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一時転生先で冒険者スローライフ  作者: パクリ田盗作
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第四十六話 蟲退治終了

 バグベアード帝国の皇帝アルターを倒して魔剣アルクラーウを手に入れた僕。

 全部終わった気になって帰ろうとしたら、シュヴァルツから本来の依頼である蟲退治が終わっていないと指摘されて、巣を探して墳墓内を探索する。


「退勤時間五分前に残業言い渡された気分だよ、はぁ……いや、それいいから」


 気分が落ちてため息をつくと、魔剣アルクラーウから活力が注がれる。

 鑑定の魔法で調べたら、どうもこの魔剣には持ち主の傷を癒したり精神を向上させる能力がある。

 剣を持っている限り疲れ知らずでやる気が萎えなくなるんだが……能力のオンオフできない常時発動型のようだ。

 なので些細な気分の落ち込みですら剣を持っていると強制的にテンションを上げさせられる。


 そんな剣を片手に僕達はこの遺跡の基部エリアに到着した。

 ここには遺跡を支える土台や支柱や梁があり半円形の空洞になっている。

 長い年月で支柱梁が崩れているところもあり、瓦礫となって積みあがっている場所もあり、そこからあの独特な音と共にズワーズが波の様に襲い掛かってくる。

 ズワーズの大群の中には人間サイズの大きさのズワーズも多数混じっている。


最大出力(マキシマム)殺虫の霧(バグキラーフォッグ)!!」


 カァンと威勢よく地面に杖をたたいて音を鳴らして呪文を唱える。

 杖で叩いた部分からブシュ―という噴射音と共に殺虫成分のある毒ガスが噴出され、ズワーズの波を包んでいく。


 ガスに包まれたズワーズは徐々に動きが鈍り、次々と仰向けに倒れていく。

 大型のズワーズは一般サイズのズワーズより耐久力はあったようだが、それでも僕達の足元に辿り着く前に絶命する。


「これは……巣の女王を護る近衛クラスのズワーズですね。巣は近いですよ、マスター」

「さっさと終わらそう!」


 シュヴァルツは人間サイズのズワーズの死骸を調べると、これが女王を護る近衛だと教えてくれる。

 蟲の津波なんて見てても楽しくもないのでさっさと終わらすためにズワーズたちがやってきた方向へ向かう。


「うわぁ……気持ち悪い」

「ここがズワーズの巣ですね」


 ズワーズたちは巣をこの墳墓の基部に作っており、壁や支柱などに無臭の粘液が吹きかけられズワーズの卵が巻き付いている。

 よく見れば四方八方天井にまでズワーズがいて、侵入者である僕達を監視警戒している。

 床にもべとべとした粘液が広がっており歩きにくい。

 巣に近づくごとにシュー、キチキチと威嚇の声を上げて、最奥から巨大な光が二つ現れる。


「マスター、女王の登場ですよ」

「でかすぎね?」


 最奥から現れたのは怪獣サイズの羽根が生え、首回りにマフラーのような体毛が生えたズワーズ。

 下腹部の半透明な卵管からは今でも卵が排出され、粘液と共に壁などに向かって射出される。


「キエエエエエエエエエ!!!」


 女王ズワーズが響き渡る金切り声を上げると、周囲にいたズワーズたちの目が赤く光り、一斉に襲い掛かってくる。

 同時に女王ズワーズの口が開いたかと思うと、液体を噴射してくるく。


「万物の根源たるマナよ 吹き上げる風の壁となれ 風の壁(ウィンドウォール)!!」


 僕とシュヴァルツの周りに上昇気流の風の壁を作り出す。

 女王ズワーズが噴射した液体は風の壁に阻まれて上空にそらされて天井に命中する。


「うへ、酸かよ」


 液体が付着した部分からジュワっという音がしたかと思うと有毒ガスを発生させて天井の岩が溶ける。

 小型サイズのズワーズたちが僕達の元に近寄ってくるが、上昇気流の壁に巻き上げられて吹き飛んでいく。


「さっさと終わらせるよ! 最大出力(マキシマム)殺虫の霧(バグキラーフォッグ)!!」


 殺虫の霧を発動させて、巣全体を霧で覆う。


「ギシャアアアアア!!」


 女王ズワーズにも殺虫の霧の効果があるのか、藻掻き苦しみ、苦し紛れに四方八方に酸をまき散らし、岩肌が溶けて有毒ガスが発生する。


「行きます!」

「ギシャアアアアア」


 シュヴァルツが両手剣を肩に担ぐような型を取ると駆け出し、飛び散る酸の雨を避けながら女王ズワーズへと向かって跳躍するとまずは下腹部を切断する。

 女王ズワーズは痛みで己の体を支えきれなくなったのか、天井から落ちてじたばたと暴れて体液と酸をまき散らす。


「さっさと終わらすよ! 万物の根源たるマナよ 地獄の門を開き 業火を呼び出せ 地獄の業火(インフェルノ)!!」


 杖の先端を女王ズワーズに向けて呪文を唱えると、真紅の炎が噴き出し女王ズワーズを包みこむ。


 女王ズワーズは悲鳴すら上げられず体についた火を消そうと体をのたうつが、地獄の業火は効果時間が終了するまで消えない炎なので何をやっても消えるそぶりはない。


「あ……やばい……」


 ズワーズの巣全体を追う粘液は可燃物質だったのか、女王ズワーズが転がった拍子に引火し、粘液が導火線の役割となって巣全体を炎に包みこむ。


「シュヴァルツ! 脱出するよ!!」

「はいっ!」


 僕達は地上に向かって走り出すが、引火の速度が速く炎が迫ってくる。


瞬間移動(テレポート)!!」


 走っていても間に合わないと思った僕は瞬間移動(テレポート)の魔法を使い、シュヴァルツと共に地上部分まで瞬間移動する。


「し……死ぬかと思った……」

「遺跡大丈夫ですかねえ?」


 瞬間移動を終えて地上に戻れてほっとしていると、遺跡の入り口から煙を吐いてるのを見たシュヴァルツがそんなことを呟く。


「………どうしよう」


 これがアクション映画なら燃え崩れる遺跡から脱出して、無事お宝を手に入れてハッピーエンドだけど、多分現実はそうはいかない。

 遺跡からはガラガラと崩れる音が聞こえてくる。支柱のどこかが焼け崩れたのではないだろうか。

 多分鎮火しても色々と脆くなって調査とかできないかもしれない。遠くからは黒煙が上り始め、遺跡のどこかの通気口あたりから煙が噴き出しているのだろう。


「不可抗力で情状酌量があると良いですね」

「とりあえず、正直に話すか」


 個人的には逃げ出したい気分だが、けじめはつけないといけない。

 重い足取りで僕達はセブンブリッジ大学のレイル教授の部屋へと戻る。


「やあ、無事に帰ってこれたようだね。ん? あまりよろしくない表情だがどうしたのかね?」

「えーっとこれを見ていただけると」


 レイル教授はにこにこしながら僕達を迎え入れてくれるが、僕の表情を見て怪訝になる。

 僕は言い訳と課せずに、メモリーストーンの映像を包み隠さずレイル教授に見せる。

 とりあえずズワーズがアルコーグから噴き出すように出てくるシーンでレイルは悲鳴を上げて気絶し、キルスや警備兵が飛んでくる大騒ぎになった。


 やっぱこの世界の人でもあれはブラクラ的映像かあ。


 状況を説明して再度メモリーストーンの映像を見る。レイル教授はトラウマになったのかしつこくズワーズが出るシーンを確認して、映像に映らなくなるまで目を閉じるようになった。


「あの遺跡に侵入者だって!?」

「ですがズワーズに殺されて全滅したようですね」

「ルーシェス! そのシーンは映してないよな! ないよな、なっ!」

「なっ、ないですから。ないですからそんな揺らさないで」


 結局メモリーストーンの映像はあの遺跡の発掘にかかわってる人たちが集まって鑑賞会になった。

 僕達が遺跡で侵入者の痕跡と日記を見つけたシーンで一時停止し、警備兵などが考察している中、レイル教授は僕の胸ぐらを掴んでゆさゆさとゆすりながらズワーズが出ないか聞いてくる。


「いや、スルーするんかいっ!」

「なんで調べてくれないんだ!」

「いやだって、僕達スカウトスキル持ってないし、無視できるなら無視したほうがいいし、依頼はあくまで蟲退治であって、遺跡調査じゃないですし」


 映像は進んであの文字パネルの部屋のシーンになり、僕達が無視して先に進むとメモリーストーンの映像を見ていた人たちからブーイングが飛ぶ。


「いやこれは……」

「我々が調査に入っていたら全滅か多大な被害になっていましたね」

「護衛の冒険者は必須ですね」

「しかし予算的にも……」


 次は墳墓にいたアンデッドたちとの戦闘シーンでは、発掘に対する脅威などに対して再確認してちゃんと護衛を雇おうという話になり始めるが、予算の都合というのでどうするか纏まらない。


「皇帝アルター!?」

「まさかバグベアードの帝国で最も優れた皇帝と言われたあのアルター!?」


 皇帝アルターが眠る石櫃のシーンではレイル教授たちがまるで推しのアイドルに会えたように興奮している。


「まっ、まさか……ルーシェス、あの魔剣アルクラーウをてにいれたのかっ!?」

「ええ、これですよ」


 皇帝アルターに勝利して剣を手に入れたシーンでは、レイルを始め発掘に携わっている人たちが口をパクパクさせている。

 僕は指輪から魔剣魔剣アルクラーウを取り出してテーブルに置くと、レイル達が拝み始める。


「性能としては……」


 僕が魔剣の効果を説明すると一字一句聞き逃さないという真剣な表情でレイル達がメモを取る。


「ルーシェス、この剣を譲ってくれないか?」

「? 譲も何も元々契約で拾得物は一旦そちらに渡すことになってるでしょ?」

「レイル教授でかした!!」


 レイル教授が恐る恐るといった感じで魔剣アルクラーウを譲るように言ってくる。

 僕がそういう契約ではというと、いつの間にか増えていたどこかの教授でかしたと言ってれる教授の肩を叩く。


「いや、確かにそういう契約だったが……魔剣だぞ! 本当にいいのか?」

「それは片手剣でしょ。シュヴァルツは両手剣使いだし、僕は魔法使いだから使わないし。気が引けるなら、遺跡がだめになってもチャラにしてください」


 よほどこの魔剣は価値があるのか、レイル教授はただひきとるだけじゃ気が引けるようだった。

 僕もシュヴァルツも使わないし、持っていたとしてもアイテムボックスの肥やし程度だろうと思うので、これ幸いに譲る条件として遺跡破壊を不問にしてもらえるようにお願いする。


「うーむ……魔剣と映像があればそこまで執着するものでもないし……」

「レイル教授、彼らの活躍のおかげで危険を回避できたうえに、歴史的調度品が手に入るのです。目をつぶるべきですよ」

「わかった、不問とする!」


 レイル教授が悩んでいると、同僚の別の教授がこの条件で引き受けるべきだと騒ぐ。

 教授たちの後押しもあって、レイル教授は僕が原因で遺跡が破壊されても不問にすると言ってくれた。


「しかし、いったい何が原因で遺跡が破壊されたかもしれない状況に?」

「それは次のシーンでズワーズの巣に向かった映像を見てもらえれば」

「よし、この話終わり! 解散!!」


 レイル教授は何が原因で遺跡がだめになりそうなのか気になったが、僕がズワーズの巣に

突入したシーンを見ればわかるというと、秒で話を終わらせようとして席を立つ。


 レイル教授以外は原因究明のために映像の続きを見たが、阿鼻叫喚という言葉が似合う状況に陥っていた。

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