第三十一話 戦士の塔の探索後編
新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
考古学者レイル・モーディンの依頼でバグベアードの帝国の遺跡探索の依頼を受けた僕達は偶然バグベアードを埋葬する戦士の塔を見つけ、調査をする。
エントランスホールには東西と北に通路があり、東西の部屋を探索し終えた僕達は北側の通路に足を踏み入れる。
「こっちは細長い通路になっているようですね」
「見たまえ、所々かけているが壁画があるぞ。どうやらこの奥に埋葬されている位の高い戦士の戦歴を称える壁画のようだな」
細長い石造りの壁には所々欠けているが、いろんな戦いのワンシーンを描いたと思われる壁画があった。
レイルが言うにはこの奥に埋葬されている位の高い戦士の戦歴を称えているらしく、数多くの壁画があることから戦場から戦場へと転々していたのだろう。
細長い廊下の突き当りには石造りの部屋があり、朽ち果てた木製のドアが倒れている。
光球の一つを部屋に向かわせると。部屋の中は大量の蜘蛛の糸で覆われており、天井から部屋に近づいた光球に向かって蜘蛛の糸が吐き出され、光球が巻き取られていく。
「ひっ! くっ、蜘蛛!!」
「ここにもモンスターがっ!」
「二人とも下がって!」
「お嬢様お下がりを」
天井から伝い下りてきたのは二匹の巨大な蜘蛛……と言っても道楽者ダーヴィスの依頼で探索した遺跡のアビススパイダーよりは小さく、大型犬サイズほどだった。
「万物の根源たるマナよ 蟲を殺める必滅のガスとなれ! 殺虫の霧!!」
レイルとキルスが下がったのを確認した僕は殺虫魔法を石造りの部屋に向かって放つ。
石造りの部屋の中はすぐに殺虫成分のある霧が充満し、二体の蜘蛛と、部屋の中に隠れていた握り拳大サイズの子蜘蛛がぼとぼとと地面に落ちてあおむけに倒れる。
「す……すさまじい魔法だな……それよりもルーシェス、随分と魔法を使っているが、大丈夫なのか?」
「ん? 全然大丈夫だよ。まだまだ余裕あるよ」
「そ……そうか、それならいいんだ。疲れたらすぐに言ってくれ。君の魔法が護衛の要なんだからな」
ほとんど出オチ状態だった蜘蛛のモンスターを倒すと、レイルが唖然とした顔で声をかけてくる。僕が全然平気だというとレイルは目を見開き驚いた顔でねぎらってくれる。
「蜘蛛の巣が邪魔で先に進めませんね……」
「ならこれを使ってください」
シュヴァルツが部屋の様子を伺い、蜘蛛の糸がみっちりと詰まった部屋を見て呟くと、キルスが松明を取り出してくる。
シュヴァルツは松明に火をつけると、蜘蛛の巣を焼き払っていく。
「ここは元は墓守の部屋か? 他の糸も焼いてくれ」
「わかりました」
蜘蛛の巣を焼き払うと朽ち果てたテーブルやイス、ベッドと思われる残骸が現れ、進行方向側の壁にさらに奥へと続く通路が現れる。
レイルが残骸を調べて部屋の用途を推測し、蜘蛛の糸でくるまれた繭のような塊も焼くように指示してくる。
「ひっ!?」
「うわ~……気持ち悪いなあ」
蜘蛛の糸でできた繭を焼くと、中からミイラの様に干からびたネズミの死骸や人型生物の死体が出てくる。ここにいた蜘蛛の犠牲者たちだろう。
「この死体は比較的新しいですね……」
繭を焼いていたシュヴァルツが死骸の一つを松明で指さす。覗いてみれば他の死骸と違ってミイラ化しておらず、その表情は恐怖と苦痛に歪んでいた。
「これは……死霊王ベグナの聖印っ! ネクロマンサーかっ!?」
「なにっ!?」
「太陽神アルテナよ、どうか我らを悪しき手から守り給え」
シュヴァルツが死体を調べると、首飾りの刻印を見て叫ぶ。
レイルとキルスも死体に駆け寄り、刻印を確認すると神に祈りを捧げ始める。
「ベグナって?」
「グラウス帝国時代の魔法使いで、禁呪法でノーライフキングになった邪悪なネクロマンサーです。その強大な力から 神格化してネクロマンサーから崇められています」
ベグナが誰なのかシュヴァルツに聞くと、邪悪なネクロマンサーと教えてくれる。
「死んでまだそんなに経っていないように思われます」
「どこから入ってきて、何が目的だったんだろう?」
シュヴァルツが死体を調べて死後何日か大まかに確認して、僕はこの隊がどこから来たのか気になり周囲を見渡すが、目ぼしいものは何も見つからない。
「……この奥にあるかもしれない霊廟が目的かもしれない。嫌な予感がする、二人とも急いでくれるか」
レイルは嫌な予感がするのか先に進んでほしいと催促する。
僕達はそれに同意して、先へと進む。
「やはり我々以外に戦士の塔に来た者がいるようだな」
また細長い通路を進んでいくと、途中天井に穴が開いておりそこからロープが垂れており、その穴から雨が流れ込んで水たまりができていた。
ちらりと天井の穴を覗くと、この洞穴の山頂か中腹から穴を掘ってロープを垂らして侵入してきた一団がいたと思われる痕跡があった。
「一体何が目的で?」
「ベグナの信者の目的はおそらくこの地に眠る戦士の遺体をアンデッド兵にしようとしたのでしょう」
穴を覗きながらベグナの信者と思われるネクロマンサーは何が目的でここに来たのかと首をひねると、シュヴァルツがこの戦士の塔に眠るバグベアードの戦士達をアンデッド兵にしようとしたのではと推測する。
「やつらがアンデッドを作り出しているかどうか確認しないと……すまないが二人とも先に行って霊廟がどうなっているか確認してくれないか」
レイルは親指の爪をかじりながら僕達に先に進んで霊廟を確認するように言ってくる。
「わかりました、シュヴァルツ行こう」
「御意」
僕とシュヴァルツは先行して通路を進む。
高位の戦士が祭られてると思われる霊廟の石の扉は開いており、部屋の中に入れば、石櫃は開封されておりその周りには冒涜的な儀式の跡と惨殺された死体。
石櫃の前には金属鎧に盾にモーニングスターを持った二メートル半の大柄なスケルトンがいて、ゆっくりとこちらに振り向く。
振り向いたスケルトンの目にはビジョンブラッドルビーがはめ込まれており、ルビーからは禍々しい赤い光を放っていた。
「マスター! あれはショールという上位アンデッドです! どうやら儀式が失敗して暴走状態のようです!!」
「シュヴァルツ、来るよ!」
ショールと呼ばれたスケルトンモンスターは、モーニングスターを振り上げすごいスピードでこちらに駆けよってくる。
「マスターには指一本触れさせません!」
シュヴァルツがショールに立ちふさがり、横なぎに両手剣を振る。
ショールは跳躍してシュヴァルツの攻撃を回避すると、その脳天にモーニングスターを振り下ろす。
「シュヴァルツ!?」
「大丈夫です。マスターの防護魔法でダメージは受けていません」
金属同士がぶつかり合う音が霊廟に響き、ショールのモーニングスターがシュヴァルツの兜に命中するが、事前にかけた魔法の盾の呪文のおかげでシュヴァルツにはダメージはなく、逆に体当たりでショールを吹き飛ばす。
シュヴァルツの体当たりで吹き飛ばされたショールは空中でくるりと一回転すると、モーニングスターを地面にこすりつけてブレーキ代わりにして着地する。
「万物の根源たるマナよ 矢となりて 我が敵を討て 魔法の矢!!」
すかさず僕が十本の魔法の矢をショールに向かって撃ちだす。
ショールは右に逃げながら矢を回避しようとするが、自動追尾能力のある魔法の矢は軌道を変えてショールを追いかける。
回避しきれないと思ったショールは盾で魔法の矢を防いでいく。
「魔法が防がれた!?」
「どうやらあの盾は魔法を減退する能力か何かあるマジックアイテムのようですね。とはいえ、マスターの威力をすべて防げたわけではないようですが」
僕の魔法の矢が盾に命中するたびに小規模な爆発が起きて、ショールが吹き飛ぶ。
十発のうち何発かは命中してダメージを与えたようだが、まだショールは健在だ。
ショールはモーニングスターで地面を打ち付けると、地面から尖った石の礫が浮かび上がり、お返しとばかりにこちらに向けて撃ち、同時に距離を詰めようとまた走り出す。
「マスターには指一本触れさせないと言ったはずだ!!」
シュヴァルツは石つぶてを全身で受けながらショールに向かって走り、両手剣を振るう。
ショールは盾でシュヴァルツの攻撃を受け止めようとするが、シュヴァルツの膂力に押し負け吹き飛ぶ。
「万物の根源たるマナよ 回転刃の柱となりて 我が敵を粉砕せよ! 回転刃の柱召喚!!」
僕は呪文を唱えて杖で地面を叩くと、ショールが吹き飛んだ方向に無数の鋭い刃が付いた柱が地面から生えてくるように二本現れ、ショールを二本の柱の間に挟み込むと柱が回転してショールを装備ごと粉砕して、残骸を霊廟にまき散らす。
「倒した?」
「お見事です、マスター」
ショールを倒した僕達はレイルを呼び戻し、霊廟の調査を再開する。
「なんてことだっ! 歴史的遺物が汚されてるっ!!」
現場を見たレイルは信じられないちう顔で絶叫し、死霊王ベグナに対してこれでもかという位に文句を言う。
「塔という割には一階しかないですね」
「ん? ああ、一階が霊廟など遺体を安置することになっていて、その上は置物だったらしいぞ。ここはおそらく山を塔に見立てて内部を掘ったんだろう」
霊廟を調査していてふと僕が疑問に思ったことを口にすると、レイルが塔の意味を教えてくれる。
「とりあえず調査はここまでだな。神殿に報告してベグナのネクロマンサーが儀式を行っていたことを報告しないとな。二人ともありがとう、ここで一夜を明かして雨が止んだらセブンブリッジに帰ったら依頼完了だ」
レイルはある程度調べて満足したのかレイルは調査を切り上げて依頼終了を宣言する。
エントランスホールで一夜を過ごした。翌朝は前日の激しい雷雨など嘘だったような晴天で、僕達はまた魔動車に乗ってセブンブリッジへと帰還した。
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