第四十五話 対決! アルター皇帝
血の噴水に守られたスケルトンたちを倒し、次の部屋へと進んだ僕達。
そこは今まで通ってきた部屋と比べて奥行きが数倍広い部屋だった。
部屋の中央には四体の背中合わせの巨大な彫像があり、目から炎が噴き出し部屋を照らしている。
彫像は全て同じバグベアードで四体とも剣を掲げて四方を警戒しているようにも見える。
「こいつらトゥームボーンじゃないよね?」
「可能性はあります。トゥームボーンは動き出すまで何も検知できないという特徴がありますから、反応するまでは何とも言えません」
部屋の両サイドの壁にはアルコーグが大量にあり、骨が散乱している。
このアルコーグに埋葬されている骨もトゥームボーンになるんじゃないかと凝視するが、シュヴァルツがトゥームボーンの特徴を説明してくれる。
「やっかいなモンスターだなあ」
「ええ、墓所系の遺跡などではこのトゥームボーンの不意打ちで命を落とす冒険者が多くいます」
メモリーストーンに墓所内の様子を録画しながら部屋を探索する。
部屋の最奥に当たる部分には壇上があり、こまごまとした彫刻や象嵌装飾が施された大きな石櫃が安置されている。
その左右には一回り小さな石櫃があり、彫刻は彫られているが、装飾は施されていない。
「これがバグベアードの皇帝の棺かな?」
「違ったとしてもかなり高位の人物だったと思われます」
壇上の石櫃に近づき、メモリーストーンで石櫃に施された彫刻や象嵌装飾を撮影すると、石櫃の蓋が爆発したように吹き飛び。中からバグベアードのミイラが起き上がる。
/*
「冒涜者どもめ! 強欲に駆られてアルクラーウの剣を奪いに来たか! だが剣は渡さぬぞ! 貴様らの脆弱な魂を喰ろうて腹の足しにしてやるわ! 我が臣下よ起きよ! 侵入者だ!!」
一番大きな石櫃から起き上がったミイラがそう叫ぶと、両サイドの石櫃も蓋を吹き飛ばしミイラが起きてくる。
「マスター、囲まれました」
「ちょっと敵多くない?」
さらに背後の彫像も動き出し、予想した通り無数のアルコーグからトゥームボーンが生まれて、ガチャガチャ骨を鳴らしながらこちらにやってくる。
「我が臣下よ、冒涜者の肉を喰らえ!!」
皇帝アルターと思われるミイラが剣をこちらに向けて号令すると、モンスター達が一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「万物の根源たるマナよ 歯車の壁となりて 我が敵を阻め 歯車の壁!!」
僕が呪文を唱えて杖で床を叩くと、後方から迫ってくる彫像とトゥームボーンたちの前に進路を塞ぐように動く歯車や車輪、ピストンなどが組み合った巨大な壁が地面から生えて、モンスター達の行く手を防ぐ。
それだけではなく、機械の壁に設置されたクレーンやアームが壁に近づくモンスター達を攻撃する。
「魔法使いか! 小癪なっ!!」
皇帝アルターは僕が魔法を使うの見て顔を不快そうに歪める。
両脇に控えていたバグベアードのミイラは石櫃から跳躍すると、僕を狙うようにシミターを振り下ろす。
「マスターには指一本触れさせません!」
それを横合いから両手剣で防ぎ押し返すシュヴァルツ。押し返されたミイラたちは空中で一回転すると、皇帝アルターの傍に着地する。
歯車の壁は蒸気を噴き出し歯車を回転させながらアームやクレーンがトゥームボーンを吹き飛ばし粉砕された骨が周囲に巻き散る。
彫像たちも攻撃を受けてその体を削りながらも剣を振って歯車の壁を攻撃して、歯車など部品が巻き散る一進一退の攻防を繰り広げている。
「冒涜者よ、我が剣に討たれる栄光を喜べ!」
皇帝アルターは剣の切っ先をこちらに向けたかと思うと、その剣の切っ先からビームが放たれる。
「うえええええっ!?」
「マスター!!」
さすがに剣からビームが照射されるとは思わず、動揺して動けない僕をシュヴァルツが身を挺して庇い、ビームの直撃を受ける。
「シュヴァルツ!?」
「……かすり傷です」
シュヴァルツに声をかけるとよろけながらもかすり傷だと言い張るシュヴァルツは両手剣を構えて皇帝アルターに向かう。
側近と思われる二体のミイラがシュヴァルツの行く手を塞ぐように立ちふさがり、攻撃を仕掛ける。
「私の邪魔をするなああああ!!」
シュヴァルツは両手剣でミイラ二体を相手するが、皇帝アルターのビームのダメージがあるのか、動きがぎこちない。
後方では歯車の壁と彫像がボロボロになりながらお互いを壊し合い、歯車の壁が残り一体まで彫像を減らし、最後は彫像と相打ちになるようにお互い瓦礫となって崩れていく。
「皇帝アルター! 僕が相手だ! 魔法の矢!!」
「冒涜者が! アアアアアアアーッ!!!」
皇帝アルターに魔法の矢を撃つと、皇帝アルターは金切り声を上げる。
すると皇帝アルターを中心に不気味な黒いオーラが発生し、爆発的に広がっていく。
「うわああああっ!!」
「ぐぬっ!?」
皇帝アルターが放った黒いオーラに触れた僕は弾き飛ばされ、皇帝アルターも僕が放った魔法の矢がオーラを突き抜けて体に命中する。
「うぐっ……なにこれ……」
吹き飛ばされて転倒した僕は起き上がろうとするが、体が過労状態の様に重たい。
杖を支えに何とか起き上がるが、気を抜けば膝から崩れ落ちそうだ。
「ほう、我のブラッドシュリークを受けてなお自我を保てるとは……それにこの我の体に傷をつけるとはな……よかろう、貴様を認めよう! 貴様は戦士だ! 名乗れっ! 誇り高きバグベアードの戦士アルターとして、全力をもって貴様を殺し、その血を飲まん!!」
皇帝アルターは起き上がった僕を見て驚き、自身の体につけられた傷を確認すると、剣を掲げて宣言する。
「ルーシェス! アイアンランクになったばかりの冒険者だ!」
「アイアンランクが何の意味か分からぬが昇格したばかりの戦士とみた!」
僕もつられるように名乗りを上げると皇帝アルターは剣を突き刺すように構えて突進してくる。
「万物の根源たるマナよ 日輪の光となりて その輝きを照らせ 太陽光爆発!!」
「ぐっ!? たっ、太陽の光だとおおおおおっ!」
僕は皇帝アルターに向かって対アンデッド用魔法である太陽光爆発を解き放つ。
皇帝アルターは剣で防御するような態勢をとるが、太陽の光を浴びた皇帝アルターの四肢が着火したように燃え広がる。
「マスター!」
太陽の光が収まると、シュヴァルツがこちらに向かってかけてくる。退治していた二体のミイラは僕の太陽光爆発の範囲にいたようで消滅していた。
「太陽の光を呼び出す魔法を使うとは……」
「嘘っ!? まだ生きてる!?」
皇帝アルターは太陽光爆発の直撃を受けたにもかかわらず、皇帝アルターは生きており、燃えて失ったはずの手足が再生していく。
「クククク、これがアルクラーウの剣の力だ!」
「ならばその剣を持つ手を断つまで!」
シュヴァルツは再生中の皇帝アルターの剣を持つ手を両手剣で断ち切る。
剣を持つ手が切断されると、再生能力が絶たれたのかそれ以上回復することはなかった。
「見事! さあアイアンランクの戦士ルーシェスよ! アルクラーウで我が首級を取れっ! 我を討って誉れとするがいい!!」
皇帝アルターは最後の力を振り絞るようにその場に座り、首を差し出す。
僕はアルクラーウの剣を持つと、先ほど体に感じた過労感がなくなり、徐々に元気になっていく感じがする。
「この剣は……」
僕が剣の効果に驚いていると皇帝アルターは我の剣は凄いだろうと自慢するような表情を向けた後、目を閉じて処刑を待つ。
「……その首級貰っていくよ」
「ああ……これでやっと眠れるわ」
僕は剣を振り下ろす。剣は重さを感じず抵抗感もなく皇帝アルターの首を斬り落とし、勢い余って石畳に切っ先が突き刺さってしまう。
「これで終わりかな?」
「いいえマスター、蟲退治の依頼が終わっていません」
「……もうやだ、帰るうううう!」
皇帝アルターを倒して魔剣アルクラーウを手に入れてほっと一息ついたら、シュヴァルツから無慈悲な一言を告げられる。
「依頼を受けた以上は責任もって果たしませんと!」
「そうだけどさあ……精神的にどっとつか……いや、癒さなくていいから」
元々僕達は遺跡で大量発生したズワーズの駆除が目的で、皇帝アルターとかを倒すのが目的ではない。
それを思い出して、精神的に疲れを感じると、魔剣アルクラーウが気を利かしたつもりか、精神的な疲れを癒してくる。
「放置して数世代先に人類VSズワーズの大群の禍根残しますか?」
「わかりましたっ! やりますよ、やればいいんでしょ!!」
僕はやけくそ気味にそう叫ぶと、ズワーズの巣を探し始めた。




