくる矢から逃げながら魔法を唱えると、僕に向けて放った矢がUターンするように射手に向かっていく。

 射手たちは自分が放った矢がまさか自分に向かってくるとは思わなかったんだろう、驚愕の表情や理解できないと言いたげな表情で矢を受けて崩れ落ちていく。


「ブモオオオオオ!!」

「おっとっ!」


 シュヴァルツは巨大な両刃の斧を持ったミノタウロスと対峙しており、ミノタウロスの攻撃を避けながら魔剣アルクラーウでミノタウロスの内ももや腕などを斬って出血させていく。

 ミノタウロスは興奮しているのか血走った目をしており、涎をまき散らしながら雄たけびを上げ怪我などお構いなしに巨大な斧を振り回す。


 シュヴァルツはステップやジャンプでミノタウロスの攻撃を避けて、体のあちこちに傷をつけていくが、ミノタウロスは痛覚がないのか怪我に怯んだ様子もなく執拗にシュヴァルツを攻撃していく。


「万物の根源たるマナよ 矢となりて 我が敵を討て 魔法の矢(マジックミサイル)!!」


 僕も攻撃魔法を唱えて敵の数を減らしていく。ヴォラーのバグベアード達も連携してノールとダントーインの戦士達を倒していく。

 残すはミノタウロスだけとなったが、ミノタウロスは逃げる様子もなく体中から血を流しながら巨大な斧を振り回す。


 だがその暴風も時間とともに徐々に勢いが落ちてくる。ミノタウロスは血を流しすぎて動きが鈍くなってくると、それをチャンスと見たヴォラーのバグベアード達がコピシュをミノタウロスの体に突き刺していく。


「ブオオオオオオ!」

「うわあああっ!」

 

 ミノタウロスは最後の力を振り絞って群がるバグベアードを吹き飛ばすが、その瞬間鎖鞭がミノタウロスの喉を切り裂き、跳躍したシュヴァルツが脳天に魔剣アルクラーウを突き刺す。

 それが止めになったのか、ミノタウロスは倒れて地響きを響かせた。


「やった! あれ……?」


 ミノタウロスを倒して喜んだのもつかの間、ヴォラーのバグベアード達が僕達に剣を向ける。


「人間、助力は感謝する。目的はなんだ?」


 ヴォラーの纏め役のバグベアードがこちらを警戒して剣を向けながら声をかけてくる。

 僕達はナブーがかかわっていることは言ってはいけないがヴォラーに協力しないといけない。


「僕達はセブンブリッジの大学から依頼を受けてこの剣を発掘しました。そこからバグベアードの帝国について調べて、末裔がこの遺物を集めて探していると聞いて返しに来ました」

「セブンブリッジの大学とはなんだ? 返してくれるのは嬉しいが、それの価値を知らないのか?」


 ヴォラーの纏め役は困惑した顔で話しかけてくる。


「大学というのは知識を学ぶ者たちが集まる場所です。この価値は知っていますが依頼人は本来持つべき人であるバグベアード達に返すべきだと言っててね。あと持ってるとあれに何度も襲われる」


 僕は大学についてふわっと説明して、魔剣を持ってると襲撃者に襲われるから手放したいというと、ヴォラー達は何となく納得したような顔になる。


「依頼人からは残りの遺物も見つけて末裔に渡せって言ってるんだ」

「偉大なる遺物は我らバグベアードの物。遺物が眠る場所も神聖で人間が足を踏み入れていい場所ではない。助けてくれた返礼もかねて警告する、平和を求めるなら帰れ!」


 ヴォラーの纏め役は剣を収めるが、こちらの協力を提案には拒絶する。助力を持ち出すタイミングを間違えたらしい。


「バウラ様お待ちを。偉大なる祖先アルカンの予言にはあちこちに分散した遺物を見つけ出した者一体であると記述があります!」


 どうしようかと迷っていると、ヴォラーのバグベアードの一人が纏め役をバウラと呼び、部族に伝わる預言書か何かの一文を提示して此方を指さす。


「かの者達は魔剣アルクラーウを見つけ出しただけでなく、我々の危機を救い、遺物をあるべき人に戻すという勇気と高潔さ、そして率直さを示しました。彼らと探索を共にしてルカールするべきです!」

「……いいだろう。偉大なる祖霊の予言の言葉に基づいて我らヴォラーはこの者達をルカールとする! 異議のあるものは?」


 バグベアードが必死に僕達をフォローすると、バウラは考えを変えて僕達と協力してくれるようだ。


「お前たちの名前を教えてくれ。名乗りをもってルカールを結ぶ。我は」

「僕はルーシェス」

「私はシュヴァルツです」

「我はバウラ! ヴォラーの歌い手である」

「俺はターニ! ヴォラーの牙!」

「私はヴァーン! ヴォラーの目であり耳である!」

「私はムルス! ヴォラーの口なり」

「私はダーク! ヴォラーの知恵を紡ぐもの」

「俺はウルク! ヴォラーの手だ!」


 バウラが一歩前に出て僕達の名前を聞いてくる。

 僕とシュヴァルツが名乗ると、ヴォラーのメンバーたちが名乗りを上げるが、僕達に自己紹介しているというより、なんというか……天に向かって叫んでいるようだった。


「偉大なる祖霊よ、我らはこの者達をルカールとする。意義があるなら空を曇らせてみよ!」


 バウラは僕達を指さしながら天に向かって叫ぶ。

 空は雲一つなく快晴で曇る様子はない。


「偉大なる祖霊の許しを得た。今日からはルカールだ!」


 バウラはそう言って握手を求めてくる。僕は握手しながらなんとか第一関門は突破できたとほっと一息ついた。

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