入学試験首席合格の夜。
お読み頂きありがとう御座います。
これを合わせて後2話から段々と物語が動いて行きます。
その部屋に入ると私に声を掛けて来る人が居た。
「フリューレ!良かったぁ〜平民はボク一人かと思ったよ〜!」
「ラスティアさん…ここに集められたのは一体…」
「ここに集められたのは合格者だけだよ!知らなかったのかい?」
「そ、そうなんだ…合格したんだ…」
私はホッとした。コレで故郷の皆にも良い報告が出来る。後はレイブンス子爵家にもだ…。
感激していると部屋に試験官だった男性と女性の2人やって来た。
「諸君、今年の合格者は君達17名である。私は学院講師で君達の担任のハリソン、隣は副担任アルト講師である。これから三年間、君達の面倒を見る事になる。何でも相談して欲しい」
「私は副担任のアルトよ。ハリソン講師が強面で怖いという者はワ、タ、シ、に声を掛けるようにね」
アルト講師はそう言ってウインクした。笑いが起こり空気が和む。
ハリソン講師はハイハイと言う様に苦笑しながら皆に言う。
「この様な雰囲気…リラックスして音楽を楽しみなさい。技術は君達が音楽を好きになる事と一緒に着いてくる筈だ。何故なら此処に残った君達には抜群の才能が有るのだからね」
音楽を好きになれば技術は着いてくる…か。良い言葉だなあ…。
「さて、三日後に入学式があるので本日は入学金を支払い書類を提出してから各自家に帰って良い」
三日後かあ…宿屋を探さないとなぁ…などと考えて居るとハリソン講師が私の方を見てこう言った。
「そして、フリューレ!君は今年の首席合格者で有る!三日後の入学式では代表者として演奏を披露して貰う。曲目は君に任せるのでそのつもりで来る事。良いね?」
部屋の皆がびっくりした様にこちらを見る!!
私は頭が真っ白になった。首席??この私が??完全にパニクってアワアワしてるとアルト講師が優しくこう言った。
「フリューレ君、今年の試験は貴方が圧倒的大差での首席合格だったのよ。流石はガドーラ辺境伯様のご推薦を受けただけは有るわ。素晴らしい演奏でしたよ」
この言葉に更に周りがざわめき立った。「ガドーラ様だって…?」「まさか…あの…」と皆が騒ぎ出す。やはりマリーゼル様の言った通り、ガドーラ辺境伯様のご推薦と言うだけでとんでも無い名誉なのだろう。この部屋の人達が皆驚いた表情をしていたからね…。
「せ、精一杯…演奏させて頂きます…」
「うむ、任せたぞ。さあ、皆さん事務局に案内するから付いて来るように」
ハリソン講師に皆が付いて部屋を出て行く。私が放心状態でトボトボ歩いてると後ろからラスティアさんが声を掛けて来た。
「フリューレ、凄いじゃないか!しかも君、ガドーラ辺境伯様のご推薦だったのかい?とんでも無い天才だったのだな!」
「て、天才なのかは分からないけど…小さな頃から好きで笛を吹いてただけだし…」
皆が褒めてくれる事が嬉しくて、大好きな笛を吹いていただけだからなぁ…。天才と言う事にはピンと来ないなあ…。
「これからも仲良くしてくれよな!ボクも君に負けない様に頑張るからさ!」
「もちろん!こちらこそ宜しくね。ラスティアさん」
「もう…仕方無いなあ。ボク達同級生なんだからラスティアと呼び捨てで良いよ!お互い平民同士だからさ!」
「分かったよ。宜しくラスティア!」
私達はガッチリ握手をした。良い友達が出来て良かった。
そして事務局で手続きをした後でラスティアと一緒に出て行くとビルケルさんが待っていたのでびっくりした。
「フリューレ様、合格おめでとう御座います。さあ、コチラへどうぞ…マリーゼル様がお待ちで御座いますよ」
「ビルケルさん…ありがとう御座います。ラスティア、じゃあまた三日後に!」
「うん、分かった。フリューレまたね!」
ラスティアと別れた私は馬車に乗って再びレイブンス子爵家に向かう事になった。屋敷に到着するとマリーゼル様がコチラにやって来た。
「マリーゼル様、無事に合格しました。色々とありがとう御座いました」
「…それで?」
「は?…何か?」
「…何かじゃ無いわよ。首席だったの?そうじゃなかったの?」
「ああ…しゅ、首席合格でした…」
「そう!おめでとう。まあ当然よね」
当然と言いながらマリーゼル様は何故かとても嬉しそうだ…。
「ビルケル、予定通りに今日はフリューレの首席合格パーティをするわよ!」
「準備は整っております。さあ、フリューレ様、客間に行きましょう」
とビルケルさんに連れられてまた客間に戻る事となった。客間に入ると綺麗な燕尾服が置いてある…誰か他にいるのかな?と思っているとビルケルさんと他のお付の方達に囲まれて服を脱がされて行く。そしてあっと言う間に燕尾服を着させられたのである。
「こ、コレは…どうして??」
「それはマリーゼル様が見立てた燕尾服で御座います。フリューレ様の首席合格のお祝いです。首席合格の方は入学式で演奏なさるのでその為の燕尾服をご用意されていたのです」
「えっと、それって…結構前からですよね?直ぐに出来ませんよね?」
「ええ、フリューレ様に来て頂いた翌日に仕立てを頼んでおりました」
うわあ…って事は私が首席合格じゃ無かったらこの燕尾服どうなってたんだろう…凄い無茶するなぁ…。
「フリューレ様、マリーゼル様は勿論ですが、旦那様も奥様も間違い無く首席合格と疑っておりませんでしたよ。勿論、私もで御座います」
「ビルケルさん…ありがとう…本当にありがとう御座います」
「さあ、皆様方がお待ちで御座います。さあ、コチラへ」
私が大広間に通されるとレイブンス子爵家の方以外のお客さんが結構な人数居てびっくりした。まさかこの人達に声を掛けたのも私が首席合格すると分かる前だよなぁ…この親にしてこの子有りって事なのかな??
「フリューレ!とても似合っているわ!私の見立てに狂いは無かったわね!」
「マリーゼル様、本当にありがとう御座います」
「良いのよ。首席合格も私の見立て通りになったでしょ?ウフフフ」
マリーゼル様はとても嬉しそうだ。するとレイブンスが閣下がお客様にスピーチを始めた。
「今日お集まり頂いたのは、縁があって当家の客人となったフリューレ君がメナス王立楽士学院に首席合格となった祝いをする為です。彼はあのガドーラ辺境伯様のご推薦を賜った天才です。今回の首席合格も当然の事ですが、当家客人の名誉を讃えたいと思います。フリューレ君、おめでとう」
会場は拍手で包まれた。
「あ、ありがとう御座います。子爵閣下にはお世話になりました。感謝申し上げます」
「さあ、それでは演奏をして貰うとしましょう!フリューレ君、宜しく」
「では…始めます」
私は緊張していたが、レイブンス子爵家に恥をかかせない様にと心を込めて笛を吹いた。曲が終わると皆様方から盛大に拍手を頂いた。
それから乾杯をしてパーティーが始まった。お客様から色々と質問責めにあったが、マリーゼル様が色々庇ってくれた。私は質問責めから逃げる為に何曲か笛を吹きながら会場を周った。
パーティーは2時間ほどで終わり、お客様が帰られた後で子爵閣下と奥様に感謝の言葉を伝えた。
「フリューレ君、君の演奏を聞いた時から首席合格は間違い無しと信じていたよ。これからも当家の大事な客人として後ろ盾になるつもりだ。何か困ったら必ず来てくれたまえよ」
「閣下…感謝しか有りません…」
「フリューレ!毎月必ず家に顔を出すのよ!分かったわね?」
「は、はい。毎月必ず参ります」
「フリューレ君、学業優先でね。無理をしない程度で良いのよ。マリーゼルも分かりましたね?」
「はい…お母様の仰る通りに…」
「奥様、お気遣い感謝いたします。私は皆様に笛を聞いて頂くのは嬉しいのです。出来るだけこちらに参ります」
「まあ…嬉しいわ、フリューレ君。マリーゼル、良かったわね」
「フリューレ、無理はダメよ!」
「はい、マリーゼル様…」
その後、食事を客間で取って風呂に入った後、大変な一日をやっと乗り切った私はゆっくりと寝たのである。
面白い、次も読みたいと思われましたら、ブクマや☆の方を入れて頂けると嬉しいです。
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