第二十話 遺跡探索
モンスターの襲撃を押しのけた僕達はさらにジャングルの川に沿って上流へと向かっていく。
「滝の音が聞こえるな」
「地図によりますと、その滝が目的地ですね」
マガミが耳を澄まして周囲の音に聞き耳を立てると、滝の音が聞こえるという。
シュヴァルツがメモリーストーンから書き写した地図を確認して、滝が目的地だと知らせる。
しばらく進むと僕達の耳にも滝の音が聞こえ始め、音の元へと向かって歩けば、途中で虹が発生してる巨大な滝の麓に到着する。
「ここが目的地か? それっぽい建物や洞窟はねえなヒャッハー!」
モヒーカーンが周囲を見回し、財宝がありそうな場所を探すが、何も見つからないと言ってくる。
「この滝の上とかだと骨が折れるっすよ」
「ここから登るには高すぎるよねえ」
マガミとルビィは滝の上に何かあるのではと見上げ、登れそうな場所を探す。
「他に何か手掛かりはないのか?」
「水の向こうに扉ありと書いてますねえ」
セガールはシュヴァルツが持つ地図を覗き込んで財宝がある場所へと向かうヒントがないか質問し、シュヴァルツが書き写した文章を読み上げる。
「水の向こう? 定番だと滝の裏に洞窟があったりするんだけどね」
「俺がちょっと調べてくるっす」
僕が滝浦らに洞窟がないかと呟くと、マガミが調べに滝に近づく。
何か見つけたのか、マガミは大きく手を振って何か叫んでいるが滝の音で声掛けされている。
「何か見つけたようだな? 行ってみるかリーダー?」
「モンスターに警戒しながら近づいてみよう」
セガールがマガミを指さしどうするか僕に聞いてくる。
僕達がマガミの元に向かうと、確かに滝裏に洞窟があった。
「確かに水の向こうだなヒャッハー! ルーシェス、明かりを頼む」
「万物の根源たるマナよ 踊る光となりて 我らの道を照らせ 踊る光球!」
洞窟の入り口を覗き込めばかなり深く、奥が見えない。
モヒーカーンに言われて僕が踊る光球という魔法の光源を生み出すと洞窟内部が照らされる。
「水と苔で濡れているっすね。滑らないように気を付けてほしいっす」
マガミは折り畳み式の棒を荷物から取り出すと組み立てて、水たまりや岩をつつきながら慎重に進んでいく。
「マガミは何してるの?」
「ああやって水たまりに何か潜んでいないか調べているんだよ。あともろそうな部分とかの確認だね」
マガミの行動をルビィに聞くと棒で危険感知を行っていると教えてくれる。
「俺が通った所を歩いてほしいっす」
マガミは棒であちらこちらを何度も突いたり、足場をしっかり確認しながらゆったりとした歩調で洞窟を進んでいく。
「人の手が入った通路っす」
体感で一時間ぐらいだろうか肌寒い洞窟の中を進んでいくと、天然の洞窟から明らかに人の手で整えられた通路に切り替わっていく。
「これは……すげえな……」
さらに通路を進むと広い空間に出る。
そこにはいくつか経年劣化で倒壊しているが、きめ細やかな彫刻が施された無数の柱が立ち並んでいる。
「これは……終末戦争の遺跡ですね……魔王から逃げ延びた人達のシェルターのようです」
「ヒャッハー! そんなことが柱からわかるのか?」
シュヴァルツが崩壊を免れた柱に刻まれた彫刻から歴史を読み解けたのか、ここがどういった場所なのか教えてくれる。
シュヴァルツの解説を聞いたモヒーカーンは感心しながら残存する柱を見上げる。
「財宝っぽいのはないっすね。もう少し奥に行ってみるっすか?」
「そうだね。もう少し調べてみようか」
マガミが周囲を探索して財宝らしいものがないとわかると、僕達は遺跡の奥へと移動する。
「床が崩れ落ちてるな……」
さらに遺跡の奥地へと進むと、床が崩れ落ちて亀裂となっている場所に到着する。
亀裂の向こうにも道があるようだが、わたる手段がない。
「ベースキャンプまで戻って梯子でも作ってここまで来るっすか?」
「ん~……あ、あそこの柱ちょうどいい大きさだし、倒したら橋代わりにならない?」
マガミがベースキャンプまで戻るかと提案すると、ルビィが亀裂手前の柱を指さして倒してみないかと提案してくる。
「試すだけ試して、ダメだったら帰還でどうかな?」
「おっし、決まりだなヒャッハー! ルーシェスとルビィ以外は手伝えヒャッハー!」
僕が方針を決めると、モヒーカーンが自分の手を叩いて気合を入れると、シュヴァルツとマガミとセガールを連れて柱を押し倒そうとする。
「よっしゃ! 押せっ!!」
モヒーカーンの掛け声と同時に男達が柱を押す。
ミシミシという音が柱の土台から聞こえたかと思うと、バキンという破壊音とともに柱が倒壊して亀裂を渡る橋代わりになる。
「よっと……うん大丈夫っす、一気に全員で登ったりしない限りは渡れるっす」
腰に命綱のロープを巻いたマガミが倒壊した柱に上って足場を確認する。
一人一人柱の橋を渡り先へと進む。
「岩の扉っすね……この鎖で開閉するみたいっす」
亀裂を渡って遺跡の奥へと進むと、今度は岩の扉によって道が塞がれている。
マガミが周囲を調べると巻き上げ式の鎖を見つけ、軽く巻き上げると岩の扉がシャッターの様に持ち上がっていく。
「鎖を放すと岩戸が下りてしまうなヒャッハー!」
「岩戸に何か挟んで閉じないようにするか」
巻き上げた鎖を離すと岩の扉が下りる仕組みになっており、誰かに鎖をずっと持ってもらうか、セガールが言ったように岩の扉の間に物を挟んで閉じないようにするしかない。
周辺にある瓦礫などを挟んで閉じれないように細工をすると、僕達は岩の扉を潜り抜けて先に進む。
「なんだこりゃ?」
岩の扉の向こうには、高さ五メートルほどの岩をくりぬいて作られたオブジェクトが立っていた。
「地図によるとこれを火鉢の様に使っていたようですね」
シュヴァルツが書き写した地図を確認すると、目の前のオブジェクトが巨大な火鉢だと伝えてくる。
「それじゃあ、火をつけてみるっす。他の人は何かあった時に備えてほしいっす。点火」
マガミが巨大火鉢の前で廃坑のゴブリン退治で手に入れた魔法の短剣のコマンドワードを唱えると、短剣の刀身が炎に包まれる。
巨大トーチの中に炎の短剣を入れると、中にはまだ可燃物が残っていたのか短剣の炎が燃え広がりあたりを照らす。
しばらくすると、トーチの炎が仕掛けを作動させたのか、壁の一部が下に収納されて通路になる。
「ふむ……天井の穴に炎によって温められた空気が集まることで装置が作動する仕組みだったのですかね?」
シュヴァルツはトーチの屋上と作動した壁の仕掛けを見てそんな感想を述べる。
「こんな仕掛けがあるってことは、お宝にも期待できるぜヒャッハー!」
「とりあえず罠とかはなさそうっすね」
モヒーカーンが興奮したように財宝に期待を募らせ、マガミが新たに表れた通路の罠の有無を調べ、何もないことがわかると進んでいく。
「行き止まりか?」
「何か仕掛けがあるみたいっすね」
新たに表れた通路を進んでいくと行き止まりに到着する。踊る光球で周囲を照らすと、床に蜘蛛、鳥、人、魚などが刻まれたパネルがある。
「正しい順に踏むと道が開けるとか?」
「あっ! あそこを見て!!」
僕がパネルを覗き込みながらそんなことを言うと、ルビィが天井部分を指さす。
ルビィが指さした場所には人の顔の彫像があり、床にあるパネルと同じ彫刻を口に咥えていた。
「あの彫像……四賢者ににてないっすか?」
「あの通り踏めばいいのか?」
「四賢者の言葉に従って道を進めと書き写した地図には書いてあります」
「四賢者? 確か東西南北を司る賢者だったよな、ヒャッハー?」
マガミが彫像が四賢者に似てないかといい、セガールが順番に踏めばいいのかと口にする。シュヴァルツが書き写した地図を読み直し、モヒーカーンが地図と彫像を見比べて四賢者が誰の事なのか言う。
「四賢者というと北の賢者が一番偉い人で、次に東、南、西だったすよね?」
「あれ? 僕は南が一番で西北東って聞いたよ?」
マガミとルビィが賢者の席次について口にするが順番が違う。
「俺様は北西南東って聞いたぞヒャッハー」
「俺は南が一番だが……東北西の順と聞いた」
さらに混乱に拍車をかけるようにモヒーカーンとセガールで順番が違う。
そこからお互いが正しいと主張し合うが……地方によって伝承が間違って伝わっているのか順番がめちゃくちゃだった。
「どれが正しいが……間違えると何が起きるかわからないのが怖いね」
「では、私が行きましょう。皆さんは端っこに退避してください」
「おっ、おいっ!?」
ここで揉めてもらちが明かないと思ったのか、シュヴァルツがパネルを踏みに行く。僕達が止める前にシュヴァルツは北の賢者を表す彫像が咥える鳥のパネルを踏む。
「っ!?」
「ヒャ……ヒャッハー、何も起きねえな?」
シュヴァルツがパネルを踏んだ瞬間、全員身構えるが特に何も起こらない。
「正解かな?」
「だとすると、次は東西どちらだ?」
「東の賢者のパネルを踏みます」
シュヴァルツは躊躇することなく東の賢者が咥える蜘蛛のパネルを踏む。
するとガコンという音がしたかと思うと、天井の四賢者の彫像が裏返って、何かの射出口が現れたかと思うとシュヴァルツに向かって雨の様に無数の矢が降り注ぐ。
「シュヴァルツーッ!!」
「よせっ、ルーシェス! お前まで巻き込まれるぞっ!!」
無数に矢が降り注ぐシュヴァルツを助けようとするが、セガールに肩を掴まれて強引に引き戻される。
「シュヴァルツ! 大丈夫なのっ? 返事をしてっ!!」
「はい、大丈夫です」
矢の雨が収まると僕はシュヴァルツに向かって叫ぶ。
シュヴァルツはケロっとした様子で僕の方を向いて返事をする。
「お、おい……本当に大丈夫なのか?」
「ええ、鎧が頑丈だったのと……経年劣化で脆くなってたんでしょうね。この通り鏃が錆びてますし、シャフト部分の木も腐ってます」
モヒーカーンが心配そうにシュヴァルツに声をかけると、シュヴァルツは落ちた矢の一本を拾って脆くなっていることを知らせる。
「はぁ~~……心臓に悪いっすよ」
「でもよかった……シュヴァルツさん、本当に怪我無い?」
「ええ、この通りピンピンですよ」
マガミがその場に座り込み大きく息をつく。ルビィが心配そうにシュヴァルツの体を見て回るが、シュヴァルツは自分の無事をアピールする。
「鎧のおかげとはいえあんまりルーシェスを心配させるなよ、ヒャッハー」
「マスター、ご心配をおかけしました。私はこの通り無傷です」
「もうっ! 心配したんだからね!!」
僕は少し半泣きになりながらポカポカとシュヴァルツを叩く。
シュヴァルツは僕に叩かれながら何度も謝り、再度パネルの仕掛けを解除に向かう。
北、西、南、東の順にパネルを踏むと、部屋の中心部の床が開いていき、地下に降りる螺旋階段が現れた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
面白いと思った方はブックマークや下記のポイント評価などしていただけたら幸いです。




