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一時転生先で冒険者スローライフ  作者: パクリ田盗作
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第三十二話 とある別荘の財宝


 考古学者レイル・モーディンの依頼でバグベアードの帝国の墓所でもある戦士の塔の調査を終えてセブンブリッジに戻ってきた。

 街に戻った後は対アンデッド、対ネクロマンサーを掲げているクロトシュタットという神殿に報告し、調査を引き継いでもらった。


 レイルは自身が所属している大学にバグベアード帝国ゆかりの遺跡の発見を報告し、後日発掘団を編成して戦士の塔の発掘調査を行うらしい。


「ルーシェス様、シュヴァルツ様は合計で今回で八回のブロンズ依頼の成功を収めていますワンニャン。このまま順調に残り二回ブロンズ依頼を成功していただければ、ランクアップ試験を受けれますワンニャン。頑張ってくださいワンニャン」


 依頼達成報告の為に冒険者ギルドで手続きをしていると、ベスティアがあと二回依頼を成功させればランクアップ試験が受けれるという。


「そういえば、ランクアップ試験ってどんなのですか?」

「申し訳ありません、ランクアップ試験内容はギルド規約で秘密となっており、お教えできませんワンニャン」


 ベスティアにランクアップ試験について質問すると、ベスティアは申し訳なさそうに狐耳をペタンと伏せて頭を下げて教えられないと言ってくる。


「アイアンランクになると何か特典とかあるの?」

「ランクアップ時に説明することになっていますが、申請すればセブンブリッジの市民権を得られます。納税の義務が発生しますけどねワンニャン。あとはブロンズランクよりも報酬のいいアイアンランクの仕事が受託できますワンニャン」


 アイアンランクになれば何か特典があるか聞くと、ベスティアはアイアンランクの特典を教えてくれる。


「市民権かあ……どうするかなぁ?」

「ランクアップしてから考えてはいかがでしょうかワンニャン。それよりも、ルーシェス様向けと思われるお仕事をご紹介しますワンニャン」

「……シェイクスさんじゃないですよね?」

「違いますワンニャン、こちらの依頼ですワンニャン」


 ベスティアは試験内容を教えられない代わりに仕事を紹介してくる。

 僕は警戒してジト目であの舞台脚本家シェイクスの依頼じゃないかと警戒するが、ベスティアは苦笑しながら否定して依頼書を見せてくる。


「えーっと……魔法使い求む、魔法で閉じられたと思う扉を開けてほしい?」

「はい、魔法使いのルーシェス様向けでしょうワンニャン」


 依頼人はセブンブリッジの不動産屋で、買い取った家で開かずの間があり、調べた結果魔法で施錠されているとのこと。

 魔法使いに扉を開けさせて、ついでに部屋の中も調査してほしいとの事だった。


「ふーん、開かずの扉かぁ……なんか面白そう、受けます」


 僕は依頼を受けることにして依頼受理手続きを行ってもらう。

 転生する前の日本にいた時も開かずの扉や金庫を開ける番組とか好きだったので、少し楽しみだ。


 依頼人の不動産屋は東町に店を構えており、辻馬車で店に直接向かう。

 依頼人の店はベンケット不動産という店で本と羽ペンと家のロゴの看板が入り口にぶら下がっていた。


「ごめんください」

「はい、どちら様でしょうか?」


 ドアノックでドアを叩くと、整髪剤でオールバックに髪を固め、芸術家のダリのような髭を生やした四十代の男性が応対に出てくる。


「冒険者ギルドで魔法で施錠された扉を開けられる人探す依頼を受理した者です」

「おおっ! 冒険者の方ですかっ! どうぞこちらへ」


 ダリ髭の男性は店の応接室へと案内する。


「初めまして、私ベンケット不動産代表のベンケットと申します」

「僕はルーシェスです」

「シュヴァルツと申します」


 ダリ髭の男性ことベンケットは自己紹介しながら名刺を渡してくる。


「今回開けて戴きたい扉がある家は、セブンブリッジから徒歩で一日ほど歩いたところにある貴族の別荘です。先代に当たる方がお亡くなりになられて、現当主が財産を受け継いだのですが、遠方に住んでおられ、別荘の維持管理が難しいということで買い取ったのです」


 ベンケットはテーブルに地図を広げ、買い取った家の大まかな位置を伝えてくる。


「扉を開けるだけでいいんですか?」

「私も同行するので、道中の護衛と扉の向こうの脅威も存在したら排除してほしいのですが……」

「依頼は開錠のみと聞いておりましたが?」


 僕が依頼内容を再確認すると、ベンケットは苦笑しながら護衛も頼みたいと言ってくる。

 シュヴァルツは少し怒気を含めて開錠のみだと聞いたと再確認する。


「あ……あははは……どうも冒険者ギルドにちゃんと話が伝わっていなかったようですねえ……護衛料払うんでお願いします。今のままじゃ売るに売れないんです」


 ベンケットは笑ってごまかそうとしたが、シュヴァルツに睨まれると頭を下げて護衛料も出すと言ってくる。


「今のままじゃ売れない?」

「ええ、こういった家の売買は隅々まで確認して安全であることが条件なんですよ。特に貴族の邸宅の場合購入する相手も貴族ですから、不備があると信用問題にもなりますし、睨まれたら商売できません。こういった物件も維持管理費とか馬鹿になりませんし」


 ベンケットは笑ってごまかしながら自分の店の内情を伝えてくる。


「ちゃんと護衛料出してくださいよ」

「もちろんですとも! ですから扉の方お願いしますよ」


 改めて依頼を受けることに同意して僕達は件の別荘へと向かう。

 途中街道宿で一泊し、翌日の昼には目的地の別荘に辿り着く。


 その別荘はクラフツマン方式という自然と調和するようなレンガ建築の建物だった。家の裏には森が広がっており、山の別荘という感じだった。


「中は綺麗ですねえ」

「買い手がついたので掃除は徹底的にしました。その時に開かずの扉を見つけまして……鍵開けが得意な業者を呼んで初めて魔法で施錠されているとわかって」


 別荘内は今すぐにでも住めるような清潔さで、家具調度品も布をかぶせておいてある。


「開かずの扉はこちらです」


 件の扉は地下室の一室にあった。木製の変哲もない扉で、試しにドアノブを握って開けようとするが、ドアがまるで溶接されているかドアに見せかけたフェイクの壁の様に開かない。


「魔法使っていいですか?」

「ドアや周りに被害がないなら」

「万物の根源たるマナよ その力の残響を知らせよ 魔法探知(ディデクトマジック)!」


 ベンケットに魔法使用の確認を取り、僕が魔法探知の呪文を使用すると、ドア全体に施錠(ロック)の魔法が付与されていることがわかった。よほどここには大切なものを保管しているのだろうか、施錠(ロック)の魔法強度もかなり固い。


「確かに施錠(ロック)の魔法がかけられていますね」

「開けられますか?」

「ええ、これぐらいの魔法強度なら大丈夫です。万物の根源たるマナよ 万能の鍵となりて 扉を開け 開錠(アンロック)!」


 呪文を唱えて杖で扉をノックすれば、ガチャンと開錠する音が建物に響く。

 どんなに強固な施錠(ロック)の魔法でも、魔法使い一万人分の魔力がある僕からすれば朝飯前ともいえる。


「シュヴァルツ、先頭をお願い」

「了解しました」 

「ベンケットさんはどうします?」

「わ……私はここにいます」


 ベンケットを入り口に待機させて扉が開錠されたのを確認すると、シュヴァルツを先頭に部屋に入る。

 開かずの間は広間になっており、さらに向かい側に扉がある。

 その扉の前には向かい合わせにフルプレートが二体飾られている。

 シュヴァルツが部屋に入った瞬間、飾られていた二体のフルプレートの兜がこちらを向いたかと思うと、剣を抜いて襲い掛かってくる。


「ひぃっ! お化けえええ!!」


 ベンケットは急に動き出したフルプレートを見てお化けと叫ぶと、僕達を置いて地上階へ逃げていく。


「お化けではありません。ゴーレムの一種です。どうやらここの番人のようですね」


 シュヴァルツは両手剣を構えて襲ってくるフルプレートのゴーレムを見てその正体を教えてくれる。

 フルプレートのゴーレムは流暢な動きで剣をシュヴァルツに振るうが、シュヴァルツは両手剣で二体のゴーレムの攻撃をはじき、片方のゴーレムに袈裟斬りして、金属音を響かせる。


「万物の根源たるマナよ 大地の手となりて 我が敵を掴め 大地の掴み手(アースハンド)!!」


 僕は呪文を唱えて、両手を高く振り上げて物を掴むように手を握りしめると、僕の腕の動きに合わせて床から土でできた手が二つ現れ、ゴーレムを掴んで握りしめる。


 僕が生み出した土くれ手に掴まれたゴーレムは拘束から逃れようと藻掻くが、土くれの手はびくともしない。


「マスター、サポートありがとうございます!!」


 僕の魔法によって拘束されたゴーレムを倒すのはシュヴァルツにとっては赤子の手をひねるぐらい簡単なことで、ゴーレムが動かなくなるまで切り刻む。


「ここまでして何を守りたかったのだろう?」


 シュヴァルツに切り刻まれて鉄の残骸となったゴーレムを見ながら僕は扉を調べる。

 探知の魔法を使えばここにも施錠の魔法がかけられていたので、開錠の魔法で解除してドアを開ける。


「本にメモリーストーン?」


 最奥の部屋は書斎になっており、右側には本が、左側にはメモリーストーンの水晶が安置されていた。


「あー……うん、これは……」


 本をひとつとって内容を確認すると、いわゆるこの世界の艶本だった。

 表紙には何々の歴史についてなんてタイトルがついているが、カモフラージュの為のカバーのようだ。


 メモリーストーンに魔力を通して録画した内容を確認すれば、そっち系の映像が収められていた。


「死んだ人のパソコンのハードディスクを見た気分だなぁ……」


 元の持ち主さんも死後に自分のお宝を見られるとは思っていなかっただろう。

 何とも言えない気分で僕達は地上階に戻ると、別荘の外でうろうろしているベンケットを見つけた。


「おおっ! 無事だったんですね!」

「まあ、なんとか」


 ベンケットは僕達の姿を見るとほっとした様子で近寄ってくる。


「ところで、あのお化けは?」

「あれはお化けじゃなくてゴーレムです。たぶん死んだ前の持ち主が設置した門番みたいなものでしょう。壊しちゃったけど」


 ベンケットは僕達の状態をみて、無事であると確認するとあの開かずの間にいたゴーレムについて聞いてくる。


「仕方ありません。それに譲渡前に脅威を排除していただいたと思えば逆にお礼を言いたいぐらいですよ。ところであの開かずの間、何があったんです?」

「えーっと……どう言ったらいいのかなぁ……その……」


 ベンケットは脅威が排除されたと聞くとほっと胸をなでおろし、奥の部屋に何があったか聞いてくる。

 僕は必死に考えて言葉を選びながら、前の持ち主のお宝秘蔵コレクションについて説明する。


「……管理人としてそれは目を通して確認しないといけませんね!」


 あの部屋にあったものが何なのか伝えると、ベンケットはきりっとした顔で確認しなくてはというが、直ぐに表情が緩んで鼻の下が伸びていく。


 とりあえず、あの部屋のコレクションをどうするかは僕達の仕事の範疇ではないので、ベンケットに任せることにした。

 最後までお読みいただきありがとうございます。

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