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一時転生先で冒険者スローライフ  作者: パクリ田盗作
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第三十話 戦士の塔の探索前編


 考古学者レイル・モーディンの依頼でバグベアードという人型モンスターの帝国の遺跡、戦士の塔の探索依頼を受けた僕達は、探索中激しい雷雨に遭遇し洞穴に避難する。


 避難した洞穴が偶然にも目的地である戦士の塔の一部であることが分かった僕達は遺跡内の探索を開始する。


「ふむ……グラウス帝国設立前にもこのような建築技術があったとは……」


 レイルはマジックバッグから調査道具を取り出すとエントランスフロア内をくまなく調べる。

 使用人のキルスはレイルの傍に仕え、レイルが要求する道具を手渡したりして調査を補助している。

 僕達は雷鳴でパニックになったネズミの死骸を洞穴の外に投げ捨てて二人の護衛をする。


「シュヴァルツ、グラウス帝国って?」

「魔王と勇者が死闘を繰り広げた終末戦争後にエリン大陸を統一した人族の帝国です。現在の国々はグラウス帝国の皇室の末裔や地方領主が独立して設立されたと言われています」


 時折聞こえてくるレイルの独り言でグラウス帝国というワードが気になり、シュヴァルツに質問すると、この世界を統一した大帝国だという。

 地球のローマ帝国みたいなものかと思いながら、レイルからの指示に合わせて光球を操作したりして護衛を続ける。


「横は大体調べた、次の場所へ移ろう。そうだな……あちらを調べたい」


 エントランスフロアの調査に満足したのか、レイルは右手の部屋を調べたいという。

 シュヴァルツが先頭に立って右手の部屋に行くと、部屋の中央に石櫃が鎮座している小部屋に到着する。

 床にはネズミたちの足跡や糞しかなく、長い年月積もった埃以外に装飾品らしいものはない。


「ふむ? この部屋はなんだ? バグベアードは死者を尊び、墓は装飾品で奉られていると言われているが……何もないな?」

「あっ! 部屋の安全を確かめる前に入らないで!」


 部屋の入り口から中の様子を見ていると、レイルがずかずかと部屋に入っていく。

 ぎょっとした顔で僕達も中に入るが……どうやらトラップの類はないようだ。


「む? これはすまない……知的好奇心が押さえられなくてな」


 僕達の注意を受けて反省する様に謝罪するレイル。だがその視線はこの部屋を調べたいのかキョロキョロして部屋の様子を見ている。


「やはり無骨な石櫃以外何もないな……シュヴァルツ、この石櫃を開けられないか?」

「シュヴァルツ頼める?」

「承知しました。万が一のことを考えて、皆さんは部屋の外へ」


 小部屋を調査したレイルは何もないことを再確認すると、部屋の中央に鎮座する無骨な石櫃を開けるように頼んでくる。

 僕達が離れたのを確認すると、シュヴァルツが石の蓋をずらして開封していく。

 半分近く石の蓋がずらされるとカチンとスイッチのような音がして、石櫃の中からシュヴァルツに向かってダーツの矢が発射される。


「シュヴァルツ!?」

「大丈夫です、鎧が防いでくれました」

「ふう……無事でよかった」


 僕はぎょっとするが、シュヴァルツは鎧に防がれて先端が折れたダーツを掴んで見せる姿を見て、僕達はシュヴァルツの無事な姿を見てほっと胸をなでおろす。


「石櫃の中には骨と装飾品と金貨がありますね」

「ふむ? 外側が一切装飾されていないことから身分の低い戦士か、不名誉な死に方をした戦士か? 何も記述がないのがもどかしい」


 シュヴァルツが石櫃の中身を伝えると、レイルがのぞき込みブツブツと推測を呟く。


「とりあえず約束通り、こちらの装飾品は貰う。金貨は……数枚調査用に回収して残りはそちらに渡そう。さて、ここはこれ以上調べられるところもないし、反対側の部屋を調べようじゃないか」


 レイルは石櫃から装飾品などを回収していき、今度はエントランスホール左側にあった部屋へと向かう。

 反対側の部屋も左側にあった小部屋と同じ広さで、壁際に石櫃が垂直に立てるように奉られていた。

 左側とは違い、こちらの石櫃には蓋に剣を持った人型生物の彫刻が施されていた。


「これは興味ぶかっ……ぐえっ!?」

「お嬢様、勝手に入ってはいけないと怒られたばかりでしょう」


 レイルは僕達が調べる前にまた勝手に部屋に入ろうとして、キルスが注意しながら襟首を掴んで引っ張り、潰れたような声を漏らす。


「キルスっ! 止めるにしてももう少し主人を敬った方法とかあるだろうっ!」

「十二分に敬っていますとも」


 レイルは咳き込みながらキルスに文句言を言い、キルスはレイルからの叱責を受けながらもしれっとした顔をしている。


「とりあえず僕達が調べますから、お二人はここでお待ちを」


 二人を部屋の外に残してシュヴァルツを先頭に僕達は部屋に入る。すると、石櫃の彫刻の顔からまるでCGのように生物が生まれ出る。

 石櫃の顔から生まれ出たのは髭の生えた土色の生首、その表情は苦悶に歪み、その目は眼球の代わりに炎が宿っている。こめかみからは蝙蝠のような皮膜の羽が生えて空を飛び、髪の毛と髭は蛇の様にうねっていた。


「あれはヴァルーグ! 魔王シディアスがこの世に呼び出した悪魔です!」

「なんでそんなのがこんなところにっ!?」


 シュヴァルツがこの奇怪な空飛ぶ生首の正体を叫び、僕はなんでそんなのがここにいるんだと思った。


「アアアアアアアーーーーーッッ!!!」

「うわっ!?」

「しまったっ! ヴァルーグの金切り声には金縛りの効果があります! 耳を塞いで!!」


 ヴァルーグは耳まで裂けた口を開くと、金切り声を叫ぶ。

 シュヴァルツはとっさに僕の耳を塞いで、ヴァルーグの金切り声の特殊攻撃について叫ぶ。


「レイルさん達は!?」

「残念ながら金切り声の範囲にいて間に合わなかったようですね。とはいえ金縛りは短時間です。さっさと片付けましょう」


 レイル達の状況を確認しようと部屋の入り口を振り向けば、レイルとキルスは身体を硬直させて転倒しており、うめき声をあげている。

 シュヴァルツは時間がたてば金縛りは解除されると言い、ヴァルーグの撃破を優先する。


「アアアアアーーー!!」

「ヴァルーグの牙には毒があります! 気を付けて!」


 ヴァルーグが自分の金切り声が効果なかったのが悔しいのか僕とシュヴァルツを睨み、叫び声をあげて襲ってくる。

 シュヴァルツがヴァルーグの鋭い牙には毒があると注意し、両手剣を振るう。

 ヴァルーグは高度をとってシュヴァルツの攻撃をかわし、金縛りにあっているレイルとキルスの方に向かおうとする。


「いけないっ! ヴァルーグは金縛りにあった犠牲者の体液を吸って殺します! ヴァルーグに体液を吸われて死んだ犠牲者は新たなヴァルーグとなってしまいます!」

「万物の根源たるマナよ 鋭き歯となりて 我が敵を噛み砕けっ! 鮫口(シャーク・トュース)!!」


 シュヴァルツがヴァルーグの狙いを叫び、それを阻止するために僕は呪文を唱えるとエネルギー状の鮫が二匹現れ、ヴァルーグに襲い掛かる。


「アガッ!? アアアアアア!!!!」


 僕の魔法によって生み出されたエネルギー状の鮫はヴァルーグに群がり、その鋭い歯で噛み砕いていく。

 ヴァルーグは肉片と血飛沫をまき散らし、断末魔の声を上げてその体が灰になって散っていく。


「ふう……何とか間に合った」


 まさか自分たちの上を通り越してレイル達を狙ってくるとは思わず、僕はほっとしてその場に座り込む。


「ふう……今回は君たちを雇って正解だったよ。まさかアビスモンスターがいるとは思わなかったよ」

「我々を守っていただきありがとうございます」


 金縛りが解けたレイルとキルスが改めて僕達に礼を述べる。


「キルス、お前にも感謝する。君の忠言を無視していたら今頃私は死ぬよりも恐ろしいことになっていたよ」

「もしかして最初は護衛なしで探そうとしたの?」

「ええ、お嬢様は護衛が来る時間すら惜しいと言ってまして、待っていただくように説得するのはいささか骨が折れました」


 一息ついたところでレイルはキルスに礼を述べる。二人のやり取りを見て聞いてみれば、案の定レイルは知識欲を優先して護衛なしで戦士の塔の調査をしようとしていたのをキルスが必死に説得していたらしい。


「……何となく情景が思い浮かぶよ」

「わかってくれますか」

「……ごほん! ほら、脅威もなくなったんだ、調査しようではないか」


 僕がその様子が思い浮かぶと苦笑しながらつぶやくと、苦労わかってくれますかとキルスがため息をつく。

 いたたまれない空気を追い払うようにレイルは咳払いして部屋の調査をしようとする。


「この装飾の類から……この部屋に埋葬されてるのは隊長クラスの戦士と思われるな」

「階級によって違うんですか?」

「うむ、将軍クラスともなればもっと広い部屋で追死した兵士たちと一緒に埋葬されていたりするらしいぞ」


 立てかけられた石櫃を調べながらレイルはバグベアードの帝国の埋葬に関する文化を語ってくれる。

 僕はレイルの説明を聞いて、将軍クラスの墓は兵馬俑みたいなものかなと想像する。


「さて、この石櫃を開けてくれるかな?」

「万物の根源たるマナよ 不可視の盾となりて かの者を護れ 魔法の盾(マジックシールド)! よし、シュヴァルツお願い」

「承りました。離れてください」


 ある程度表面の調査を終えたレイルは石櫃を開けてくれと頼み、僕はトラップが発動してもいいようにシュヴァルツに魔法の盾(マジックシールド)を付与して開けっるようにお願いする。

 シュヴァルツが石櫃の蓋を開けるが、こちらにはトラップが仕掛けられていないか経年劣化で発動しなかったのか何も起こらない。

 石櫃の中には骨とおそらく生前愛用した武具の残骸。多数の金貨と指輪が見つかった。


「ふむ……この指輪は資料として私たちが貰う。金貨はそっちが持って行ってくれ」


 レイルは骨から指輪を外し、光球に近づけて宝石を鑑定したりすると、マジックバッグに収納し、金貨をこちらに投げる。


「この調子で残りの部屋も調べるぞ」


 そういってレイルは出ていき、僕達も後を追った。


 最後までお読みいただきありがとうございます。

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