第四十八話 洞窟探索
魔動車を購入した翌日、懐が寂しくなった僕は仕事を求めて冒険者ギルドへとシュヴァルツを運転手にして魔動車で向かう。
「あ、ルーシェス様お仕事探しですかワンニャン? よろしければ一つご紹介できるお仕事がございますワンニャン」
馬車を止める駐車場エリアに魔動車を駐車してシュヴァルツに留守番させて、周囲の視線を浴びながらギルドの中に入ると、受付嬢のベスティアが声をかけてくる。
「え? 紹介してくれるのは嬉しいんですけど、えこひいきとかしていいんですか?」
「はい、実力がありギルド側からも信頼がおける冒険者には、ギルド側から指名や仕事の斡旋もございますワンニャン。特に今回ご紹介するお仕事は信頼のおける方じゃないとご紹介できないものでしてワンニャン」
ギルド側から仕事の斡旋とかしていいのかと僕が聞くとベスティアは問題はないという。
「受けるかどうか別にして内容を教えてくれませんか?」
「セブンブリッジ南部の海に面した崖で発見された洞窟の調査とモンスター退治ですワンニャン」
ベスティアが紹介してくれたのは洞窟探検の依頼、なんでも地元の漁師が漁をしているときに見つけて、覗き込むとモンスターを目撃したという。
漁師ギルドから漁に支障が出る前に洞窟の調査と目撃したモンスターの駆除依頼が来たという。
「モンスターってどんなのですか?」
「それがブヨブヨした青白い怪物だったの一言だけで……要領を得ないんですワンニャン。まあ、一般の方が細かくモンスターの種類わかったりしませんからワンニャン」
僕が漁師が目撃したというモンスターの見た目を聞くと、モンスターを目撃した漁師は青白いブヨブヨ怪物だとしか言わなかったらしいとベスティアは苦笑しながら答える。
後でシュヴァルツに聞くか、現地に行けば正体がわかるかもしれない。
「洞窟を探索して、怪物を討伐して脅威がなくなれば依頼完了ですワンニャン。報酬はドラゴン金貨三百枚ですワンニャン」
「わかりました、引き受けます」
報酬も悪くないので僕は依頼を引き受ける。
「あそこがおらが見つけた洞窟だ。普段は海ん中で、大潮の時期だけ姿現す奴だと思うだ」
洞窟探索の依頼を引き受けた僕とシュヴァルツは洞窟を見つけたという漁師の案内で小舟で件の洞窟に向かう。
「ここらは大昔に暴れた海賊の秘密の港があったなんて噂があるだ。気いつけてくんろ」
洞窟に近づくと足首まで海水に浸るが歩ける場所があったので、先にシュヴァルツが下りて、僕を肩に担いで洞窟探索を始める。
入り口で待機してる漁師がこの近辺に海賊の秘密の港があった噂話があると教えてくれた。
僕達は魔法で光源を確保すると、洞窟の奥へと進んでいく。
「ここは潮の流れで浸食を受けてできた洞窟みたいですね」
洞窟の中はだんだんと狭くなっていて、崖の様な急な上がり坂になっていて、丸みを帯びた岩が数多く見られる。
シュヴァルツは周囲の景色からここが潮の流れで岩肌が削られてできた洞窟だという。シュヴァルツの肩から降りて、洞窟内を歩くと地面はぬかるんでおり、海草やフジツボなどがまばらに存在しているがみえる。
「……変ですね」
「何が?」
「いえ……この手の洞窟の場合、潮の満ち引きで取り残されたり、波にのまれて逃げ遅れた魚介類が水たまりにいるんですが……少ないんですよ」
シュヴァルツは洞窟内に散乱する水たまりを覗き込んで怪訝な声を上げる。
僕が何事かと聞くと、シュヴァルツは水たまりの中にいる魚介類が少ないことを怪しむ。
「漁師が言っていたモンスターが餌場にしているとか?」
「可能性はあります」
そんな話をしながら僕達は坂を上がりきると、すぐに大きな洞穴にでる。洞窟は左右の奥の方にそれぞれ続いているようだ。
「ん? なんか卵が腐ったような匂いしない?」
「どうやら、お出迎えが来たようです」
洞穴内を見回していると、磯の香りに交じって硫黄の匂いが漂う。
僕が匂いを指摘するとシュヴァルツが光源の届かない闇を指さす。そこには逆三角形のような形で六つの赤い光が浮かんでおり、グルルルという唸り声が聞こえてくる。
「ヘルハウンドですね」
「目撃されたモンスターとは違うね」
光球の一つを操作して、闇に浮かぶ赤い光を照らすと、赤い毛並みの大型犬が二体姿を現す。
「ウオオオオオン!!」
「火を噴いたっ!?」
ヘルハウンドと呼ばれた二匹の犬は大きく口を開けたかと思うと、その口から炎を吐き出す。
「魔法の矢!!」
「んなっ!」
僕とシュヴァルツが炎を避けるように逃げると、逃げた先の水たまりから何者かが出てきたかと思うと、魔法を放ってくる。
水たまりから現れたのは一言でいえば水死体だった。水と腐敗ガスでブヨブヨになった青白い肌の人間の水死体が魔法を唱えて僕達に攻撃する。
「うぎっ!?」
「マスターっ!? おのれっ!!」
水死体が放った魔法の矢は僕に命中し、思わず痛みに声を漏らす。
シュヴァルツは僕が攻撃を受けたのを見て激昂するように両手剣で斬りかかる。
「位置交換」
「なにっ!?」
「ぎゃいんっ!?」
シュヴァルツが斬りかかる瞬間、水死体のモンスターは何か魔法を唱えたかと思うと、水死体とヘルハウンドが入れ替わり、ヘルハウンドが両断され、無産化する。
「万物の根源たるマナよ 矢となりて 我が敵を討て 魔法の矢!」
「魔法の盾」
僕が十本の魔法の矢で攻撃しようとすると、水死体は魔法の盾で防御するが……
「っ!?」
「ギャンっ!?」
僕の魔法の矢の威力の方が水死体の魔法の盾の防御力より上回っており、最初の一本目の矢で盾を粉砕し、残り九本の矢が水死体とヘルハウンドに降り注ぎ、肉体を粉砕していく。
「ふう……びっくりした……イタタ」
水死体が放った魔法の矢が命中した箇所が痛み、僕は指輪からポーションを取り出して飲んで怪我を癒す。
「申し訳ございません、マスター」
「不意打ちは仕方ないよ。しかしちょっと強かったねあの水死体」
「あれはレーヨンと呼ばれる水死体のアンデッドです。生前は魔法使いだったのでしょう」
シュヴァルツはその場で土下座しそうな勢いで謝罪してくるので僕は気にしてないと伝え、話を変えるように水死体のモンスターの事を話題に出すと、シュヴァルツがモンスターの正体を教えてくれる。
「マスター、これを見てください」
「翡翠でできた指輪? あの水死体のかな?」
シュヴァルツがレーヨンがいたエリアを探索すると、翡翠でできた指輪を発見する。
「他にレーヨンがいないか調べようか」
戦利品としてアイテムボックスに収納した僕達は洞窟の探索を再開する。
左右に続く通路の左側に進むとボロボロのカバンを見つける。
「日記ですね。濡れていてほとんど読めませんが……あのレーヨンの生前の物っぽいです。どうやらこの洞窟は本当に海賊の秘密港だったようですね。あのレーヨンは生前ここに探索にきて満潮に巻き込まれて溺死したようですね」
シュヴァルツがカバンの中を調べると日記帳とドラゴン金貨が数枚入っていた。
日記を読み解けば、レーヨンになった魔法使いはここに海賊の隠港があると思って探索していたようだ。
「あの道楽者のダーヴィスさんとかブラックホースジャーナルのアリッサさんあたりに知らせたら喜びそうだね」
「そうですね」
レーヨンがいた洞穴まで戻る途中僕はふと以前仕事受けた依頼人のダーヴィスやアリッサの事を思い出す。
こういった財宝探索などの冒険活劇が大好きなダーヴィスさんなら喜んで話を聞いてくれそうだし、ブラックホースジャーナルのアリッサさんならスクープになると言って飛びつきそうだ。
「行き止まり?」
「のようですねえ……」
そんな話をしながら右側の通路を進んでいくが、通路は途中で行き止まりになっている。
「うーん……もしかして隠し扉とかあるとか? よし、万物の根源たるマナよ 隠されし扉の姿を 我が目に見せよ 隠し扉探知!」
もしかしたら隠し扉があるのではと思い隠し扉探知の魔法を使えば、行き止まりだと思っていた岩壁が実は隠し扉で、存在を僕達に知らせるように光る。
「マスター、何か仕掛けを解かないと開かないようです」
「じゃあ、開錠」
シュヴァルツが隠し扉を調べると鍵がかかっているのか開かないという。
開錠の呪文で強引に隠し扉を開けると、横開き扉の向こうには明らかに人の手が入った通路が広がっていた。




