第四十話 二次試験その2
「盗賊団のアジト見つけたっす」
オーリンを出発して三日目の朝、盗賊団のアジトがあると言われる山に辿り着いた僕達は、斥候役のマガミとルビィに探索してもらうと、二人はアジトを発見したと言って戻ってくる。
「自然洞窟を利用した物っす。入り口が目立たないようにカモフラージュしてるけど……正直やりすぎて逆に目立ってるっす」
「うん、あまりにもあからさますぎて誘い込む罠と思ったねー」
マガミとルビィを先頭に盗賊団のアジトまで案内してもらっているが、二人してあれはないという洞窟が気になる。
「あそこっす」
マガミが指さす先は山の中腹にある洞窟。
下の街道からはこちらは見えず、こちら側からは街道を見下ろして獲物を物色できるという盗賊にとって条件の場所だ。
入り口には石や倒木や草などで洞窟の入り口が見えないようにカモフラージュしているが、遠くからならそれでいいかもしれないが、近づくとやりすぎで逆にここに何かありますよとアピールしているように見える。
「罠は入り口付近には鳴子が仕掛けられてるぐらいかな?」」
「そんなに近づいたの? 見張りとかいなかった?」
「見張りはいたっすよ、あそことあそこに。ただここまで人が来ると思ってないのか油断して寝てるっす」
ルビィが入り口付近まで近づいて中を軽く確認したことを報告し、僕が見張りの有無を聞くとマガミが近くの木々を指さす。
洞窟入り口近くの木の上の葉っぱの茂みで隠れているが、ツリーハウスのような足場が組み立てられており、革鎧を着た薄汚い男たちが木にもたれかかって寝ている。
「マガミ、ルビィ、ここからあの見張りやれる?」
「っ!? ……距離的にはいけるっす」
「うっ、うん……大丈夫」
僕が見張りの排除を提案すると、マガミとルビィは緊張した面持ちで返事する。
「念のために魔法かけておくね。万物の根源たるマナよ この者たちに 会心の一撃を 必中!」
僕が呪文を唱えてマガミとルビィの武器に触れる。
「なんの呪文っすか?」
「攻撃が命中しやすくなる魔法」
「ここまでされたら外せないね」
僕が魔法を付与すると、マガミが魔法効果を聞いてくるので効果を説明する。
ルビィは僕が付与した魔法効果を聞いて、気合を入れなおすように自分の頬を叩く。
「行くっすよ、ルビィ」
「うんっ!」
二人は声を掛け合いタイミングを計ると、見張り台で眠りこけてる見張りに向かって矢とボルトを撃つ。
「グエッ!?」
「ギャッ!?」
僕の魔法の補助も受けた二人の攻撃は外れることなく眠りこける見張りの盗賊に命中して、短い悲鳴を上げた後絶命する。
「うぷっ!?」
見張り台から聞こえてくる盗賊の断末魔の声にルビィが吐き気を催し、離れた場所で吐く。
マガミも蒼い顔しているが、こぶしを握り締めて人を殺したことに対する動揺を抑え込もうとしている。
「大丈夫? 休む?」
「ううん、僕は最後までやるよ」
僕はルビィの背をさすりながら離脱するか聞くが、ルビィは水袋の水で口の中をゆすぐと依頼を続けると僕に言ってくる。
「ルーシェス君は……人を殺したことある?」
「んー……一応は」
「そう……なんだ」
ルビィは僕に人を殺したことがあるかと聞いてくる。
僕があると答えるとルビィは驚き。どこか悲しそうな顔をする。
「二人は斥候いける?」
「やれるっす」
「大丈夫、いけるよ」
「じゃあ、偽装と魔法の盾の呪文かけるね」
一旦二人が落ち着く時間を作り、しばらくしてから二人に斥候として洞窟を調べてもらうように声をかる。いけるといった二人に呪文を付与して洞窟を探索してもらう。
「ただいま、この洞窟は一本道で奥の方が広くなってて、そこに簡易のバリケードとかテント這って寝泊まりしてるみたい。そにはこれまで街道で商人から奪ったと思う物あったよ。今は道中の罠は解除してマガミに見張ってもらってる」
しばらくすると、ルビィだけが戻ってきて地面に木の棒で洞窟の簡易図を描いて洞窟内の状況を報告してくれる。
「数は?」
「目視で十五人前後かな? 明かりつけるわけにもいかないからちゃんと数えられなかった、ごめん」
盗賊の人数を聞くとルビィは洞窟内が暗くて目視で確認して十五人ぐらいだと言って謝る。
「いや、謝らなくていいよ。僕が防御魔法皆にかけるから突入、セガールとシュヴァルツは先頭、僕とルビィとマガミは後衛で」
「承知しました」
「任せろ」
「うん、わかったよ」
僕が大まかな作戦を立てて、魔法の盾を残りのメンバーに付与すると洞窟に突入する。
洞窟の入り口は狭く、僕以外は中に入るのにてこずる。特にシュヴァルツは巨躯と全身鎧のせいで屈むというより這う形で悪戦苦闘しながら洞窟内に侵入する。
入り口は狭いが、中は広く全員立って歩けるほどの高さはある。
「あ、皆来たっすか。盗賊たちはまだ起きてこないっす」
「僕が魔法の眠りで更に起きれないようにするから、僕の魔法の後、皆は眠っている盗賊たちが起きる前に止めを」
一本道の通路を進んでマガミと合流し、盗賊たちがまだ寝ていると聞いて僕は眠りの魔法を使うことを提案する。
「……わかったっす」
「う……うん」
セガールは無言でうなずき、マガミは少し間をおいて頷き、ルビィはまた吐きそうになるのを堪えて頷いた。
「万物の根源たるマナよ かの者たちを深き眠りに誘え 睡眠!」
僕が呪文を唱えると、盗賊たちが寝ている広間にピンク色のガスが発生し、盗賊たちの口や鼻にガスが吸い込まれていく。
「行くよ!」
睡眠の魔法で盗賊たちの眠りがさらに深くなったのを確認すると、僕は指輪から剣を取り出し広間へと向かう。マガミ達もそれぞれ武器を手に広間へと飛び込み、眠りこけている盗賊たちに止めを刺していく。
脅威が迫っているというのに盗賊たちは高いびきを掻いて起きる様子がない。
「それじゃあね」
「うぐっ!? なっ……なんで……」
僕も盗賊の一人に近づき、心臓部分に剣を突き刺す。剣を突き刺した瞬間盗賊は痛みで魔法の眠りから目が覚めたが……自分の胸に突き刺さる剣と僕を交互に見て意味が分からないように何でと呟いて絶命する。
「……次に行くか」
盗賊が死ぬのを見送ると僕は次のターゲットに移る。他のメンバーの様子を見ると、マガミとルビィは躊躇したりして一撃で殺せず、逆に手を掴まれたりして振り払おうとしたり、もう死んでる相手に何度もダガーを突き立てたりする。
逆にセガールとシュヴァルツはまるで作業のように剣を突き立てて盗賊が死んだのを確認すると次の盗賊に剣を突き立てる。
「これで全部のようですね。マスター、戦利品の回収が終わったら死体を燃やしてもらえますか?」
シュヴァルツが死体一体一体再度剣を突き刺して死んでいるのを確認すると、僕に死体を燃やすように言ってくる。
「燃やすの?」
「ええ、ヘレネに抱かれなかった死体がアンデッドになられても困りますし、このまま死体を放置して疫病の温床になられても困りますので」
シュヴァルツは盗賊たちの死体を燃やす理由を述べなら燃やしやすいように死体を集め始めると無言でセガールも死体を集めるのを手伝う。
ちなみにマガミとルビィは洞窟内に充満する血の匂いにやられて外に逃げてゲーゲー吐いていた。
僕はシュヴァルツとセガールが盗賊の死体を一か所に集めている間に戦利品を回収していく。戦利品は全体的に銀貨が多く、次に銅貨で金貨は全体的に少量だった。
硬貨以外は大体が食料や酒、照明に使う油やロープなど雑貨品が多く、宝石などは数えるほどだ。
「盗賊というには戦利品が今一つのような」
「おそらく可能な限り街道警備隊を刺激しないように気を付けていたのだろう。宝石などは街に行って換金したりすると足がつくから可能な限り現金や食料や酒などを徴収していたようだな」
「ずるがしこいというか、せこいというか……」
戦利品について呟くと、死体を運び終えたセガールが、通貨が多い理由について持論を添えて話す。
「とりあえず死体を燃やして洞窟を使えないようにしたら撤収しますか」
「そうだな。そろそろあの二人も落ち着くだろう」
「万物の根源たるマナよ 炎の矢となりて 我が敵を討て 炎の矢!」
死体の山に盗賊たちが持っていた油をかけて、離れた場所から炎の矢を撃って死体を燃やすと洞窟を出る。
「これで試験は終わりかな?」
「セブンブリッジの冒険者ギルドに戻るまでが試験だ。まだ気を抜くな」
僕が呟くと、試験官でもあるギルド職員のケインがセブンブリッジに戻るまでは試験は続くと釘をさした。




