第二十二話 帰還と報酬の山分け
「おう、戻ってきたか? お宝について何かわかった?」
遺跡で一夜を明かしてベースキャンプに戻ってくると、スパイク船長が出迎えてくれる。
「見つけて回収してきましたよ」
「……聞き間違いか? お宝見つけて回収してきたって聞こえたんだが……お前ら手ぶらだよな?」
僕が回収してきたというとスパイク船長は耳をほじって聞き返し、僕達の荷物とか確認する。
「一部だけどほら」
「うおおおおおっ!?」
僕は指輪のアイテムボックスから装飾品のティアラやネックレスを取り出す。
スパイク船長は僕の指輪がアイテムボックスになってるとは知らなかったのか、宝石部分から物がにゅるんと出てくるのを見て腰を抜かしている。
「まさかたった一日で見つけるとは思わなかったぜ……さすがダーヴィスの旦那が雇った冒険者の事だけあるな! ちょっと頼みがあるんだがいいか?」
スパイク船長は財宝と僕達を交互に見て唖然としていたかと思うと手放しに誉めて頼みごとをしてくる。
「内容によりますけど……」
「帰りでいいからよ、舵に触ってくれねえか? 頼む!」
「それぐらいいいですけど……何か理由あるんですか?」
スパイク船長の頼み事は船の舵に触ってほしいという物。何か意味があるのかと聞くと、スパイク船長曰く一種のゲン担ぎのようなもので、幸運に恵まれた人に舵を触れさせると海難事故にあいにくくなるらしい。
そんな話をしながらもベースキャンプを撤収して僕達はスクーナー船のコーラル号へと戻る。
帰りはゲン担ぎのおかげなのかモンスターに遭遇することもなく快晴の海を進んでいき、夕方にはセブンブリッジへと帰港できた。
一夜明けて翌日、僕達はダーヴィスが住む邸宅へと依頼完了報告に向かう。
ダーヴィスの邸宅はセブンブリッジから少し離れた小高い丘の上にあるプレイリー様式の低く水平方向に広がるような邸宅だった。
「まさかこんな早い期間で依頼を達成するとは思いませんでしたな。まずは無事に帰還できたことを喜びましょう」
燕尾服姿のダーヴィスがもろ手を挙げて僕達を歓迎する。
「こちらが冒険の様子を録画したメモリーストーンです」
「おおっ!!」
メモリーストーンに魔力を流して今回の探検の様子を録画した映像を再生すると、ダーヴィスは子供の様に目を輝かせて映像に見入る。
モンスターの戦闘ではプロレス中継に熱狂するファンの様にそこだ行け!と叫んで応援したり、巨大な滝の映像には言葉を失って見つめ続け、遺跡内でのギミックには手に汗握り息を飲むという感じで見ていた。
「まさか終末戦争時代の遺跡だったとは……それに伝承でしか知らない魔王のモンスターが生き残っているなんて……こんなにドキドキしたのは久しぶりですよ……」
映像を見終わったダーヴィスは疲れたようにソファーに座り、喉を潤すように紅茶を飲む。
「遺跡で見つけた財宝ですが、どこに出せばいいでしょうか?」
「ふむ……庭でいいんじゃないかな?」
セブンブリッジでも有名な金持ちなせいか、財宝の話をしてもダーヴィスは適当な感じで答える。
庭にランチマットのようなものを敷いてその上にあの遺跡で手に入れた財宝をアイテムボックスから吐き出す。
財宝は終末戦争時代の金貨や銀貨、ティアラやネックレスのような装飾品にそこそこ大きな宝石の類。
「では当初の契約通り財宝は山分けとしよう。鑑定して詳細と報酬をギルドに送ることでいいかね?」
「ええっと……」
僕とシュヴァルツだけならそれでもよかったが、モヒーカーン達の反応を伺う。
「おれさ……んんっ、私たちもそれでいいです」
「では、依頼完了の木札を」
モヒーカーンが慣れない敬語で査定を終えてから報酬をもらうことに承諾し、依頼完了の木札を貰う。
「最後にもう一度だけ再生してくれないか? あ、君何か軽く摘まめるものを頼む」
帰ろうとするとダーヴィスに呼び止められてもう一度メモリーストーンの映像を再生する様に言ってきて、近くにいたメイドに軽食を頼んでいる。
メモリーストーンをもう一度再生した後、僕達は冒険者ギルドに報告に向かう。
「おや、もう帰ってきたのですかワンニャン?」
冒険者ギルドに足を踏み入れると、受付嬢のベスティアが声をかけてくる。
「依頼は完了です」
「それじゃあ皆さんのプレートの提出お願いしますワンニャン」
プレートに刻まれる依頼請負数と成功数はこれで四。あと六回でアイアンランクの試験を受ける事が出来る。
「ふう……あとは鑑定であの財宝がどれくらいになるかだな、ヒャッハー」
「そろそろ武器を買い替えたい」
依頼完了の手続きを終えると、僕達は仕事から解放され大きく伸びをしたりする。
モヒーカーンは報酬の皮算用をして、セガールはアビススパイダーとの戦闘で損傷した装備の更新を口にする。
「いや~しっかし、魔法使いがいると便利っすね。なあルーシェス、このまま俺達と活動しないっすか?」
「あ! それいいかも! ルーシェス君チーム組もうよ」
マガミが僕達をチームに誘い、ナイスアイデアとルビィも賛同する。
「うーん……お誘いはありがたいですけど、僕達はやることあるんで」
「私はマスターに仕える身なので、離れるわけにはいきません」
チームに誘われるのは嬉しいが、僕自身団体行動はあまり好きじゃないし、自分のペースで仕事を受けたりしたい。
マガミとルビィはならばせめてシュヴァルツだけでもと見つめるが、もともとこの世界のガイドとしてあの神様から遣わされているので僕から離れるわけもなく、勧誘を断る。
「そういわずにさ~、やることも人手があったほうがいいっすよ?」
「マガミそれぐらいにしておけ。あんまりしつこいとハグレと思われるぞヒャッハー」
マガミは諦めたくないのか僕の肩を揉みながら勧誘を続けるが、モヒーカーンが止めに入る。
「でもリーダー、魔法使いっすよ! これまでの仕事でルーシェスとシュヴァルツさんが頼れるかリーダーもわかってるはずっすよ!」
「それでもだ。また仕事があったら臨時のチーム組んでくれるだろ? なあルーシェス?」
マガミは必死に僕達をチームに加入させたいみたいだが、モヒーカーンは僕の意見を尊重してくれるように言ってくれる。
「今回みたいな臨時なら喜んで!」
「うう~~、もったいないっす……でも仕方ないっすね……」
臨時でならいつでもというと、後ろ髪ひかれるような口調でマガミも渋々納得してくれた。その後は僕達は解散し、鑑定結果が出るまでの間僕は休みを入れてシュヴァルツと観光したり観劇したりして過ごす。
依頼完了報告から三日後、冒険者ギルド経由でダーヴィスに渡した財宝の鑑定結果が届き、報酬が届いた連絡が来る。
冒険者ギルドに迎えば、そのまま二階の会議室へと通されモヒーカーンのチームとダーヴィスの屋敷で見た家令がいた。
「全員揃ったので報告させていただきます」
家令は全員が揃ったのを確認するとメモ帳を確認しながら財宝の鑑定結果を教えてくれる。
「皆様の取り分は依頼料合わせてドラゴン金貨六千枚になります。さすがに金貨だと重すぎるのでムーン白金貨で支払わさせていただきます」
家令はそう言って袋を六個銀のトレイから机の上に置く。
袋を開けて中身を確認すると、表面にはセブンブリッジの街並み、裏面には大海原を進む船の彫刻が刻まれた三日月の形をした白金貨が入っていた。
「ムーン白金貨なんて初めて見たっす……」
「これ使えるところあるのかなぁ……」
マガミとルビィがムーン白金貨を呆けた様子で見つめて呟き、モヒーカーンとセガールは小袋を素早く懐にしまった。
「確かにお渡ししました。これで失礼します」
家令は報酬の支払いが終わると一礼して出ていく。
「これだけあればドワーフ製の装備が買えそうだな……ヒャッハー……」
モヒーカーンもこんな大金持ったことないのか、心ここにあらずといった気の抜けた声でヒャッハーと呟く。
「ドワーフ製?」
「ドワーフ達によって製造された装備です。高品質で武芸を嗜むものなら一つは所持していたい憧れの装備ですね。ただ……ドワーフ製の剣一本でも最低ドラゴン金貨五百枚はします。さらにドワーフの名工なんて言われる人の品なら今回の報酬でも買えるかどうか……」
シュヴァルツがドワーフ製の装備について教えてくれる。いわゆるブランド品のようなものだろうか。
報酬の振り分けを終えて解散となったが、あまりの大金にモヒーカーンチームは周囲が泥棒に見えるのか挙動不審になる。
「そういった大金預けられる場所とかないの?」
「手数料は取られるが、冒険者ギルドが貸金庫もやってる。今回はそっちに預けることにする。さすがにこの大金は心臓に悪いぜヒャッハー!」
「ルーシェスはそれがあるから問題ないかもしれないっすけど、場所によっては報酬を受け取った後を狙う強盗とかもいるっす。気を付けたほうがいいっす」
僕が苦笑しながら銀行のようなものがないのか聞くと、モヒーカーンが冒険者ギルドが預かり業務も行っていると教えてくれ、マガミが依頼報酬を狙った強盗もいると教えてくれる。
「僕もあの時モヒーカーンさんに助けてもらわなかったら奪われた」
「そんなこともあったなあ、ヒャッハー!」
ルビィがその強盗未遂にあったことを喋り、モヒーカーンが懐かしむようにうんうんと頷く。
「俺様達は装備の新調などでしばらくは休ませてもらうぜ。保護者がいるから大丈夫だと思うが、奪われるなよヒャッハー!」
モヒーカーンのチームは今回の報酬で装備をドワーフ製の武器とかに新調するようだ。
ドワーフ製の装備は受注生産らしく、出来上がるまではしばらく冒険者稼業を休むらしい。
去り際にモーヒーカーンが盗まれるなよと注意して僕達は別れた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
面白いと思った方はブックマークや下記のポイント評価などしていただけたら幸いです。




