第二十一話 奈落の蜘蛛と財宝
遺跡のギミックを解除して地下へと続く螺旋階段を下りていく。
「道はこっちに続いているっすね」
螺旋階段を降りると、細長い通路がまっすぐに伸びていた。
マガミが先行し、中腰で長い棒で通路の床や壁を突きながら罠の有無をチェックする。
「俺がチョークで囲んだ場所は絶対に踏んだり触れたりしないでほしいっす」
マガミは所々をチョークで丸を書き込んでいく。
僕が見た限りでは違いが全く分からないタダの床にしか見えない。
「ここよく見て。埃で筋が出来てるでしょ? 加圧式のトラップスイッチで、踏んだら罠が発動するんだよ。こういうのってどうしても隙間ができてしまうから年月の経った場所だとほこりなどで見分けがつくんだよ」
チョークで囲んだ場所をまじまじと見ていると、ルビィがトラップの見分け方を教えてくれる。
言われれば違いが分かるが、かなり目を凝らしてみていないとわからないような違いだった。
マガミがチェックを入れたチョークの丸部分を避けながら通路を進んでいくと、また広い空間に出る。
「ここは……」
「神殿のようですが……どうやら大昔にここで大規模な戦闘があったようですね」
踊る光球で壁を照らすと壁画が描かれているが、破壊の跡や血痕が染みになった跡があちらこちらに見受けられる。
シュヴァルツがその痕跡を見て、かなりの規模の戦闘があったと推理する。
「おい、あれを見ろっ! お宝だぜヒャッハー!!」
神殿内を探索していたモヒーカーンがある方向を指さして叫ぶ。
モヒーカーンが指さした方向には金銀財宝の山があり、踊る光球の光に照らされて黄金に輝いている。
「うっひょー! お宝っす!!」
「っ! あぶないっ!!」
マガミが財宝に駆け寄ろうとすると、セガールが何かに気づいてマガミに飛びついて押し倒す。
同時にマガミがいた場所に巨大な生物が落ちてきて、地響きと土煙を巻き上げる。
「なっ……なんなんっすか!?」
土煙の向こうからは赤く光る八つの光と蜘蛛と思われるシルエット。
ただそのサイズは全長五メートルはありそうな巨体だった。
徐々に土煙が晴れてきて、その巨大蜘蛛の姿が露わになる。
毒々しい紫色の体色に無数の黒い斑点。並外れた体格の不格好な巨大蜘蛛は赤く光る八つの目でこちらを睨んでくる。
「アビススパイダーです!!!」
「んなっ!? あれが終末戦争時代の魔王が呼び出した奈落の蜘蛛だとおおっ!?」
シュヴァルツが巨大蜘蛛の正体を叫ぶと、モヒーカーンが驚愕した表情でシュヴァルツを見る。
「ギシャアアアアアア!!!」
「ひっ!?」
「うっ……うわああああ!!!」
「いやあああああ!!」
「うああああああ!!!」
アビススパイダーが耳を塞ぎたくなるような轟音で雄叫びを上げる。
すると、モヒーカーン達が悲鳴を上げて恐怖にひきつった顔でアビススパイダーから少しでも遠くに逃げようとする。
「アビススパイダーの雄叫びは心が弱いものに恐怖を与えますっ!」
急に悲鳴を上げて逃げ出したメンバーを見て何事かと思っていると、シュヴァルツがアビススパイダーの特殊攻撃について教えてくれる。
「万物の根源たるマナよ 戦士たちの心から恐怖を取り除け 恐怖の除去!!」
「……こっ……怖くなくなったっす?」
「へへへ……恥ずかしい所見せちまったなヒャッハー!」
「怖く……ない?」
「……失態は行動で償う」
僕は杖を掲げて呪文を唱える。杖の先端から光が放たれて、光を浴びたモヒーカーン達の恐怖に歪んだ表情が和らいでいく。
「ギシャアアアア!!」
アビススパイダーは恐怖の雄叫びを解除されたと認識すると、僕に向かって駆け寄ってくる。
「させませんっ!!」
シュヴァルツが僕を守るようにアビススパイダーの前に立ちふさがると、脚の一つに両手剣を振り下ろす。
「ギョアアアアアア!」
今までモンスターを一刀両断してきたシュヴァルツの両力で振り下ろした両手剣でもアビススパイダーの脚を切断することはできなかった。
それでも脚の半分にまで両手剣がめり込み、体液が噴き出して悲鳴のような声を上げる。
「ルーシェス! 今のうちに逃げるっす!!」
「こっち!!」
マガミとルビィがけん制する様にクロスボウと弓で攻撃するが、二人の矢は刺さらず金属音を響かせて弾かれる。
それでも気をそらすことはできたのか、僕はアビススパイダーから距離を取ることに成功する。
「うげっ!? 全然ダメージ与えられねえっすよ!?」
「なんでっ!?」
「アビススパイダーは魔法の武器じゃないとダメージを与えられません! マスター、彼らの武器を魔法で強化してくださいっ!!」
シュヴァルツはアビススパイダーの特徴を叫びながら、何度も脚に攻撃しする。アビススパイダーは自分の足元をうろちょろして傷つけるシュヴァルツを排除しようと足で踏みつけようとしたり、鋭い口牙で噛み砕こうとする。
「ルーシェス頼むぞヒャッハー!」
「任せて! 万物の根源たるマナよ 聖なる力となりて その刃に宿れ 聖なる魔法武器付与!!」
シュヴァルツの叫びを聞いたモヒーカーン達が僕に武器を差し出す。
僕は呪文を唱えて、杖でモヒーカーン達の武器に触れると、モヒーカーン達の武器が聖なる光で輝く。
「うおっしゃああ! これでもくらうっす!」
「今度はこっちの番だからっ!」
「ギュワアアアアアッ!!!」
マガミがクロスボウを、ルビィが弓を撃ち出すと、先ほどとは違って弾き返されずにアビススパイダーの体にボルトや矢が突き刺さる。
「刺さったっ!!」
「よっしゃあ! いけるっすよ!!」
「俺様達も行くぜヒャッハー!」
「シュヴァルツ、加勢する!」
攻撃が効いたことにガッツポーズをとるマガミとルビィ。それを見てモヒーカーンとセガールもアビススパイダーの元へと駆け出す。
「ギュイアアアア!!」
「くっ!?」
アビススパイダーは糸の射出口から蜘蛛の糸を吐きだす。シュヴァルツはとっさに避けようとするが、両手剣に糸が巻き付き奪われてしまう。
武器を奪われたシュヴァルツにアビススパイダーが噛みつこうとする。
「させんっ!」
セガールが盾を投げてアビススパイダーの攻撃を塞ぐと、ロングソードを両手で持って喉元に突き刺す。
「シュヴァルツ! 俺様のを使えヒャッハー!!」
「お借りします!」
モヒーカーンが片手に持っていたハンドアックスを投げ、シュヴァルツがそれを受け取り、モヒーカーンとともにアビススパイダーの脚を攻撃する。
「ギシャアアアア!!」
何度も脚を攻撃されたアビススパイダーの脚が数本切断され、崩れ落ちる。
「皆さん離れてください! 万物の根源たるマナよ 無限の剣となりて 雨の如く降り注ぎ 我が敵を討て 魔術師の剣!!」
呪文を唱えると天井を埋め尽くすほどの魔法陣が現れ、杖を振り下ろすと同時に魔法陣から次々とエネルギー状の剣が召喚されていき、アビススパイダーに突き刺さっていく。
アビススパイダーは剣の雨から逃れようと這うが、降り注ぐ剣は追いかけるように軌道を変えて刺さっていく。
剣のハリネズミ状態になったアビススパイダーは動かなくなったかと思うと、足元から灰になって崩れ落ちていく。
「なっ……なんだありゃ……」
「アビススパイダーは元々は奈落と呼ばれる異次元から呼び出されたエネルギー生物です。奈落から現世に呼び出されたモンスター達は体を維持できないほどのダメージを受けると灰になって消滅します」
灰になって崩れていくアビススパイダーを見てモヒーカーンが声を漏らすと、シュヴァルツが灰になる原因を教えてくれる。
「なんでまたこんなモンスターがこんなところにいたんっすかねえ?」
「想像ですが、終末戦争時代ここをアビススパイダーに襲われて、犠牲を払いながら遺跡に閉じ込めたんじゃないですかね?」
「もう少しで僕達がそれを解き放つとこだったんだ……」
アビススパイダーは全身が塵となって霧散化する。
僕達はアビススパイダーが完全に消滅したのを確認して財宝へと向かう。
「凄い量のお宝っすね」
「こんなのおとぎ話の中だけだと思った」
「へへ……山分けしてもかなりの金になるぜヒャッハー!」
目の前に積みあがる財宝を見てみんな無意識に笑みを浮かべる。
「とりあえず回収して休んだら戻りましょうか」
僕達は一旦この場所で休んでベースキャンプに戻ることにした。
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